為替とは、以下のものを指す。
→ 紙A →
← 紙B ←
本来の為替は現金(紙幣や硬貨など現物の金銭)を伴わない決済の総称である。手形・小切手・銀行振込などのように現金を渡さない決済はすべて為替と呼ばれるが、そのうち国内の販売者に対して行う決済は国内為替と呼び、外国の販売者に対して行う決済は外国為替と呼ぶ。
外国の販売者に対して決済するときは必ず外国為替市場で自国通貨と外国通貨の交換を行う。このため「為替」というと外国為替市場における為替相場、すなわち自国通貨と外国通貨の交換比率(名目為替レート)を意味するようになった。
ニュースで「為替」というと、多くが為替相場(自国通貨と外国通貨の交換比率、名目為替レート)のことを意味する。ゆえに本記事では為替相場について解説する。
為替相場とは自国通貨と外国通貨の交換比率のことである。経済学では名目為替レートという。
人間は「通貨」という概念ができて以降、通貨を受け渡しして価値を交換してきた。しかし、通貨はあくまでその国だけで通じる概念であることが多く、異なる国の人間に自分の国の通貨を直接渡しても価値は伝わらないことが多い。そのため、それぞれの国家間で通貨の交換比率を設けることになった。
自国通貨と外国通貨の交換比率を決定する市場は外国為替市場と呼ばれる。また、円を自国通貨または外国通貨とする為替相場は円相場と呼ばれる。
外国為替市場のあり方は固定相場制、中間的為替相場制、変動相場制の3つに大別できる。1973年2月14日以降の日本が採用しているのは変動相場制の中の管理変動相場制である。
1973年2月14日以降の円相場は変動相場制なので、上がり幅・下がり幅を利用して金を儲ける資産運用の方法が存在する(本記事の『為替相場を利用した資産運用』の項目を参照)。そして「為替市場は生き物」「為替市場は眠らない」という言葉があり、その言葉どおり本当に分単位・秒単位で各国通貨の価値が変動し続けるため、わずかな変動幅でもつぎ込んでいる資金によっては大幅なプラス・マイナスに直結する。そのため、トレーダーや投資家達は常に自分の投資に使っている通貨の相場変動を監視し続けている。
円相場とは、円を自国通貨または外国通貨とする為替相場のことである。日本の円相場なら円が自国通貨になり、米国の円相場なら円が外国通貨になる。
日本で円相場を示すときは「外国通貨1単位= ○円」と表記される。つまり「1ドル=○円」とか「1ユーロ=○円」とか「1人民元=○円」と表示される。この逆に「1円=外国通貨○単位」と表示する例はめったに存在しない。
1ドル=120円という表示と1円=0.0083ドルという表示は全く同じ意味だが、日本においては常に前者の表示方法を採用している。
2024年現在において世界中の貿易で使われる基軸通貨・世界通貨というと、アメリカ合衆国で発行される米ドルである。
そのため円相場において円と米ドルの交換比率を示すものが特に注目される。
「1ドル100円が1ドル90円になる」という現象と「1ドル100円が1ドル110円になる」という現象があるとする。
「円の数字が増えているから『1ドル100円が1ドル110円になる』の現象の方が円高なんじゃないの?」と思う人はいるだろうが、逆である。
1ドル100円が1ドル90円になり、1ドルを買うのに100円かかっていたのが90円で済むようになり、1円あたりの価値が高くなったのが「円高」である。
逆に1ドル100円が1ドル110円になり、1ドルを買うのに100円で済んでいたのが110円もかかるようになり、1円あたりの価値が安くなったのが「円安」である。
「1ドル = ○円」において
円高になることの類似表現は、円の上昇、円の高騰、円の増価、円が強くなる、などである。日本が固定相場制を採用しつつ円高になるように名目為替レートの固定値を変更したら、円の切り上げという。
円安になることの類似表現は、円の下落、円の低落、円の減価、円が弱くなる、などである。日本が固定相場制を採用しつつ円安になるように名目為替レートの固定値を変更したら、円の切り下げという。
円高は「1ドル100円が1ドル90円になる」というようなことをいう。
