Up Cycle Circular’s diary

未来はすべて次なる世代のためにある

遅れに遅れた女川原発の再稼働、危うい原発政策、ずさんな運営

 東北電力の女川原発2号機が東日本大震災から13年7カ月たちようやく再稼働しました。被災地に立地する原発で初めてのことといいます。しかし、予定した発送電は危機のトラブルで延期となり、点検を経て、原子炉を起動することになりました。

東北電力、女川原発2号機の発送電延期 原子炉止め不具合点検へ - 日本経済新聞

 再稼働した原子炉をとめなければならなかったのは、発電機の試験中に原子炉内の中性子を計測する機器を入れる際、途中で動かなくなったためで、配管接続部分のナットの締めつけが不足が原因だったといいます。13年間、稼働を止めていたことによる悪さなのか、それとも原発稼働マネジメントの弱さなのか、どちらなのでしょうか。

 

 

 女川原発2号機は、福島第1原発と同型の沸騰水型軽水炉 BWRで、西日本ですでに再稼働した12基の加圧水型軽水炉 PWRと比べ、事故時に放射能を閉じ込める格納容器の容積が小さく、新規制基準適合に必要な審査項目や対策工事も多く、大幅に遅れることになったそうです。

対策多く、審査・工事に時間 福島第1原発と同じ「沸騰水型」―女川原発:時事ドットコム

 しかし、当初、16年3月に完了予定だった安全対策工事は7回延期され、結果8年遅れることになったといいます。電力を安全に、安定的に、そして安価に供給しようという電力会社の本分を忘れてはいないでしょうか。その意識があれば、事故のリスクがゼロにならないという困難さがあるにしても、それをミニマイズ化させようと努力し予定通り稼働させるはずです。そのためにはマネジメント、管理能力を徹底的に磨き上げることも問われます。こうした意識の欠如が甘えとなって言い訳を許し、遅れにつながったということはないのでしょうか。

 再稼働にこだわるのであれば、安全確保のため、引き続き監視し、定期監査によって確認していかなければならないのでしょう。そうすることで原発運転のノウハウが蓄積されていくのではないでしょうか。

完成しない核燃料サイクル

 原子力発電所から出る使用済み核燃料を一時預かる中間貯蔵施設が全国で初めて、青森県むつ市で稼働したそうです。この中間貯蔵施設は東京電力と日本原子力発電の原発からでる使用済み核燃料を再処理するために一時的に保管する役割を担うそうです。再稼働を目指す東電 柏崎刈羽原発にたまる使用済核燃料をまずは保管するといいます。

 

 

 一方、使用済核燃料再処理工場の完成はたびたび延期されています。この再処理工場が稼働しなければ核燃料サイクルが完成せず、中間貯蔵施設に使用済燃料がたまり続けることになるといいます。原発推進に欠かせない核燃料サイクル、完成時期が見通せないようです。こうした実態が原発への信頼回復を鈍らせてはいないでしょうか。

 青森県六ケ所村にあるこの施設を運営するのは日本原燃。このずさんな状態を見かねてなのか、電気事業連合会が経営支援に乗り出すそうです。

電事連、日本原燃への経営支援を強化 再処理工場遅れで - 日本経済新聞

 電事連はこれまで、審査対応などを支援する人員約100人を日本原燃に派遣してきたそうです。今後は、経営会議に電事連の副会長が出席して、進捗の把握や助言を行い、早期の完成を後押しするといいます。

 この日本原燃は、電事連に加盟する電力会社と日本原子力発電が出資して設立された会社で、社長は東京電力から、また取締役は、各電力会社や原子力関連法人、日立、三菱重工、東芝などからむかえているそうです。

お粗末な原発の実態

 原子力規制委員会が先日、日本原電の敦賀原発2号機の再稼働を認めない判断をしました。日本原電はあくまでも再稼働を目指すようで、こちらでもまた電事連が支援するそうです。電事連の林会長は原子力発電の必要性は揺るがないと、支援する理由を述べています。

