Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

ギュンター・ヴァイゼンボルン「天使が二人天降る」

 

ギュンター・ヴァイゼンボルン 著『天使が二人天降る』読了

奥付をみると、1956年 ( 昭和31年 ) とある。

今から58年も昔に刊行された本だ。

 

私が買った本には帯がなかったけれど、

ネットで検索したら《劇団「仲間」上演台本》だとわかった。

 

巻末の訳者あとがきには、当時の配役が書かれていた。

 

info277214.wixsite.com

 

劇団「仲間」のオフィシャルサイトの公演記録をみると、

試演会7作品の後の本公演の7作目に上演されていることがわかった。

1956年5月26日~6月2日、俳優座劇場

演出:中村俊一 

装置:北川勇

配役

アラ ( 好奇心に満ちた若い婦人 )……平岡牧子

マア ( 魅惑的な女学者 )……平木久子

ギール ( 通称学生、集団労働者の一人 )……木浦昭芳

モムネ ( その仲間、でっぷりふとった男 )……小林昭二

ピッツァ ( 工夫頭、イタリー系 ) ……山下正隆

アンネ ( 美しい夢想家の理髪師 )……喜多道枝

ヴァルト ( 新聞記者 ) ……古川伊一

ペトリッツェ ( 工夫 ) 

ズーリン ( 工夫 )

クモを逃がす男の声

garadanikki.hatenablog.com

 

私の本にあったサインは、まさにこの方々だった。

唯一名前が読めなかった ( ※ たまうきさんが判読してくださった ) 一番下の纓片達雄さんも、

ペトリッツァか、ズーリンか、クモを逃がす男のどれかの役を担っていたのではないかと思う。

 

さて本題

この作品は、線路を引く工夫たちの飯場の近くに、空飛ぶ円盤が降り立つ話。

宇宙船からアラとマアという二人の女性が降りてくる。

彼女らの住む星には男性はいなくて、ある種の薬品で繁殖しているらしい。

二人は工夫たちを「穴居民族」といい、彼らが男であるとわかると「非女性」と言う。

地球の情報はラジオである程度学んできたようで、地球に降り立つと工夫の動作や言葉からどんどん地球の実態を理解吸収していく。

 

この、荒くれ男たちと、高度な文明を築いている宇宙人との数日間の交流が、面白おかしく描かれていくのだが、彼女たちが語る地球人の評価が辛辣で、今でも十分に通用するほど風刺が効いている。

 

例えば、アラとマアは地球人のことをこんな風に言う

穴居民族、野蛮、陰険、たくさん書き物して、たくさん人殺す、飛行機つくったり、原子分裂さしたり、たくさん技術もっている、自分のためにはりこうで、でも、ちっとも、ちっとも、考えない・・・他の人たちのことは。

 

特に男性は愚かな存在だと、彼女たちは思っている

この長い歴史の間、非女性は、手当たり次第に、何もかも駄目にしてしまったからです。あなた方の星を、よくごらんなさい。あなた方の背後には、何千年というボロボロの歴史があります

 

男たちの中で多少学のあるギールが、地球の男性をどうしたらいいんだ?と問うと

彼女はこう答える

たぶん、高い城壁のある、大きな収容所をつくるでしょう。その中に、その……非女性を、隔離します。その人たちはトランプでも、フットボールでも、戦争してもよろしいし、どなりあったり、制服を着たり、武装して、政治というものをやってもかまいません。むろん、バーもあるでしょう。長靴をはくことも許されますし、胸に勲章をつけてもさしつかえありません。昼間のうちに、半分は殺されましょう。しかし、城壁は高く、厳重に監視されます。こんなふうにしたら、どういうことになりましょうか?

 

ひとつだけ《長靴をはくことも許される》という言葉が唐突に感じたが、

著者の青春時代、ドイツはヒットラーの統治下にあり、彼はナチズムに対するドイツ抵抗運動の戦士だったので、それが関連しているのではと思う。

en.wikipedia.org

 

無学な頭で一生懸命に人類の良さをアピールする工夫たちと、男性を排除した世界で明るく澄み切った理性で生きる宇宙人との対比が愉快。特に印象的だったのが、ギールとマアの恋愛講義のシーン。

男性を知らず、愛情や感情というものがいまひとつわからないマアに「誘惑ってなんですか?」と聞かれたギールがぎこちなく説明していくうちに、マアにうっかりキスをしてしまうと、体温がなかったマアの体が少しずつ温かくなり、感情や愛情というものを実体験していくくだりが可愛らしく面白かった。

 

劇団「仲間」の理念

劇団「仲間」は、俳優座養成所講師だった中村俊一さんが結成を主導。

結成メンバーは、日恵野晃と劇団俳優座 養成所2期生である生井健夫、伊藤巴子ら11名。俳優メモ : 劇団仲間 ※ 因みにこの11名の中には、私の師匠の御主人だった方も含まれている。

俳優座の流れをくむ劇団「仲間」は、《幼少期から質の高い演劇に接することによって子供たちの感性を高め、成人後も芝居を愛する感覚を持った人たちを増やしていこう》という理念をかかげ、創立当初から今日に至るまで児童・青少年演劇に力を入れてきた劇団だ。

※ 代表作は『森は生きている』

 

そんな劇団の創始者・中村さんが、何を伝えたくてこの本を選んだのかがわかる気がした。

この戯曲はとても分かりやすく書かれている。子どもたちに対して「生きていく中で何が大事なのか、どういうことをしてはいけないのか、人が争うということがどういうことなのか、理性とは何か、感情とは何か」をわかりやすく面白く伝えるには最適な本だと感じた。

 

同時に、ナチス政権下で亡命もせずに反戦運動をし、戦後も西ドイツの再軍備に反対する平和主義者として文筆活動を続けた著者に関心が深まった。

日本ではギュンター・ヴァイゼンボルンの翻訳本は三冊しかないが、あと二冊も読んでみたいと思っている。

ギュンター・ヴァイゼンボルン(Gunther Weisenborn)

 

 

 

本日の昼ごはん

スタミナにんにくラーメン

 

 

 

本日の夜ごはん

 

MOURI のお土産は

グラコロだった

 

しめじをオイスターソースで炒めたもの

 

レンコンの炒め物は、できるだけ柔らかく、、、

 

これは昨日の残りのがんも

 

〆に、まぐろ丼って食べすぎでしょ

ででで、デザートまで?