供給過剰に陥りやすく、安定的にもうけることが難しいガラス業界。大手メーカーの日本板硝子は、身の丈を超える買収を強行したことが失敗に終わり、現在も業績不振で苦しんでいる。特集『2025年「倒産ドミノ」勃発!?倒産危険度ランキング【上場434社・最新版】』の#21で取り上げるのは、ガラス・土石製品業界。倒産危険度を検証したところ、9社が“危険水域”となった。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
供給過剰になりやすいガラス業界
“危険水域”と判定されたのは9社
板ガラスは供給過剰に陥りやすく、安定的にもうけるのが難しい事業だ。板ガラスを生産する窯は、いったん火を入れると止めるのが困難で、次から次へと製品が産出される。何としても売りさばかなければならないが、重量が重く製品単価が安いため、遠くの地域に輸出するには不向きなのだ。
その結果、例えば東アジアなら東アジア、西欧なら西欧といった具合に、地域ごとに製品価格の下げ合いが起きやすく、利益が取りづらい構造に陥っている。
板ガラスを手掛ける日本のメーカーは、AGC、日本板硝子、セントラル硝子の3強体制だが、“脱ガラス”の動きが続いている。板ガラス首位のAGCは、2018年に「旭硝子」の名前を捨てた。ガラス以外の事業を拡大することで、厳しい経営環境を生き抜いていくことを既に宣言済みだった。
セントラル硝子も22年3月に海外のガラス事業から撤退することを決めている。
3社の中で最も苦しいのが、今もガラス専業メーカーを続ける日本板硝子だ。同社は06年3月期に、小が大をのむ買収を強行した。当時世界3位のガラスメーカーだった英ピルキントンの買収に、同6位の日本板硝子は約6000億円を投じて大勝負をかけたが、うまくいかなかった。
足元の業績は厳しい。24年4~9月期の純損益は38億円の赤字である。そして、財務基盤の安全性を示す自己資本比率は11.1%と低い。無理な買収をして、抱えた有利子負債の規模は5310億円に上る。総資産9812億円に対して明らかに過大だ。
負債が多過ぎるため、25年3月期に金融費用が270億円も発生する。これは営業利益見通し額の260億円を上回っている。今後金利が上昇すれば、同社の業況は一層厳しくなるだろう。
ダイヤモンド編集部は今回、ガラス・土石製品各社の倒産危険度ランキングを作成した。この業界を扱うのは初の試みであり、9社が“危険水域”に入っていることが判明した。
このうち、製瓶・ガラス食器大手の石塚硝子がワースト3位にランクインしている。果たして1位はどこか。次ページでは、ワースト上位企業の顔触れを見ていこう。