敦賀原発2号機 電事連会長“再稼働の取り組み支援” | NHK | 各地の原発

 日本原電は大手電力5社から13年間に計約1兆4500億円を受け取り運営されてきたといます。しかし、現時点では保有する原発4基はどれも再稼働できない事態になっています。ガバナンス、マネジメント、企業経営のすべてがおかしくなっているとしか思えてなりません。原子力発電を担う事業者としては失格ではないでしょうか。

 

 

 日本の原発関連があまりにもお粗末に見えます。コストがかかりすぎているうえに、生産性も悪そうです。こんな状態のままではとても安価な電気価格の実現はありえません。

社説:党首選の論点 強まる「原発回帰」 負の側面語らぬ思考停止 | 毎日新聞

事故の教訓に目をつむり、既成事実化を図るようでは思考停止というほかない。 「負の側面」を真正面から議論すべきだ。(出所:毎日新聞)

 地に落ちた原発への信頼をいかに回復させるのか、解決しなければならない課題が多々ありそうです。福島原発では、溶け落ちた燃料デブリの取り出しに難航し、政府が目指す51年の廃炉完了が危ぶまれています。関連技術の開発の弱さも気になります。

AIの普及と原発推進

 脱炭素に加え、AIの爆発的普及に伴う電力需要の急増に対応するため「原発推進」が、世界的な潮流となりつつあるといわれます。すでに米国ではIT大手が原発活用に動き始めています。

Google・Microsoftが原発推進 AIの電力需要急増で選択迫られる日本:日経ビジネス電子版

 スリーマイル島原子力発電所1号機を再稼働させ、AIで使用するデータセンターに20年間にわたり電力を供給を受けるのはマイクロソフト。 スリーマイル島原発は1979年に、2号機でメルトダウン炉心溶融する事故がありましたが、今回、2300億円を投じて安全対策を進めて、原子力規制当局の許認可を得たうえで、2028年までに1号機を再稼働させるそうです。 

 こんなことに振り回されてはならないのでしょう。むしろ原発関連技術の劣化、そして遅れを嘆くべきなのかもしれません。根本的に見直し、最適なスキームを作り直さないと本来の目的の実現もままならなくなりそうです。未曾有の原発事故を経験した日本の原発政策、エネルギー基本計画はどうなっていくのでしょうか。

 

 

「参考文書」

女川原発2号機の原子炉を再起動 東北電力、19日までに発送電 - 日本経済新聞

東北電、女川原発2号機を再稼働 13年ぶり、大震災被災地で初 | 共同通信

青森の中間貯蔵施設稼働、搬出先は見通せず 回らぬ核燃料サイクル - 日本経済新聞

デブリの試験的取り出し成功 事故後初、廃炉向け一歩―東電福島第1原発:時事ドットコム

原発・出口なき迷走:原発は「脱炭素電源」か 続々と回帰する世界 日本はどうする? | 毎日新聞

三菱重工・日立、原発技術者育成に動く 国民民主躍進で政策転換の兆し :日経ビジネス電子版

エネルギー基本計画に「原発新増設」の現実味 主導役は国民民主か:日経ビジネス電子版

東京電力と関西電力で分割吸収するしかない? 売電の見通しが立たない日本原電 経営を取り巻く構造的問題とは:東京新聞デジタル

米スリーマイル原発、再稼働へ MicrosoftのAI電力供給 - 日本経済新聞

 

ゲリラ豪雨、変わる夏の気候、脱炭素の現在地

 岸田首相が自民党総裁選に出馬せず、総裁任期をもって退陣するそうです。その胸中を記者会見で語っていました。GX:グリーントランスフォーメーションや原発の再稼働、エネルギー基本計画などにも言及、それらが成果と強調していました。

福島第1原発の燃料デブリ取り出し中断、手順にミス 再開めど立たず | 毎日新聞

 それまでの遅々たる動きからしたら、たしかに成果といってもいいのかもしれません。しかし、それでよかったのかと問えば、多少なりとも疑問はありそうです。ほんとうに脱炭素が実現し、気候が穏やかな方向に転じ、みなが安心して暮らしていけるようになればいいのですが。

