「昭和レトロ」

メーカー勤務の下の娘がコロナ明けに飲み会が入り始めた時期、

酒の回ったおっさん同僚に

「結婚したら旦那を立てなければ」だの

「仕事をさせてもらうのなら旦那さんに迷惑をかけないように」だの

「仕事をしても家事は妻がちゃんとやらないと」だのの洗礼を受け、

「今どき、こんなレトロなこと言う人間がいようとは!」と驚いて

同期たちのラインで急遽「昭和レトロ発言録」を募ったところ、

出るわ出るわ、昭和親父語録、赴任地を超えてあっという間に集まって

「何かあった時用に」と皆で共有しているそう。

ちなみにこれは女性だけが言われるのではなく、男性も大いに言われて

ともに「昭和レトロ!すごい!!」と男女ともに感心(?)しているのは

ゼット世代よりはちょっと上、の娘たちのジェンダー教育は行き届いているよう。

「わーこんなこと言う人、生まれて初めて見た!」みたいに思った同期は多く

太古の恐竜を眺める気分でまじまじみられている遺物たちはなんと思うやら。

前時代的なことを言われても、相手にしない、

まだ身を削られるがごとくに不快な思いをしないで済むのは時代が変わったせいか、

丸の内OLなる上の娘に言うと

「コンプライアンスって地方にはまだ行き届いてないねえ」としきりに感心。

都心でも思ってそうな人間が無数にいて「口には出さないだけだろうけどね」と

「昭和レトロ」な感覚はまだまだ滅びない。

ふと、私が子供時代に読んだ、昭和レトロなおっさん御用達コラムのトンデモぶりを

あれこれ掘ってみたら面白いかも、と思い付いた。

昨日、思い出した「娘が嫁にいくまで娘と同じ年の女は抱けない」みたいな

当時は「いい男のいい話」の最たるものであるがごとく取り上げたようなコラムは

今でもあるのかどうか、親父、おっさん、と言われる世代のコラムを

今はあまり読む機会がないので私が知らないだけか、

大昔のおっさんたちのエッセイ本でも読んでみようか、と思った。

私は大昔、北杜夫の文章が好きであったが、思えば、彼はその世代の人間としては

あまりこの手のえげつない下ネタを書かない人であったな、

飄々として羞恥心も抱く、そういう昭和人もいたこともここに記録。

今、当たり前のジェンダー感を持つ人よりも、こちらの方が珍しく、貴重であった。