肥薩線 単語

肥薩線とは、熊本県八代市の八代駅から鹿児島県湧水町の吉松駅を経て鹿児島県霧島市の隼人駅までを結ぶJR九州のローカル線である。

※八代駅〜吉松駅間は豪雨の影響で長期運休中。

概要

九州でも屈指の観光路線の1つであり、球磨川に沿って走る区間、九州山地の険しい山を超える区間、えびの高原の丘陵地帯を走る区間と、非常にバラエティに富む沿線風景により鉄道ファンのみならず多くの観光客に人気がある。主な経由都市は熊本県人吉市など。

九州自動車道の影響で一時は廃線の噂も囁かれたが、2000年代に入って観光路線としての大幅なテコ入れが図られ、それが成功した現在では南九州の観光資源の1つとして定着している。
だが、2020年7月の豪雨の影響で、球磨川第一・第二橋梁が流出するなど甚大な被害を受け運休。復旧には多額の費用がかかることや、肥薩線が観光ありきの路線で地域利用が少ないこともあって運転再開は長らく不透明な状況であった。しかし地元からは復旧の声が根強いこともあり、熊本県が復旧費の自治体負担分の全部と上下分離方式の維持費の大半を負担することで、上下分離方式での復旧を目指す方向で2023年に自治体間で合意しており、復旧への道筋が立ちつつある。とりあえず八代～人吉間を2033年度頃に鉄道で復旧させることを2024年4月に基本合意している。

この路線は鹿児島本線の一部として開業した歴史があり、現在の水俣、川内経由の路線が開通するまでは重要な役目を担っていた。海岸寄りの路線が開通して以降は「肥後国」と「薩摩国」を結ぶ路線として八代～鹿児島間が「肥薩線」と呼称された。その後吉松～隼人～鹿児島の日豊本線への編入を経て、同線の都城～隼人間の短絡ルートの開通で吉松～隼人間が肥薩線の一部となり、現在に至っている（このため、現在の肥薩線はその名の割に薩摩国を通過していない）。

路線データ

• 営業キロ：124.2km
• 軌間：1067mm（狭軌）
• 駅数：28
• 全線単線・非電化
• 特殊自動閉塞式

接続する路線

• 鹿児島本線（八代駅）
• 肥薩おれんじ鉄道（八代駅）
• くま川鉄道（人吉駅）
• 吉都線（吉松駅）
• 日豊本線（隼人駅）

開通の歴史

• 1903年1月15日　隼人 - 大隅横川
• 1903年9月5日　大隅横川 - 吉松
• 1908年6月1日　八代 - 人吉
• 1909年11月21日　人吉 - 吉松　【全通】

沿線の見どころ

八代～人吉間

通称「川線」。日本三大急流の1つである球磨川に沿って走る区間であり、車窓から川と深い谷を望むことが出来る。沿線には九州最大の鍾乳洞「球泉洞」があり、急流下りと並ぶ主要な観光スポットの1つとして人気を集めている。また渡〜西人吉間には線路沿いに桜並木があり、毎年肥薩線に春の訪れを告げるべく咲き誇っている。上記の通りこちらは2033年度頃に鉄道での復旧を目指している。

人吉～吉松間

「矢岳越え」と呼ばれる、ループ線とスイッチバックによって険しい九州山地を越える区間。「山線」と称される。

日本で唯一ループ線の途中にスイッチバックが存在する大畑駅、肥薩線で最も標高が高い場所に位置する矢岳駅、スイッチバックもさることながらその駅名の縁起の良さが人気の真幸駅と、この区間だけでも多数の観光資源が存在している。矢岳～真幸間では日本三大車窓の1つに数えられるえびの高原の雄大な景色を望むことが出来る。
ただし県境を2度もまたぐこともあって利用者は少なく、2018年春のダイヤ改正では1日3往復のみの運転となる（うち2往復が後述の「いさぶろう」「しんぺい」）ため、ご利用は計画的に。