 

 

 この夏の猛暑を思えば、脱炭素にサステナビリティから目を背けることはできません。解決しなければならない社会課題は多々あり、どれもこれも優先度は高そうです。しかし、最優先事項にあげるべきは脱炭素にサステナビリティではないでしょうか。この解決のために色々なアプローチがあってもいいのでしょうが。

「ルールをつくってルールで縛る、地球が悲鳴を上げているのに、なぜルールを決めなければ実現できないと考えてしまうのか。なぜそういう社会をつくろうとしてしまうのか」と経済同友会の代表幹事を務めるサントリーの新浪社長が欧州主導のサステナビリティーの動きに疑問を呈します。

自然が失われれば社会は滅び、社会が滅びれば人間は生きていけない。当たり前の道理です。自然に生かされているのが人間だとするならば、そこに本来必要なのは道徳のはず。日本には古来より、ありとあらゆるものに命が宿る考え方があります。そこにある美徳こそが重要であり、日本で育てられたサントリーが使命として背負っていなければならないものです。(出所:日経ビジネス)

 道徳ベースでの取り組みを主張します。一方で、原発再稼働の遅れなど「不都合な真実に正面から向き合ってほしい」と政府の次期エネルギー基本計画の議論に注文を付けたりします。自然を壊し、地域社会を破滅させてしまった原発事故、その後もずさんな対応が目立つ政府に原発事業者たち。彼らの道徳はどうなっているのでしょうか。

 

 

 日本のエネルギーコストの高さを問題視、そのままでは実質賃金が上がらないことが、新浪氏の原発推進の理由のようです。低廉で安定したエネルギーの確保が恒常的賃上げの源泉ともいいます。また、昨今の経済をとらえては、「今は衰退か挑戦かの転換のポイントだが、絶対に挑戦を選ぶべきだ」と主張し、「国は規制を取り払い、国民や企業はアニマルスピリッツを持ち、挑戦していくべきだ」と呼び掛けているといいます。

「日銀ぜひ利上げを」=現在は「超円安」―同友会・新浪氏 | 時事通信ニュース

 経済同友会が掲げる社会課題の解決を通じて成長を目指す「共助資本主義」の実現に向けてでもあるそうです。道徳とアニマルスプリットでは少々折り合いが悪そうな気もします。1万円札の渋沢栄一のように「論語と算盤」で道徳と経済を両立させ、利潤追求と社会貢献が同時に叶えばいいのでしょうが、そのためには徳を積まなければならず、学び続け教養を高め、最新の知見を取り入れて常に頭脳をアップデートさせ続けなければなりません。

 時に、ルールに頼り規制を強化してもいいのではないでしょうか。みなが道理に従って行動できるわけでもなく、現実、政治においてもそうしたことが多々見受けられます。厳格なルールを作れば、それが規範となっていくのでしょう。また、ルールや規制を作ろうとすれば、より良いものにしていこうとの情熱が生まれるものですから。

 

 

 昨夜、ものすごいゲリラ豪雨が都心を襲いました。明らかに夏の気候が変わってきているようです。

都内で大雨、帰宅時間直撃 新宿駅では水漏れ、構内で傘差す姿も [写真特集1/5] | 毎日新聞

 これがこれからの日常なのでしょうか。この流れを止めて、対策を効果的に実行することができるのは誰なのでしょうか。政治も経済も変えるときがやってきているように思えてなりません。作り替えることができればいいのに.....と思いながら総裁選のニュースを眺めています。

 

 

「参考文書」

[新連載]新浪剛史氏「主流に解はない」 プロにならないという顧客志向:日経ビジネス電子版

 


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最も暑かった7月、続く危険な暑さ、気になるコメ価格への影響

