スマホの契約が分かりづらくて面倒くさいのは何故?

ビジネス

公開日:2024/5/3

「あれだけ流行ったタピオカ屋はどこへ行ったんだろう?」
「餃子の無人販売ってなんで儲かるんだろう?」

ふと、こんな疑問を抱いたことはありませんか?
皆さんの日常の半径10メートル以内にも、実は知られざる“儲けの仕組み”が存在します。

タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ』は、開設わずか1年で登録者数約50万人超の税理士YouTuber脱・税理士スガワラ君による、ビジネス成功のヒントがギュっと詰まった一冊。

ビジネスの裏側を見てきた有名税理士が、今日から始められる商売のカラクリを解説します!

※本記事は書籍『タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ』(菅原由一/KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

【30日間無料】Amazonの読み放題をチェック >


タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ
『タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ』(菅原由一/KADOKAWA)

4-5 携帯電話の契約はなぜ分かりづらく手間がかかるのか?

▶ 変える労力を避けたい

 シェアを増やしたい場合も、シェアを奪われないようにしたい場合も、共通して重要なのがスイッチングコストです。スイッチングコストは、何かを変える(スイッチする)ための労力や、その労力をかけたくないと思う心理のことです。

 携帯電話はスイッチングコストが発生する一例です。携帯電話市場は、かつては大手3社が需要を囲い込み、ユーザーが固定化されていました。しかし、使用中の番号を使い続けられるナンバーポータビリティ制度ができ、大手間での移動がしやすくなりました。また、大手キャリアのサブブランドを含む格安スマホの提供も始まり、従来のような3社寡占の状況に変化が起きました。

 結果として携帯料金の平均額は下がり始めたわけですが、一方には、高額な携帯代を払い続けている人もいます。契約者数を見ても、トップ3は依然として大手で、格安スマホユーザーの割合は2割前後にとどまっています。

▶ 負担が大きいほど囲いこめる

 スイッチングコストの特徴は、コスト負担の感じ方が人それぞれで異なることです。一般的なコストは、例えば、電話代が5000円、交通費が1万円といったように数値化でき、5000円や1万円という価格は万人に共通です。

 一方、スイッチングコストは心理負担が占める割合が大きく、これは数値化できません。例えば、機器の操作に慣れていない人や忙しい人は面倒と感じる度合いが大きいでしょう。慣れている人は格安スマホをネットで契約したりSIMカードを入れ替えたりする作業に負荷を感じません。

 この負担の大きさや差を数値化することはできないのです。これはサービスの提供者側にとっては囲い込み戦略のポイントです。

 重要なのは、他社サービスに変えるための手続きが煩雑であるほど、また、手続きに不慣れなユーザーが多いほど、そのサービスはスイッチングコストが高く、ユーザーを囲みやすいということです。

 そのため、ユーザーを囲い込むための施策としては、手続きを複雑にしたほうが良いといえます。実際、大手キャリアのサービスを見ると、家族割引、長期利用割引、自宅用インターネット回線の割引、電気代など別のサービスとの連携、クレジットカードやポイントカードとの連携サービスなどがあり、ユーザー特典が複雑化しています。

 キャリアを変えると、それに伴って付帯サービスも契約し直すことになり、つまり非常に面倒くさくなります。そこでスイッチングコストが高くなり、「多少高くても今のままでいいや」となるわけです。

▶ コストを下げる見返りは大きい

 大手などから顧客の獲得を目指す新規事業者の場合は、この面倒くさい心理を上回る特典をつけなければなりません。その方法は3つあります。

 1つは価格特典です。既存サービスよりも安ければ安いほど「面倒だけど、やったほうが得」と思う人が増えます。

 2つ目は乗り換えの手間を抑えることです。すぐできる、誰でもできる、代わりに手続きをするといった方法によって「それほど面倒ではなさそうだ」と思ってもらうということです。

 3つ目は既存サービスにない魅力をつくることです。乗り換えの手続きが面倒でも、乗り換えた先でしか使えない機能などがあれば、「面倒くさいけど乗り換えよう」と思ってもらえるでしょう。

 また、そのための施策としては、サンプルを配ったり無料のお試し期間を設けたりするなどして魅力を感じてもらうことができます。

 スイッチングコストの壁さえ乗り超えれば、そこから先は継続的な収益が生まれます。携帯電話の場合、大手のユーザーの継続利用年数は10年を超えていることが多く、つまり10年にわたって収益が獲得できます。囲い込みによって事業収益も安定しやすくなります。

 これは大きな見返りです。そのために施策を工夫したり考え出したりする効果も非常に大きいといえます。

タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ

タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ

サムネイル画像提供:PIXTA
<第5回に続く>

本作品をAmazon(電子)で読む >

本作品をebookjapanで読む >

本作品をブックライブで読む >

本作品をBOOK☆WALKERで読む >

あわせて読みたい