この区間はその運行本数から、八代～人吉間の様に鉄道で復旧させるかどうかは不明で、最悪BRTやバス転換もあり得る状態である。

吉松～隼人間

鹿児島県内は比較的開けた農村地帯を走る。途中の大隅横川駅と嘉例川駅の駅舎は開業以来の趣のある木造駅舎で、2006年に国の登録有形文化財に指定された。

この区間は、吉都線と併せて「えびの高原線」の愛称が付与されている。なお2018年春のダイヤ改正以降、保線工事を行う関係で毎月第4水曜日に日中の3往復が運休となるため注意が必要。

2022年9月改正で隼人駅で系統分割され、鹿児島中央駅への乗り入れが廃止された。

列車

肥薩線では多数の観光列車が運行されていたが、先述の豪雨の影響で引退もしくは他線区への転属が行われている。

かつて運行していた列車

はやとの風

はやとの風は、吉松～隼人～鹿児島中央間で運行していた特急列車。種車は特急型ではなく一般形気動車のキハ40系であるが、当初から速達性を重視しない観光に特化した列車であることから、ぼったくり感を感じる人はほとんどいないであろう。車体は光沢のある黒塗りであり、内装も普通列車に使用されていた車両とは思えない立派なものに仕上がっている。

デビュー当初は毎日運転していたが、2018年春のダイヤ改正で臨時列車化。その後豪雨の影響による長期運休を経て、2022年3月に廃止されることになった。現在は「ふたつ星4047」に転用されている。

かわせみ やませみ

かわせみ やませみは、2017年春より熊本～人吉間を運行していた観光列車である。
「くまがわ」の廃止以来1年ぶりに同区間を走る特急列車であり、車内には球磨川を眺める展望スペース、ビュッフェ、土産物を買えるサービスカウンターなどがある。

肥薩線不通により、「いさぶろう・しんぺい」を連結して鹿児島本線・門司港駅〜博多駅間を運行していたが、2022年9月から豊肥本線に運行区間を変更することになった。

SL人吉

SL人吉は、熊本～人吉を結ぶ臨時快速列車である。肥薩線開業100周年となる2009年に運行を開始した。

豊肥本線の「SLあそBOY」に使用されていた58654（8620形蒸気機関車）を使用し、専用にリニューアルされた50系客車を牽引する。全車指定席であり、指定席料金820円が別途必要。

肥薩線不通により、2021年から鹿児島本線・鳥栖駅〜熊本駅を運行していたが、58654号機の老朽化が激しく、肥薩線に戻らぬまま2023年度に引退することになった。

いさぶろう・しんぺい

いさぶろう・しんぺい号は、人吉～吉松間の矢岳越え区間の観光列車として1996年より運行を開始した。吉松行きが「いさぶろう」、人吉行きが「しんぺい」となる。

愛称はこの区間が建設された当時の運輸大臣"山縣伊三郎"、開業時の鉄道員総裁"後藤新平"に由来するもので、肥薩線で一番長い矢岳第一トンネルの両入口に掲げられている両氏の扁額にちなんでいる。

運行当初はキハ31形を小改造したものが使用されていたが、2004年の九州新幹線開業を機にキハ40系をベースとした専用車両が用意された。車体の色は古代漆をイメージした赤系の色となっている。

2016年3月のダイヤ改正より、1往復が熊本～吉松間の運行となっている（九州横断特急の肥薩線乗り入れ廃止、くまがわの廃止による措置）。

肥薩線不通により、しばらく「かわせみ やませみ」を連結して鹿児島本線・門司港駅〜博多駅間を運行していた。2022年9月以降は「かわせみ やませみ」の豊肥本線への転属により連結は終了し、主に団体列車として使用されていたが、2024年春に久大本線で運行開始する新たなD&S列車「かんぱち・いちろく」に転用されることになり、肥薩線に戻ることは無くなった。

その他

• 九千坊号
• くまがわ
• えびの
• からくに
• やたけ
• おおよど
• 九州横断特急

主な車両

• 58654（8620形蒸気機関車）・50系客車
• キハ40系（キハ40形・キハ47形・キハ140形・キハ147形）
• キハ220形

駅一覧

太字は有人駅。

関連動画

関連項目

• 鉄道
• JR九州
• 鉄道事業者・路線一覧
• 熊本県 / 宮崎県 / 鹿児島県
• ローカル線
• 秘境駅
• 特急=特に急がない