 猛烈な暑さ、危険な暑さが続いた7月が終わりました。まだまだ暑さの終わりは見えず、8月も猛暑が続きそうだといいます。この7月の全国の平均気温は、平年と比べて2.16度高く、統計を取り始めてから126年間で最も暑かったといいます。

“126年間で最も暑い7月” 全国の平均気温 過去最高に | NHK | 気象

記録を更新するのは2年連続で、「今後も地球温暖化が進めば記録の更新が起こりうる」と気象庁は指摘、8月も全国的に平年より高い気温が予想されると警戒を呼び掛けているといいます。

 

 

 こうした「極端気象」は日本に限った話ではなく、世界のあちこちで確認され、農作物に深刻な影響を及ぼすようになっています。

 主要生産国で猛暑や干ばつなどが続いたことでコーヒー豆価格が高騰しています。オレンジもまた同様で、その影響でオレンジジュースの国際価格が高騰を続け、国内ではオレンジジュース製品の販売が休止する事態になっています。

オレンジジュースが消えた… ブラジル猛暑で不作、調達難で販売休止に:日経ビジネス電子版

 作柄改善の見込みは立っていないそうです。オレンジジュースがこれまで通り普通に飲める日常が戻ってくるのでしょうか。

 セブン&アイ・ホールディングスもプライベートブランドのオレンジ果汁100%の販売を取りやめ、オレンジと国産みかんの果汁を混合したジュースに切り替えているといいます。ただ国産みかん果汁の在庫も枯渇しつつあるそうで、来年25年以降は供給が厳しくなるとの見方が強まっているといいます。

 これが近未来の日常になるのでしょうか。アナザーワールドがすぐそこまでやってきているようにも感じます。

 

 

 昨年の猛暑の影響を受け、主食用米の民間在庫量が前年から減少し156万トンとなり、統計を取り始めた1999年以降で過去最少となったそうです。

コメが品薄、価格が高騰 米穀店や飲食店直撃「ここまでとは」 - 産経ニュース

 コメの価格高騰が続いているようです。冷夏の影響で品薄になった1993〜94年の「平成の米騒動」以来およそ30年ぶりの高値といいます。卸会社は手元在庫が不足し、コメの購入制限を始めるスーパーも出てきたといいます。農水省は24年産米の流通が本格化するとして「需給は逼迫していない」と強調しているそうですが、昨年以上の猛暑、東北地方を襲った豪雨などで、流通量が落ち込む懸念はないのでしょうか。少々心配になります。

 コメを含めて日本の農業の立て直しに本気で取り組まなければならないような気がします。この危機的な気候に適応していくことが求められていそうです。

 当たり前にスーパーマーケットに並んでいる生鮮食品が、今後は消えてゆくかもしれない。(出所:日経ビジネス)

 これまでのやり様を改めなければならないのでしょう。何度も何度も農業の立て直しは議論されてきましたが、何一つ変わっていないのではないでしょうから。

 

 

 

「参考文書」

猛暑で弱る日本のコメ 品種改良で乗り越えた富山産「富富富」:日経ビジネス電子版

コメ在庫が過去最少、高値の懸念 156万トン、前年比2割減:東京新聞 TOKYO Web

お米、店頭で購入制限も 94年「平成の米騒動」以来の高値 - 日本経済新聞

 

【地球沸騰化と極端気象】危険になる夏、極端な高温、進まない対策

 連日の猛暑に豪雨、楽しみだった夏が年を追うごとに危険になってきているようです。ニュースは連日、各地の猛暑を伝えています。夏の気温が40℃というアナザーワールドも、そう遠くない未来にやってきそうです。

【徹底解説】今年の夏が記録的な猛暑になる3つの理由

「極端な高温」「極端な大雨」、これまでの異常気象がワンランクアップし「極端気象」となって、頻発するようになっています。その傾向は日本にとどまらず世界各地でも起きています。温暖化が深刻さを増し、まさに地球沸騰化の時代に突入してしまったということでしょうか。 

 

 

