東京ディズニーで働くキャストをなじる常連客、「ミニーおばさん」の謎写真はイメージです Photo:EPA=JIJI

東京ディズニーリゾートに57歳で入社し、65歳で退職するまで、私がすごした“夢の国”の「ありのまま」をお伝えしよう。ゲストとの感動的な触れ合いもあったし、ミッションを忘れるほどゲストに対して怒りを覚えることもある。楽しいことばかりの仕事などない。それはほかのすべての仕事と同様、ディズニーキャストだってそうなのである。
※本稿は笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ、2022年2月1日発行)の一部を抜粋・編集したものです

某月某日 君子危うきに近寄らず
楽しみ方は人それぞれ

 キャストもいろいろなら、ゲストもまたいろいろである。ハロウィーンの時期は、全身仮装をしたゲストでにぎわう。

 女性には変身願望があるのか、多種多様な仮装は男性ゲストを圧倒、壮観である。この日のために1年がかりでドレスを作ったというゲストもいるらしく、あちらこちらで写真撮影会が繰り広げられる。

 一番多い仮装はアリスだ。似合っている子もいれば、なかには「ん?」というゲストもいる。似合おうが、似合わなかろうが、楽しんだもの勝ちである。

 パレードを見るために、その何時間も前からパレードコースに座って待っているゲストがいる。パレードコースは、開始の1時間ほど前からレジャーシートなどを敷いて待機することができ、次第に人で埋まっていく。

 ある程度早めによい場所を確保したいという気持ちはわかる。ただ、パレードの4時間も前であれば、オンステージをふつうにゲストが行き交っている。その中、ポツンとひとりで座っているゲストがいるのだ。

 男性も女性もいて、だいたい1人か2人。荷物に大量のぬいぐるみやバッヂなどをこれみよがしにつけている。何もそんなに前から座っていなくてもいいのにと思う。その時間にアトラクションを楽しまなくていいのですか、と余計な心配をしたくなる。

 それでも、座っている場所はその人にとってピンポイントで最高の場所なのだろう。4時間前の場所取りには、「絶対にこの場所でパレードを見るんだ」という強い決意が感じられるのであった。

 一眼レフの本格的なカメラを首からぶら下げて、シャッターチャンスを狙っているゲストもいる。とにかく早く次のポジションに行きたいのであろう。撮り終わるとすぐに走り出す。転んだり、ほかのゲストにぶつかったりすると危険なので、あらかじめ走ってくるあたりに回り込み、「走らないでください」と声をかける。

 開園時同様、声がけして従ってくれるゲストなどほとんどいない。