トマソン 単語

57件

トマソン

3.8千文字の記事
  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • LINE
曖昧さ回避
  1. 英語圏の姓、Thomason、Thomasson。ゲーリー・トマソンなどが著名。
  2. 瀬川らの提唱した芸術概念。当記事で解説
  3. 日本アニメ制作会社トマソン (アニメ制作会社)を参照。
この記事は用のものかもしれません。
「トマソン」とはそういうものです。消えないうちに、取り急ぎ観測を要します。

トマソンとは、芸術である。

芸術とは芸術家芸術だと思って作るものですが、この芸術というものは、芸術家が、芸術だとも何とも知らずに意識に作るものであります。だから芸術にはアシスタントはいても作者はいない。ただそこに芸術を発見する者だけがいるのです

- 瀬川

トマソンとはなんであるか

東京幽霊が出る。トマソンという幽霊である

- 瀬川

トマソンとは、正式な定義に従えば「不動産に付着していて美しく保存されている用の長物」であり、「芸術」のいち部門である。も見向きもしないようなの隅で、明らか用なものが、にも関わらずそのまま残され、あまつさえ管理・補修を受けていることさえある。その美しい遺物こそがトマソンなのである。

諸氏は、建物の外に単独で突き出したヒサシを見たことはないだろうか。塗り込められたに残るドアノブ、塞がれているのに元の形が綺麗にわか、外階段もないのに二階の外向きについたトビラ、重要なところだけ褪色して見えないカンバンといったものに、見覚えはないだろうか。ご近所に、どうにも不可思議な位置、不可思議な構造をなす構造物があったりは、しないだろうか。もしあったら、それがトマソンである。より大がかりなところでは、鉄道廃線跡に残されたホーム台といったものもまた、トマソンの一種といえる。

たしかに、トマソン物件は、有用の営からは見捨てられながら、しかしゴミ営にも入らずに、その中間体を漂っているという点でユニークな存在だ

- 藤森照信

「トマソン」は1982年白夜書房の雑誌『写真時代』内の瀬川の連載によってその存在が発表された。その後、彼は「トマソン」の概念確立し、その分布を調し、ついに「路上観察学」という一分野を成すに至る。

偉大なるゲーリー・トマソン

そこにはちゃんとしたボディがありながら、世の中の役に立つ機というものがない。それをジャイアンツではちゃんと金をかけてテイネイに保存している。素晴らしいことです。いや皮ではない。な話、これはもう生きた芸術というほかに解釈のしようがないではありませんか

 - 瀬川

「トマソン」という名は、ほかならぬ読売ジャイアンツの四番打者、ゲーリー・トマソンに由来する。
彼は鳴り物入り巨人軍に招聘されたが、二年である1982年には、四番打者でありながら「扇風機」と呼ばれるほどに三振を繰り返した。その姿に「美しく保存されている用の長物」を見た瀬川とその一が、彼と同じような、中に保存された用物をす分野名として「トマソン」を採用したのである。

そしてそのゲーリー・トマソンが同年を最後にバットに球が当たらないという、ただそれだけの理由によって」解雇された時、瀬川はありとあらゆるトマソン物件の未来をそこに見ることとなる。ただの芸術と違い、芸術はいつ破壊され、あるいは撤去されてしまうかわからない。早急に観測されねばならない、と。

トマソンの発見

最初の発見は1973年まで遡る。
瀬川が四谷本町の旅館、祥館の外に見つけた、ただ6段分上って下るだけの、どこにも通じていないコンクリート階段が発見第一号であった。そしてその階段に取り付けられた木製の手すりに補修を認めた時、この階段は「まったく用でありながらゴミではない(補修されている)何か」として観測されたのである。これを、ただ純に上り下りするだけの用途しかい階段、すなわち純階段と呼ぶ。 

第二の発見はその翌年。
偶然江古田駅を訪れた瀬川が、ベニヤで塞がれた窓口を発見した。それだけであればただの塞がれた窓口だが、台座となっている石に長年の摩擦によってできた凹みがあり、無視してもいいものをわざわざその凹みに綺麗に合わせてベニヤが切りだされていたことが、瀬川に「確実に未知のもの」を感じさせた。

第三の発見は数カ後、イラストレーター、南伸坊によってのものである。
お茶の三楽病院に、立な門が存在していた。その門は、ヒサシも門も、「三楽病院通用門」という看板まで備えていながら、 ただだけがセメントで見事に塗り込められているがために門としての用途を果たしていない。南伸坊の通報で駆けつけた瀬川も、これには「困った門です」と言うしかなかった。

この三つ、すなわち「四の純階段」、「江古田窓口」、「お茶用門」の三点がった時、ついに瀬川は、「これは芸術である」と認識するに至ったのである。そしてそれには「トマソン」という名が付けられ、彼が教をとる美学校生徒や「写真時代」の誌上において、その観測と分類が進められることとなった。ここに、芸術本部トマソン観測センターが発足する。 