「適応と緩和」、気候変動に求められる対策ですが、地球沸騰化時代においてその緊急性がますます高まっていそうです。カーボンニュートラル、脱炭素など緩和策一辺倒ではなく、いかにそれに適応していくかがこれからの生存戦略になるのではないかと思えます。

揺れる原発、敦賀原発2号機不適合

原子力規制委員会の審査チームが、再稼働を目指す日本原子力発電の敦賀原発2号機について、原発の新規制基準に適合しないと判断しました。原子炉建屋直下に活断層がある可能性が否定でないことが理由といいます。

「申し訳ない」と言いつつ徹底抗戦の原電 規制委もあきれた迷走 データ書き換え、誤記1000カ所以上:東京新聞 TOKYO Web

 規制委が今後、正式に不適合と決定する見通しといいます。不適合となれば国内の原発で初で、商用炉が再稼働できなければ史上初のケースになるといいます。日本原子力発電の対応がずさんだったということのようです。

 

 

 この極端気象を思えば、脱炭素電源への切り替えは避けられません。まして暑すぎる夏を乗り切るにはエアコンは欠かせず、電力の低価格化は急務のはずです。

 原発政策に無条件に賛成できるものではありませんが、目先の課題解決のために有効活用する手はあるのかもしれません。しかし、福島の事故がトラウマとなっています。原発への信頼性が大きく棄損してしまいました。この状況下にあって、安心安全に疑義の目が向けられるようでは、さらに反発を招き、ますます再稼働への道が閉ざされていくだけです。

 明確にエビデンスを示すことができないのであれば、「捨てる」ことを選択肢にするべきではないでしょうか。こんなときに無駄な労力を使うこともないのでしょう。

 英断が求められていそうです。ほんとうに必要なことに力を注ぐことができてはじめて信頼は回復していくのですから。そうできないのであれば、早々に退場いただくしかないような気もします。

 地球はもう待ってくれそうにありません。愚かさに付き合っているひまはもうないはずです。

 

「参考文書」

オレンジジュースが消えた… ブラジル猛暑で不作、調達難で販売休止に:日経ビジネス電子版

敦賀原発2号機、再稼働に不適合と結論 「原子炉直下に活断層否定できず」と原子力規制委 廃炉の可能性も:東京新聞 TOKYO Web

 

 

 

解消されていない政治不信、見直されるGX推進戦略、エネルギー基本計画

 これだけ世界各地で異常気象が頻発しても、気候変動対策で国際社会が一致することが難しいのでしょうか。

世界の熱波、今月50億人に影響 気候変動で発生確率3倍―米研究機関:時事ドットコム

 さらに今年は選挙イヤーでその影響も受けることが想定されます。欧州議会選挙では右派勢力が伸長し、環境会派が大きく議席を減らしました。11月には米国で大統領選挙となります。その結果次第では米国の温暖化対策への影響は免れないといわれます。欧米での環境重視の結束が揺らいでいるといいます。

 

 

 地球温暖化抑止のために、世界全体でカーボンニュートラルを目指していくはずなのに、今ではこれが激しい貿易戦争の引き金になってしまったようです。各国が手段を選ばず競争を繰り広げるようになり、日本もその渦中に引きずり込まれているようです。

 日本政府は「GX グリーントランスフォーメーション推進戦略」を見直すそうです。AIが急速に普及し、想定よりも電力需要が増加するためだといいます。

政府が恐れる「デジタル敗戦」 脱炭素電源の不足に懸念 - 日本経済新聞

脱炭素電源の制約とそれに起因する『デジタル敗戦』は、産業基盤を根こそぎ毀損する危険性をはらんでいる。(出所:日本経済新聞)

