なぜ誰も管理職になりたがらないのか?「そりゃそうだ」と思える納得の理由写真はイメージです Photo:PIXTA

「人手不足なのに管理職のなり手がいない…」ビジネスの最前線では今、管理職人材の不足が深刻な問題になっている。管理職に抜擢されればキャリアアップと収入アップを望めるにも関わらず、マネジメント人材が不足しているのはなぜなのか?リクルートワークス研究所所長・大久保幸夫氏がその背景に迫る。※本稿は、大久保幸夫『マネジメントのリスキリング――ジョブ・アサインメント技法を習得し、他者を通じて業績を上げる』(経団連出版)の一部を抜粋・編集したものです。

管理職になれば昇給確実!
それなのに「不人気」な理由

 あなたはマネジメントの仕事にやりがいを感じているだろうか?

 自分に適した仕事と思っているだろうか?

 好きな仕事だろうか?

 これからも継続してやり続けたいと思っているだろうか?

 残念ながらこれらの質問に力強く「YES」と答えてくれる人は多数派ではないようだ。ミドルマネジャーを対象としたマネジメント研修の場で、「あなたはマネジメントの仕事が好きですか?」というアンケートをとったことがある。受講しているのは企業横断で集まった大企業の課長層の人たちが多い。そこでの回答を集計した結果は以下の通りであった。

図表:経団連事業サービス主催「第18期(2023年度)経団連グリーンフォーラム」の受講者へのアンケート経団連事業サービス主催「第18期(2023年度)経団連グリーンフォーラム」の受講者へのアンケート(同書より転載)
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 5件法のアンケートであり最初の2つが肯定的回答と考えられるため、マネジメントが好きな人は13.1%と31.1%を合わせた44.2%となる。現役の管理職で、しかもマネジメント研修を受講している人でも半分弱しか好きな仕事だと思っていないということになる。現在担当している仕事をはっきりと好きと言えないのは、日々のマネジメントに苦労していることの証左だろう。

 マネジメントを担う「管理職」というのはひとつの職種である。日本標準職業分類では、大分類に管理的職業従事者があり、全国で約135万人の管理的職業従事者がいるとされている(2020年の国勢調査)。定義は、専ら経営体の全般または課以上の内部組織の経営管理に従事する者となっている。

 単純に考えれば、管理職は「不人気職種」ということになってしまう。