ガメラ3 邪神覚醒とは、1999年3月6日に公開された大映最後のガメラ映画である。
前作から3年ぶりに公開された平成ガメラシリーズの完結篇。
メインスタッフはこれまでと同じように金子修介監督、樋口真嗣特技監督に脚本の伊藤和典が加わったトリオで製作されている。
『ガメラ2 レギオン襲来』の直接の続編ではあるが、ストーリー的には『ガメラ 大怪獣空中決戦』との繋がりが深く、中山忍ら前作で登場しなかった第1作のメンバーが本作には再登場しており、3部作すべてに登場した螢雪次朗、藤谷文子をはじめとしたキャストにおける一種のオールスター映画の様相を見せるほか、敵怪獣もパワーアップしての再登板となるギャオスにその亜種変異体という設定のイリスが加わり、平成シリーズでは最多の怪獣数となっている。また新キャラクターにして本作のキーとなる比良坂綾奈役には当時天才テレビくんや木曜の怪談シリーズなどの和製ホラーミステリーで人気だったティーン女優の前田愛が起用された。
このほか、主題歌は前作までのロック路線を止め、ガメラシリーズで初めて女性ソロシンガーによるものが使われた。
それまでの平成ガメラシリーズ同様に本作でも新たなアプローチへのチャレンジは行われ、『怪獣映画の王道』『怪獣映画から戦争映画への回帰』に続き、しばしば特撮作品ではタブー視されていた『いくら正義のために戦ったとしても、その結果で善玉怪獣が引き起こした災害で家族を失った者はどうなるのか?』という特撮映画史上でも極めて稀な遺族側の立場からのストーリー展開が行われることになった。
こうして、キャッチコピーでもある「ガメラを許さない少女」とそれに呼応して誕生した「イリス」が生まれ、さらにギャオスとガメラの渋谷決戦ではガメラの火球に巻き込まれた大勢の一般市民が画面上で焼け死ぬ様子が描かれている。
例によって日本テレビの実在番組をモチーフにしたニュース映像もこれまでと同じように効果的に使われ、渋谷災害の死傷者の描写や一般市民に対するインタビュー、ガメラ肯定派と否定派に分かれた討論を行うワイドショーなどに用いてリアリティを高めている。
また、仲間由紀恵がミイラになったりとシリーズ中でもオカルト色の強い作風になっており、この世界のガメラの源流と思われる玄武の存在や古代人がプロトタイプとして廃棄した失敗作が多数発見されるガメラの墓場などガメラ自身の正体も少しだが明らかになる。
なお、脚本こそ長谷川圭一&横谷昌宏と別人だが、後に金子が監督するゴジラシリーズの『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』は、怪獣の出自が本作に類似したものになり、朱雀、白虎、青龍に当てはまる怪獣が出ているものの、玄武にあたる怪獣が出現しないことから一部で関連性が指摘されたりもした(この映画には「婆羅陀魏山神」も存在することにはなっている)。
実際、GMKの翌年2002年11月13日の夕刊フジで、角川が大映を買収した件について報じた中に「ゴジラvsガメラの製作を検討している」というものを報じていた。
ガメラの造型はさらに進化し、前作では腕に垂直状になっていたエルボークローが平行になり、第6の指のようにも見えるような形状に変化しているほか、顔つきもそれまでの愛らしさは無くなり、相手を睨み付けるような緑色の鋭い眼光を放つのが特徴で、頭はG2よりさらに小さくなっている(スタッフからは肉食系、ベムスターみたいなシルエットと呼ばれている)。
また、飛行形態も3年の月日が流れたことでさらに発達したCGにより、スタッフのアイディアがようやく形にできるようになり、「回転飛行の遠心力で潰れて平たくなる」「ブレーキフィンのように甲羅の一部が変形」といった部分が映像化された。
前作でガメラは文字通り命がけでギリギリの賭けとして「最初で最後のたった一発の超火球」でレギオンを粉砕するが、このことが次回作である本作の決着について、樋口特技監督の頭を悩ませることになった。
デザイン稿の段階では「ウルティメイト・プラズマを再度使用する」という案もあったらしく(オイオイ、それじゃストーリーの根幹にあるマナの意味がねぇだろ)、腹部発射孔が剥き出しになっているデザインも現存している。最終的には満身創痍の状態から繰り出された即興的な新技での決着という形になった。
なお、金子修介が監督して、角川・東宝の了解を得、藤谷文子がゲスト出演までした某ヒーロー番組で使われたガメラはこのG3バージョンである(もう片方のGももちろん金子監督バージョンであった)。
敵怪獣のイリスはクトゥルー神話に登場するクトゥルフをモチーフに巻貝や軟体動物の意匠が取り入れられ、頭部にはギャオスをイメージさせる鋭く尖った顔が配置されている。「人の形状をしている怪獣」というテーマではあったが、あくまでも怪人的ではなく怪獣的な造型に拘っている。
なお、造詣についてイリスには男根のイメージがあったといい、「脊椎動物から作られたギャオスではなく、無脊椎動物から作られたギャオス」というように解釈したらしい(レギオンの陰とも)。
中でも目を引くのは美麗なCGによる飛行シーンだが、この飛行は当時のPCスペックだとかなりの難工程だったらしく劇場パンフレットにも「困ったやつ」といった記載があった。また、リング状に変形して移動するという案もあったようだが、さすがに没になっている。
ちなみに、撮影時のスーツが今もG3ガメラと対峙する形で大映撮影所の食堂に飾られているらしい。
なお、この作品でイリスを育てることになる前田愛は幼体のイリスについて「あれをかわいいとは思えなかった」と語っており、「家で飼っていたマルチーズのイメージでイリスを可愛がるようにした」らしい。イリスたんカワイソス。