 低廉で安定的なエネルギー供給を産業界は求めます。それが経済の基盤だからなのでしょう。そして、原発再稼働を当然のように求めます。

原発

 原子力規制委員会が青森県六ヶ所村に再処理工場の耐震性などを確認するため現地調査を行ったそうです。

 この再処理工場は1993年から建設をはじめ、いまだに完成していません。技術的なトラブルや審査書類の不備などからこれまで26回にわたり延期されてきたといいます。

31年たっても“建設中″ 六ヶ所村の「核燃料再処理工場」原子力規制委が耐震性など現地調査|日テレNEWS NNN

 核燃料再処理工場、日本の原子力政策、核燃料サイクルの要といいます。この施設が完成すれば年間最大800トン、原発約40基分の使用済み核燃料を処理できるそうです。しかし、完成しなければ、再稼働した原発から出た使用済み核燃料の貯蔵場所が問題となることは確実といわれています。再処理工場の稼働なしに再稼働がさらに進めば、その行き場確保がさらに大きな問題となるそうです。

 喫緊の課題の解決を求めて原発を推進しようとすれば、次の課題にぶち当たるようです。その上原発推進には住民理解が欠かせません。福島第一原発事故のトラウマは早々解消できるものではありません。まして大きな地震が起きるたびに原発で不手際が露呈すればなおさらです。そんな中、原発を推進しようとすれば必ず反発が生まれます。国と電力各社が態度を改め、謙虚にならない限り、反発が沈静化することはないのでしょう。

 

 

 不確実性が高まり、エネルギー政策におけるリスクは以前とは比べられないほど多岐にわたるようになっているといいます。何をゴールにどの道をたどっていけば、山積する問題がスムーズに解決されていくのでしょうか。様々なリスクや課題が制約条件となって、複雑性が増し、それに加えて業界の利害やしがらみが絡んできます。

 政府による強い誘導を求める声があるようです。政府は既得権益の調整を理路整然にすることはできるのでしょうか。

 一方で、政府はPB プライマリーバランス 国と地方の基礎的財政収支を2025年度に黒字化する目標を閣議決定した骨太の方針「経済財政運営と改革の基本方針」に盛り込んでいます。この目標をないがしろにするようなことになれば、国の信用にかかわることになるといいます。このため野放図な財政支出はもう許されないといいます。

歳出改革、一貫性欠く 骨太の方針(日本経済新聞)

 しかし、不人気な首相は物価高対策として電気・ガス代の補助や年金世帯への給付金支給を表明しました。それは歳出改革を進めるという姿勢と矛盾し、一貫性を欠くとの指摘があります。

 

 

 そもそも堅実な政策が練られていれば、物価高や円安に苦しんだり、エネルギーの供給不安も避けることができていたのかもしれません。

 エネルギー基本計画の議論が始まっています。堅実で現実的な計画を作ることはできるのでしょうか。裏金事件を端にして、政治不信が続いています。不信を払しょくするような計画が求められいるはずです。

 

 

「参考文書」

アメリカでヒートドーム猛威 暑さ過去最高、50年死者6万人も - 日本経済新聞

大量の電力を消費する「AI」で世界はエネルギー危機に | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

エネルギー政策で世界から取り残される日本の産業界に未来はあるか? | クーリエ・ジャポン

分断下でも進む脱炭素 シェルが読む国家競争の現実 本社コメンテーター 松尾博文 - 日本経済新聞

日本の基礎的財政収支、来年度の目標未達の見通し=ムーディーズ | ロイター

 

AIに不可欠な再生可能エネルギー、顕在化しかねない石炭火力に頼るリスク

 第7次エネルギー基本計画の議論が始まったようです。

 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会が開催され、会議の冒頭、齋藤経産相は「化石燃料の輸入金額は22年に34兆円にまで上昇しており、輸出で得られた国富を全て化石燃料で失っている」と指摘したといいます。

第7次エネルギー基本計画の議論開始 国際物流では環境負荷を削減:日経ビジネス電子版

 世界的に利用が進む人工知能(AI)による電力需要の増加も挙げ「脱炭素エネルギーを安定的に供給できるかが国力を大きく左右する」との見方を示したそうです。

 

 

