君の祖国は
日本と呼ばれる
二百三高地とは、1980年8月2日に公開された東映配給の日本映画である。二部構成185分。
日露戦争における旅順攻囲戦をモチーフに若干のフィクションを交えつつ
史実におおよそ忠実に日露双方の攻防戦を描いた大作映画。
企画は公開の3年前よりスタートし、紆余曲折を経て脚本家の笠原和夫によって大筋のストーリーが纏められる。
大筋としては、実在の陸軍司令官乃木希典を中心に、徴兵された民間人やその家族、敵国ロシア軍側の描写も織り交ぜている。CGなど無い時代であるため、当時としては非常に精度の高い模型や実際の火薬を用いて撮影が行われ、要塞なども当時の資料を基に忠実に再現され、迫力ある戦闘シーンとなっている。休憩前に展開される死体の山を彷徨い歩く小賀少尉のシーンも主題歌効果も相まって生々しくも悲壮感に溢れ非常にリアル。終盤では白兵戦のシーンも描かれ、陥落の証である旭日旗を巡る攻防戦は目潰しまで描かれるほどエグイ描写もある。
一方で、ロシア軍兵士も家族があり、彼らもまた「人間である」ということが随所で描かれ、決して勝った戦争の映画なので「敵国が悪人である」といった描き方をしていない。
民間人の描写も秀逸で、オリジナルキャラクターでこそあれ、徴兵によって引き裂かれた親子や恋人という、おそらく当時実際に多発したであろう今生の別れも描かれ、それに苦悩する一線の兵隊たち、とやはり彼らも「人間である」ことが強調されている。
興行は大成功を収め、17.95億円もの配給収入を記録(製作予算は15億)、'80年の邦画第3位の記録となった(なお、4位は15.5億円で「ドラえもん のび太の恐竜」だったりする)。
名場面、名台詞とされるものも多く、故・夏目雅子による「美しい日本 美しいロ・・」と書き、泣き崩れる場面や明治天皇に戦果を報告する乃木大将のシーンなどが有名。
その中でも、中盤でロシア捕虜の通訳をしていたあおい輝彦演じる小賀少尉の台詞は日本映画史ひいては、戦場に赴く一兵士の心情を著した屈指の名場面とされる。
以下はその台詞
「最前線の兵には、対面も規約もありません。
あるんは、生きるか死ぬか。それだけです。
兵達は、死んでいく兵達には、国家も軍司令官も命令も軍規も、そんなものは一切無縁です!
灼熱地獄の底で鬼となって焼かれていく、苦痛があるだけがです!
その苦痛を、部下達の苦痛を……乃木式の軍事精神で救えるがですか!?
それなのに、部下やご令息を死地に駆り立てながら、敵兵に対して、人道を守れと命ずる軍司令官のお考えは! 自分には理解できんがです!!」
なお、終盤に児玉源太郎指揮により、最少の犠牲者により、旅順要塞陥落を達成し、乃木希典と伊地知幸介による指揮の無能さと、それに伴うあまりに多すぎた犠牲者という描写があるが、現代ではこれは史実上、誤りではないか?と指摘する声もある。この描写自体は司馬遼太郎の小説が大元であり、これといった歴史上の確証は取られていない。(しかし、乃木邸が投石を受けたり、大声で切腹や辞任を要求する者が現れた描写は事実であり、乃木自身が日露戦争後に妻と共に自害したのも、映画のラストで記されるとおり本当の話である)。
また、二百三高地が果たしたとされる「旅順艦隊殲滅のための観測点」としての役割も現代では疑問視されている。既に黄海開戦において旅順艦隊主力艦は外洋戦闘が不可能になるほどの損害を受けており、二百三高地、ひいては旅順要塞の攻略の目的とされていた「旅順艦隊の殲滅による制海権の獲得」は既に達成されていた可能性が高いといわれている(しかし、その事実を日本側は諜報工作で把握することが最後まで出来なかったため、「やらないわけにはいかない」作戦であったというのも真実ではある。また、旅順戦で乃木と第三軍が武名を轟かせたことは、後の日露戦争の陸戦における最終決戦・奉天会戦においていくらかの影響を与えていることも無視はできない)。
ニコニコにおいては、「防人の詩」の動画にこの映画のタグが貼られることが多いが、上記のように、決して笑えるような映画ではないことを肝に銘じておいてほしい。おそらく、意味がわかった上で観ると号泣する。私事ながら筆者は、小学校の社会科の授業でコレを観たが、何故か戦闘シーンで全員が大爆笑という異様な光景を目にした。だが、もう一度言う。決して笑えるネタではない。
地上波放送などで流れるような映画ではないが、戦争がすぐそばに迫ってきている現代日本人にこそ、今一度見直していただきたい映画である。
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最終更新:2024/12/23(月) 00:00
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