また、イリスと同化して取り込まれるシーンは粘液を身体に塗るのが気持ち悪い上に冷たくかなり不快だったという(最初のうちは気を使って丁寧に濡らしてくれていたが、最後のほうは一気にかけられたとか)。このほか、水中撮影では鼻から泡が出ないように身体から空気を抜いてかなり息を長く続けるという芝居が必要だった。
また、パンフレットでも「怪獣映画に珍しいエロティックな場面」とネタにされ、本作放送時に一番実況が盛り上がることでも名高い「イリス・・・熱いよ・・・」とボタンを外すシーンは「あれはもう、とっても嫌だった」と当時を振り返っている(コンテ段階だともうちょっとエロい。また、その後の繭にされているシーンはマケットだとなんと全裸!)。
しかしながら、3年のブランクはコンピューター技術に革新的な進化をもたらしており、90年代最末期という年代を差し引いても、触手による攻撃や強力な超音波メスを高速で避ける戦闘機、そして追いかけるガメラの形態を変えながらの追撃、光線を喰らい多量の流血を伴うガメラと見ごたえのある戦いが描かれ、ショボかったり作りものっぽさが前面に出ることが多い邦画CGとしては21世紀の現代でも十分に通用する突出したクオリティとなっていて、特撮ファンならば必見の名バトルシーンとなっている。
ストーリーは脚本段階でかなり揉めたともいい、伊藤が恋愛映画の要素をこの映画に持ち込もうとしたところ、それが原因でかなり足並みが乱れたといい、民俗学的な部分を入れるという部分もあり、ガメラがイリスを食ってしまうというラストも想定したというが当時流行の『エヴァンゲリオン』との類似性という理由でこれは没になったという(でも最終的な必殺技は『Gガンダム』じゃねえかとか言わないでね)。
イマイチ発展しない綾奈と龍成の関係はこの恋愛映画構想の名残でもある(いきなり名前呼びしたりしてる場面で、黒歴史をフラッシュバックさせたりしないようにね、男子諸君w)。
なお、メイキングとしてエヴァンゲリオンの庵野秀明が監督した『GAMERA 1999』なるビデオが発売されたが、これはスタッフ間のかなり険悪な場面ばかりを映しており、内容の中立性について賛否がある(一説には金子監督に対する単なる嫌がらせとも)。
賞レースでは星雲賞や日本SF大賞は逃したものの、日本インターネット映画大賞の日本映画部門を受賞しているほか、前作同様にキネマ旬報ベスト・テンの6位に選出された。
しかしながら、暗いストーリー展開やバッドエンドとも取れる結末が災いしたのか、興業的には右肩上がりだったシリーズで初めて前作割れとなる配給収入6億円に止まり、3部作は一度も目標額の10億円に届くことなくそのままシリーズ完結となってしまった(もし10億突破していれば4作目の話もあったらしい)。
これに関連してかどうかはわからないものの、平成26年のガメラ49周年の夏休みにBSプレミアムで3部作が一挙放送された際のガメラの公式Twitterでガメラが「押し寄せるギャオス軍団。いくぜ戦いはこれからだ!俺はまだ登りはじめたばかりだからな。このガメラ坂ってやつを。」なる某打ち切り漫画(最近復活)を髣髴とさせる台詞で実況を終了したりしている。
2015年10月9日にガメラ生誕50周年を祝して公開されたトレイラー映像は大量のギャオスが東京を襲う中で岩のようなガメラがそれを駆逐するという、本作のラストを踏まえたかのようなストーリーが公開された。現時点で映画化となるのか否かは不明。
レギオン襲来から3年が過ぎた頃
世界中でギャオスの大量発生が起こり、それをガメラが退治していた。
かつて自ら予言した「渡りを行っていたギャオスの耐久卵が一斉孵化したらどうなるのか?」が現実となったことで、かつて日本でギャオスと遭遇した鳥類学者の長峰はそのギャオス発生の要因を調査していた。
同じ頃、4年前のガメラ、ギャオスの首都攻防戦において両親を亡くした少女綾奈は、日々両親を殺したガメラを恨む悪夢にうなされ、親戚や新しい関西の学校に馴染めずにいた。
ある日、学校のスケバングループに村に封印されている「柳星張」なる魔物が封じられているという洞窟にある封印の石を取ってくるように命じられる。
どんな怪力の持ち主でも動かすことができなかったというその石だったが、彼女のガメラへの憎しみに呼応したかのごとく持ち上がり、言われるがままに石を持ち出した綾奈だったが、これによって封印が解けてしまう。
暫く経って、世界中で発生していたギャオスは日本にも飛来。
その2体が渋谷上空に現れ、それを追ってきたガメラとの壮絶な空中戦が繰り広げられる。
しかし、飛び交うギャオスを攻撃するために無差別に発射されたプラズマ火球はその街にいた人々を多数巻き添えにし、渋谷一帯は壊滅状態になってしまう。
そのギャオスが絶命したのと同じとき、奇妙な生物があの洞窟内に誕生していた。
綾奈はこの生物にかつての飼い猫と同じ『イリス』と名づけ、イリスも同じくガメラに仲間を殺されたということから、自分で育て、仇を取ってもらうのだという。
渋谷の壊滅という事態に政府はガメラを再び攻撃の対象に認定する。
そして怪生物イリスは洞窟内の食料に飽き足らず、森の動物をも捕食するまでに成長し、育ての親である綾奈との同化を試みるようになり・・・
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最終更新:2025/01/22(水) 06:00
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