 日本の生き残りをかけたエネルギー政策の議論になるといいます。再生可能エネルギーの活用に向け議論が深まるのでしょうか。

「脱炭素」には再生可能エネルギーは不可欠であることはいうまでもありません。この再生エネを巡って国内の争奪戦が始まり、安価で安定的に調達できるかが、企業の競争力を左右する時代になってきたといいます。

[新連載]ラピダス・TSMC、巨大工場立地の真相 再エネ争奪の前哨戦:日経ビジネス電子版

 国の支援を受け次世代半導体の生産をめざすラピダスは、工場を北海道で建設中です。

「再生エネを積極的に使い、グリーンな技術を生かした工場を実現する」、大量に風力や太陽光などの再生エネ由来の電力を調達できる土地して北海道を選択したようです。

 再生エネ適地のひとつにあげられる北海道、ラピダスの後を追うように北海道で拠点設置を決める企業は増えているそうです。ソフトバンクは苫小牧市に国内最大級のデータセンターを建設すると発表し、電力の多くを再生エネで賄うことを目指しているといいます。今後、ラピダスに部品を供給する周辺産業の進出も相次ぐといいます。

 

 

「日本の工場は稼働開始時から全消費電力が再生エネだ」、熊本県菊陽町に進出した半導体受託生産の世界最大手 TSMC台湾積体電路製造もまた再エネ調達を積極的に進める企業のひとつです。 九州もまた再エネ適地といわれています。

再生エネがあるところに、巨大産業が立地する──。(出所:日経ビジネス)

そんな時代が到来したようだといいます。足元では再生エネは使い切れないほどあるため、「今後も余る」と高をくくる企業がある一方で、一歩先行く企業は、PPA(電力購入契約)を締結したり、設置が計画される再生エネ発電所にアプローチする動きも活発化させています。

 

 

再生エネの獲得競争は今後激化しそうだ。電力中央研究所は、50年の電力消費が21年比で最大37%拡大すると予測。主な増加要因が生成AI(人工知能)の普及拡大で、世界的に化石燃料依存を減らす中、一段と再生エネを求める動きが強まる。(出所:日経ビジネス)

 再生エネ争奪戦が始まりつつある日本、「30年以降になれば、再生エネなどクリーンエネルギーの争奪戦が本格化する」、経産省幹部はそう見ているといいます。「2~3年前には再生エネが取り合いになるとは予想しづらかったが、電力需要の大幅増を招く生成AIの登場で競争に拍車がかかっている」とも語ったといいます。先見性がないことを自ら証明しているようなものです。

 

 

 米アップルにアマゾン、グーグル、グローバルにビジネスを展開するビッグテックは、世界のどの土地においても再生エネ調達を積極的に進め、進出した地で再エネ以外の電力を使うという前提はないようです。日本の再生エネ比率が向上しないと、これからは日本への投資を敬遠する、新たなジャパン・パッシング(素通り)になりかねないといいます。 

 昨年の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議で、アンモニアを推奨して、不名誉にも「化石賞」を頂いたことが思い出されます。 さて、いまだに7割以上を化石燃料に依存する電源構成が今回のエネルギー基本計画で、今度こそ見直されることはあるのでしょうか。

 

 

「参考文書」

AI、電力も富も爆食 「シン双子の赤字」が招く円安ループ 円の警告・国富を考える(4) - 日本経済新聞

なぜ必要? 今さら聞けない、再エネ調達の基礎知識:日経ビジネス電子版

「化石賞」日本が推すアンモニア発電は愚策か、石炭依存国の希望か | 日経クロステック(xTECH)

 

【Copilot+PC】ネット環境不要で駆動する生成AI、「AIパソコン」新たなHW端末登場

 米OpenAIが新製品GPT-4oをリリースし、その性能のスゴさから大盛り上がりになりました。どんな未来がやってくるのかとワクワクする一方で、脅威を感じる人もあるのでしょうか。

 それにしてもAI覇権をがっちり抑えられてしまったとの感が否めません。従来型の日本企業にこの先、勝ち筋はあるのだろうかと不安がよぎったりします。

 