円高で恩恵を受けるのは、日本の輸入企業である。海外から原油・農作物・食料品などを輸入している企業がこれに当たる。海外から外貨で値段を付けられた商品を購入するときに円高・外貨安になると、代金として支払う外貨の価値が下がるので、円に換算した費用が小さくなる。
円高で打撃を受けるのは、日本の輸出企業である。海外に自動車を輸出している企業がこれに当たる。海外に向けて外貨で値段を付けて商品を販売しているときに円高・外貨安になると、代金として入手した外貨の価値が下がるので、円に換算した収益が小さくなる。
円高で恩恵を受けるのは、日本から海外に旅行して外貨を支払って海外に滞在する人である。円高・外貨安になると、代金として支払う外貨の価値が下がるので、円に換算した費用が小さくなる。日本からの旅行客で成り立っているハワイやグアムなどの海外の観光名所は、客足が増えて好景気になる。
円高で打撃を受けるのは、海外から日本に旅行して円を支払って日本に滞在する人である。円高・外貨安になると、代金として支払う円の価値が上がるので、外貨に換算した費用が大きくなる。インバウンド(外国人旅行客)で成り立っているような日本の観光名所は、客足が減って不景気になる。
つまり円高というと次のことを意味する。
円安は「1ドル100円が1ドル110円になる」というようなことをいう。
円安で恩恵を受けるのは、日本の輸出企業である。海外に自動車を輸出している企業がこれに当たる。海外に向けて外貨で値段を付けて商品を販売しているときに円安・外貨高になると、代金として入手した外貨の価値が上がるので、円に換算した収益が大きくなる。
円安で打撃を受けるのは、日本の輸入企業である。海外から原油・農作物・食料品などを輸入している企業がこれに当たる。海外から外貨で値段を付けられた商品を購入するときに円安・外貨高になると、代金として支払う外貨の価値が上がるので、円に換算した費用が大きくなる。
円安で恩恵を受けるのは、海外から日本に旅行して円を支払って日本に滞在する人である。円安・外貨高になると、代金として支払う円の価値が下がるので、外貨に換算した費用が小さくなる。インバウンド(外国人旅行客)で成り立っているような日本の観光名所は、客足が増えて好景気になる。
円安で打撃を受けるのは、日本から海外に旅行して外貨を支払って海外に滞在する人である。円安・外貨高になると、代金として支払う外貨の価値が上がるので、円に換算した費用が大きくなる。日本からの旅行客で成り立っているハワイやグアムなどの海外の観光名所は、客足が減って不景気になる。
つまり円安というと次のことを意味する。
ここまで述べたことは、日本の物価と外国の物価がほとんど変わらない短期において当てはまるものである。
短期においては価格が硬直的であり、名目為替レート(1ドル=○円というような通貨交換レート)がX倍となったら実質為替レートもX倍となり、輸出や輸入に影響を与える。
長期においては価格が伸縮的であり、名目為替レート(1ドル○円というような通貨交換レート)がX倍となっても実質為替レートがX倍となるとは限らず、輸出や輸入に影響を与えるかどうかは不透明である。長期において輸出や輸入の変化を論じたいのなら実質為替レートを調べなければならない。
ニュースでよく報じられるとおり、円・ドル相場だけでも外国為替は常に変化している。
円相場というものは、1日で1ドル100円が1ドル102円になる程度で、つまり1日で変動幅が2%になる程度で「円急落」と報じられて騒ぎになる。それよりも変動幅が大きいことは非常に少ない。
とはいえ、為替相場が急変して絶壁のようなチャートになった例もある。2015年1月15日のスイスフランショックでは、1ユーロ=1.20スイスフランで始まり、一時は1ユーロ=0.86スイスフランにまで急騰して変動幅が28.3%に達し、その日の終わりには1ユーロ=1.05スイスフランに落ち着いたもののそれでも変動幅が12.5%に達している(記事1、記事2)。
また、円相場は様々な外国通貨を扱っている。各国の通貨に対する円のレートはそれぞれ異なるため、円高・米ドル安になっても円安ユーロ高になる可能性がある。