やがて彼らの活動は「考現学」とも接続し、瀬川藤森照信、南伸坊、丈二、とり・みき、一木努、荒俣といったそうそうたるメンバーえた「路上観察学会の結成へと繋がってゆくのであった。

トマソンの分類

様々な種類があるが、とりあえず一般的なものを紹介する。

  • 用階段
    上った先がどこにも繋がっていない、あるいは中に繋がっている階段。本来あるべき的地が存在せず純に階段であるだけの存在と化していることから「純階段」とも呼ばれる。
  • 用門
    美麗に塞がれているにもかかわらず、なお門の形をとどめている構造物。あるいはただ門ないしだけがあり、周りにその続きとなる障がないため不必要な構造物。全に門としての形を喪失している場合は含まれない。

  • タイプ」とも。覆っていたなどが塗り込められた後も撤去されずに残っているのこと。
  • 原爆タイプ
    建物の壁に、取り壊された隣の跡などがり付いているように見えるもの。原爆投下時、爆心地近くの人のがそのまま建物に焼きついていた故事を思い起こさせるためにこう呼ばれる。並みの”リアル感”に大きく寄与するため、アニメドラマなどで登場することもある。なお、原爆の名称が芸術に使われるのは不適切なため、近年では「タイプ」と言い換えられることが多い。
  • 高所
    やたら高いところにあるトビラや、高いところにだけあって下に繋がっていないハシゴ、階段などをす。
    普通庭用の玄関二階についていたりと、町並みに溶け込んだシュールさが魅力。
    高所ベンチ
    写真はその実例といえるベンチ。急な斜面と高すぎる段に挟まれ常人には利用し難い位置に、錆びつきつつもなお居座り続ける、玉座のごとき威をまとったベンチであり、高所タイプのトマソンといえる。
  • ウヤマ / 蒸発
    最初の発見例である「卯山店」という看板のように、褪色、塗り潰しなどによって何を意味するのか判らなくなっている看板類。記事冒頭にくっついているようなヤツである。
  • カステラ
    から出っ構造物。引っ込んでいると「逆カステラ」と言われる。
  • アタゴタイプ
    東京愛宕山で第一号が発見された、道路際などのの突出物。繰り返し補修されているものもある。
  • 阿部定
    根元で切られた電信柱などの出っりが放置されているもの。阿部定事件を思い起こさせる「痛い」切られ方をしていることから命名。

有名なもの

無用エントツ

おそらくトマソン史上もっとも有名なもの。トマソン観測センター活動当時の「ビルに沈む町」こと再開発直前の麻布町のどまんなかにぽつんと立ち尽くす一本の煙突であり、その根元はバラックによって守られていた。発見後、飯謀にも錆びハシゴを単身その頂点まで上り詰め、そこで煙突の魚拓を取り、立ちあがってレンズで下界を撮した。そのときの写真は、瀬川の著作『超芸術トマソン』の表に見ることができる。

のちに解体されたが、エントツのあったその場所には現在アークヒルズの煙突が聳え立っている。

海部の無用トンネル

徳島県JR四国牟岐線海部のすぐ北にある短い鉄道トンネル(町内ちうトンネル)。建設時には山だった部分が住宅造成によりほとんど切り崩されたため、遂にはトンネルだけが残ってしまったもの。

かつて瀬川『超芸術トマソン』でも紹介された、由緒正しきトマソンといえる。掲載当時には周辺の建築物木もなく、現代よりさらにスッキリした姿であった。

現在でも残っており、海部ホームから眺めることができる。

関連動画

関連商品

超芸術トマソンの概念は、人類史上、この私たちの時代になって、しかもこの私たちの日本国においてはじめて姿を見せたものである。その意味でこの本は、地球上の意識史に残る記念碑となるだろう。人類が都市を持ち、その一方で意識を持っているかぎりは、その都市と意識の関係に見え隠れして、超芸術トマソンはいつまでもあらわれてくるのである

- 瀬川超芸術トマソン』序文より

関連静画

関連項目

この記事を編集する

掲示板

おすすめトレンド

ニコニ広告で宣伝された記事

記事と一緒に動画もおすすめ!
結月ゆかり[単語]

提供: まるこお(愛)

もっと見る

急上昇ワード改

最終更新:2024/12/23(月) 19:00

ほめられた記事

最終更新:2024/12/23(月) 18:00

ウォッチリストに追加しました!

すでにウォッチリストに
入っています。

OK

追加に失敗しました。

OK

追加にはログインが必要です。

           

ほめた!

すでにほめています。

すでにほめています。

ほめるを取消しました。

OK

ほめるに失敗しました。

OK

ほめるの取消しに失敗しました。

OK

ほめるにはログインが必要です。

タグ編集にはログインが必要です。

タグ編集には利用規約の同意が必要です。

TOP