 

 かつて強かったハードウエアも衰退の一途のようです。シャープは大型液晶事業の国内生産を終了させるといいます。グローバルに勝負できるモノが徐々に少なくなっていくようです。かといってソフトに強みがあるかといえば、そうとは言えそうにもなく、デジタル敗戦、デジタル後進国との言葉で表されるようにハードウエアどころではない悲惨さです。

 一方で、世界を席巻する巨大テクノロジー企業と言えば、今ではソフト、ハードどちらも強みになっていそうな気がします。もうソフトだのハードだのという時代ではなく、両輪揃えて新たなバリューチェーン、エコシステムを構築することが求められていそうです。

 米グーグルの自社製スマートフォン「ピクセル」の最新低価格機種「8a」の販売が始まったそうです。日本での販売価格は7万2600円。最新の独自半導体「テンソルG3」を搭載し、AI人工知能を使って利便性を高めているといいます。なかなかの評判のようです。

 米アップルはタブレット型端末「iPad」の最上位機種「プロ」の最新モデルをはじめてそうです。価格は16万8800円から。独自開発の半導体「M4」を搭載し、AI 人工知能の活用など性能と電力効率を高めているといいます。

(写真:アップル)

 マイクロソフトは、AIの実行に適した新たなPCカテゴリ「Copilot+ PC」を新設し、これに対応した新型PC「Surface Pro」「Surface Laptop」を発表しました。この新しいAIパソコンは、インターネットにつながなくても生成AI機能を簡単に使えるといいます。

AIパソコンは2025年に「かなり一般的」になる-マイケル・デル氏 - Bloomberg

 AIなどの新しいサービスには、それを支える半導体などのテクノロジーと、それを普及させるためのハードウエアとモノづくりが必須になっていると感じます。

 

 

 中国では、スマホからスマート家電まで手がけるシャオミ(小米/Xiaomi)が、EV電気自動車に進出、最初のモデル「SU7」を発売しました。販売開始からわずか27分で5万台を超える予約注文があったといいます。

「iPhoneより安くて速いスマホ」の中国企業が、「テスラより安くて速いEV」を発売…自動車業界を揺るがす大衝撃 だからトヨタも「中国のIT企業」と手を組んだ | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 多彩な商品をもち、熱烈なファンにささえられた一大経済圏ができあがっているようです。

シャオミは、EVというハードのみで収益化を目指しているわけではないのだ。ヒト(スマートフォン)、クルマ(EV)、ホーム(スマート家電)を通じてユーザーにサービスを提供し、そこから得られるビッグデータを収集・解析することでさらなるユーザーエクスペリエンスの向上を目指し、そのエコシステム全体で収益を上げていこうとしている。(出所:東洋経済オンライン)

 そうなのかもしれません。新しいサービスを楽しむにしても、それを駆動させる最新のハードが欠かせなくなっています。またモノは人々の物欲を満たし、アプリはさらに利便性を向上させます。結局、どちらに一方に偏ることなく、両輪そろってビジネスチャンスが大きく膨らみ、マネタイズポイントも増えそうです。世界を席巻しリードする巨大なグローバル企業を見れば、疑いの余地はなさそうです。

 ハードを軽んじソフトばかりを重視する、その偏重した考えが多くの日本企業をダメにしたのかもしれません。この遅れを挽回するには長い時間がかかりそうですが、チャレンジする価値はあるのかもしれません。

 

 

「参考文書」

新スマホ「ピクセル8a」発売 14日から、7万2600円―米グーグル:時事ドットコム

新iPadプロ、15日発売 半導体「M4」、16万8800円から―米アップル:時事ドットコム

Apple、M4チップを搭載した美しく新しいiPad ProとApple Pencil Proを発表 - Apple (日本)

PC各社、AIチップとArm搭載「Copilot+ PC」を一斉発表 新Surfaceは「M3 MacBook Airより高速」 - ITmedia AI+

 

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