もしこの先、海外の商品を売買したいのであれば、即飛びつくようなことはせず、「関連リンク」の項目にある各国相場一覧を見て、買い時や売り時を見計らってみても良いのではないだろうか。
戦後、日本での為替相場は1949年~1971年まで「1ドル = 360円」という状態で固定相場制となっていた。
しかし1973年2月14日より変動相場制に変わり、それ以降はだんだんと円高となり、21世紀以降はおおむね1ドル = 110円あたりが一種の標準となっていた。
2022年2月24日に勃発したウクライナ戦争のあとは円安が進み、1ドル=150円あたりが一種の標準となる状況が続いている。
為替相場は国家間での決済を円滑にするために生まれてきたものであるが、その変動によって発生する差額を利用した資産運用もある。それは外貨預金と外国為替証拠金取引(FX)である。
どちらの運用手段にもメリットと同じくらい、あるいはそれ以上のリスクが存在する。
1973年2月14日以降の日本は変動相場制のなかの管理変動相場制を採用しており、たまに為替介入することがある。
為替介入は日本政府の一部である財務大臣が指示を出し、その指示に従って日銀が事務を行う。政府が主体となって為替介入を行っているのであり、日銀が独自に為替介入するわけではない[1]。
財務省国際局為替市場課と日本銀行金融市場局為替課が緊密に連携して為替介入を行う。
歴史的に見て、1973年2月14日以降の日本政府の為替介入は、そのほとんどが円売りドル買いで円安ドル高に導く介入だった[2]。
日本政府が円買いドル売りで円高ドル安に導く介入をする例はあまり存在しないので「逆介入」と呼ばれているぐらいである。
円売り介入をするにあたっては、まず政府が日本円を調達しなければならない。
国庫短期証券(短期の国債)を発行して国債市場に売りさばいて日本円を獲得する。大急ぎであるときは日銀が国庫短期証券を直接日本政府から購入して、日本政府に日本円を渡している。この行為は中央銀行の国債直接引き受けであるが、財政法第5条の「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、中央銀行の国債直接引き受けを行ってよい」という規定に基づき、「為替介入は急がねばならない特別の事由である」としつつ容認している。
発行した国庫短期証券は外国為替資金特別会計(外為特会 がいためとっかい)に記録される。
日本円は日銀が発行する不換銀行券なので、日銀が無制限に発行することができる。このため円売り介入の資金は無制限である。
日本円を手にした政府は、外国為替市場に行って円売りドル買いの為替介入を行う。その結果として米ドルが政府の預金口座に次々と振り込まれ、政府の外貨準備高がどんどん増えていく。
米ドルというのはただの通貨なので基本的に利子が付かない。このため米ドルを抱えた政府は、米国債を扱う市場に参加して、米ドルを米国債に交換している。米国債は基本的に利子が付き、自動的に金額が増えてくれるので、日本政府にとって大事な貯金箱である。
円売りドル買いをすると、市場に出回る日本円の量が増える。そのまま放置すると金融緩和となり、短期金利が下がり、利下げとなる。この金融緩和を放置することを非不胎化介入といい、円売り介入と金融緩和を同時に実行するものである。
円売りドル買いをして、市場に出回る日本円の量を増やしたあと、日銀が手持ちの国債や日銀手形を売る売りオペをして日本円を市場から回収することがある。これを不胎化介入といい、為替介入を行うが金融緩和を行わないものである。
ドル売り介入をするにあたっては、まず政府が米ドルを調達しなければならない。
日本政府の外貨準備高は合計で1兆ドルを超えており、世界2位の膨大な量となっている(資料1、資料2)。1980年以降の外貨準備高の増減を見てみると右肩上がりで増えていて(資料)、円売り介入ばかり行っていたことがよく分かる。こうした外貨準備高は米ドルだけでなくすべての外貨の準備高を米ドルに換算して合計したものであり、外貨準備高のなかのどれだけが米国債なのかは分かっていない。日本政府に質問しても「金融・為替市場に不測の影響を与えるおそれがあるため公表しない」と答えるだけである(資料)。とはいえ、大部分が米国債だろうと見られていて、日本政府がドル売り介入する体力は非常に大きいということができる。
米ドルを手にした政府は、外国為替市場に行って円買いドル売りの為替介入を行う。その結果として日本円が政府預金(政府が日銀に開設する口座の預金)に次々と振り込まる。
円買いドル売りをすると、市場に出回る日本円の量が減る。そのまま放置すると金融引き締めとなり、短期金利が上がり、利上げとなる。この金融引き締めを放置することもあるが、日銀が国債市場参加者が保有する国債を買い入れるなどの買いオペを行って金融引き締めを行わないこともある。
先述のように1973年2月14日以降の日本は変動相場制のなかの管理変動相場制を採用していて、しばしば為替介入している。
しかし、日本政府の為替介入はあまり効果が無い。代表的な例で言うと2003年5月~2004年3月の円売りドル買い為替介入である。このときは米国政府の了承を受けて日本政府が単独で為替介入をして、約35兆円という巨額の日本円を売ったが、たいして円安ドル高に誘導できなかった。
この2003年5月~2004年3月の円売りドル買い為替介入は、米国のジョン・ブライアン・テイラー国際担当財務次官と日本の溝口善兵衛財務官が合意してから行われたのでテイラー・溝口介入と呼ばれている。また日銀砲という異名で呼ばれた為替介入でもある。
1980年代後半以降の世界は国際的資本移動の自由化が進んでおり、キャリートレードをするような投機マネーの勢いが凄まじい。
本気で為替水準を安定させたいのなら、1945年~1971年のブレトンウッズ体制のように国際的資本移動を制限する必要がある。あるいは香港やシンガポールのように自国の金融政策の自主性を放棄して基軸通貨発行国と金利を連動させて国際的資本移動の過剰を抑制する必要がある。詳しくは国際金融のトリレンマの記事を参照のこと。
国際的資本移動の自由化が進んだ国ばかりの体制において、為替相場の決定要因の多くを占めるのは、それぞれの国の実質利子率である。
政府購入や消費が多くて国民貯蓄が少ない国はクラウディングアウトが起こるので投資が少なくなって実質利子率が上がるのだが、そのために自国をキャリー先にするキャリートレードが発生しやすくなり、自国通貨買い・外国通貨売りが発生しやすくなり、自国通貨高・外国通貨安になりやすくなる。
政府購入や消費が少なくて国民貯蓄が多い国はクラウディングアウトが起こらないので投資が多くなって実質利子率が下がるのだが、そのために自国をキャリー元にするキャリートレードが発生しやすくなり、自国通貨売り・外国通貨買いが発生しやすくなり、自国通貨安・外国通貨高になりやすくなる。
政府購入や消費が多くて実質利子率が高い国は、投資が少なくなる。しかし、自国通貨が強くなる。
政府購入や消費が少なくて実質利子率が低い国は、投資が多くなる。しかし、自国通貨が弱くなる。
以上のように、投資の多さと自国通貨の強さはトレードオフの関係にあり、同時に達成することができない。
実質利子率が高くて自国通貨が強い国の代表例はアメリカ合衆国である。
アメリカ合衆国は1980年代のロナルド・レーガン政権の頃から2020年代の現在に至るまで「強いドルは国益にかなう(A strong dollar is in the national interest.)」という考えが根強く、実質利子率の高さと自国通貨高を歓迎する勢力が一定の力を持ち続けている国である。
実質利子率が低くて自国通貨が弱い国の代表例は日本である。2022年に勃発したウクライナ戦争以降においてさらにその傾向が強くなった。
日本は「強い円は国益にかなう」という考えがなかなか台頭せず、「弱い円は輸出企業が儲かるので国益にかなう」という考えが根強く、実質利子率の低さと自国通貨安を歓迎する勢力が一定の力を持ち続けている国である。
掲示板
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/23(月) 02:00
最終更新:2024/12/23(月) 01:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。