ショップを探すARアプリ「随便走」
今回は、中国のIT系メディアの「互聯網周刊」が発表した「2016年上半期ジャンル別アプリランキング」の「クリエーティブ部門」から、筆者が面白いと思ったアプリを紹介したい。ランキングには中国の携帯電話番号およびSMS認証でユーザー登録しないと利用できないものもあったが、それらは除外して、日本でも利用できるアプリを厳選した。なお、中国のアプリは原則登録が求められるので、これらのアプリを試すには、あらかじめ外国版の「WeChat」や「QQ」のIDを取得しておく必要がある。
まず「随便走(スイビィエンツゥオゥ)」は、ゲーム感覚で近所のレストランや店を探すアプリ。アプリ名は「適当に行く」とか「お任せで行く」とかいった意味の中国語だ。
このアプリを適当な商業地で起動すると、カメラを通した景色にコンパスやレーダーがAR(拡張現実)で表示される。これを頼りに目的の店舗を見つけると、その数だけ経験値が上がり、レベルアップしていく。ユーザーのレベルが上がると、プロフィール画面の「家」などが豪華になっていく仕組みだ。
「随便走」には、日本の店舗も登録されている。ただし、地図の精度が低いのか、目的の店舗の位置が数キロほどずれて表示されてしまう。要するに、日本では全く使えないアプリではある。ARの面白い使い方をしているだけに残念だ。
同じ習慣を身に付けたい仲間が見つかる「種子習慣」
「種子習慣(ジョンツゥシーグワン)」は、特定の習慣をゲーム感覚で身に付けるためのSNSアプリ。「早起き」「朝ごはん」「読書1時間」「体を鍛える」「日記を書く」「1日を振り返る」など、実にさまざまな「習慣」が用意されている。
それぞれの習慣を実行したら、画面にチェックマークを付け、証拠写真をSNSにアップロードする。継続状況は植物のイラストでイメージされ、続けていくと種が芽を出し、さらに育って葉を出し、やがて小さな木へ、そして大樹へと成長する。逆に、サボっていると枯れてしまう。
SNS機能を利用して、他のユーザーの継続状況を閲覧するのもよし、同じ習慣を身に付けようとしている仲間同士で競うもよしだ。
音楽と絵で癒やされる「鯉」
「鯉」は純粋なゲームアプリ。タイトル通り鯉が主役のタップアクションゲームだが、主人公はもう一回り小さい金魚のような風貌で、小川や小さな池などを探検する。日本語や英語などさまざまな言語に設定が可能で、画面に表示されるチュートリアルに従っていけば、中国語が分からなくても自然にゲームの世界に入り込むことができる。
ステージはいくつも用意されていて、池の主である黒い鯉の突進攻撃を避けながら、別の色の鯉を蓮の花の下まで連れて行ったり、花びらを集めたり、用意された条件を満たすとステージクリアだ。舞台となる池や川にはクリアとは関係のない秘密が幾つもあり、それらを発見するとステージクリア時に評価が上がる。
難易度は結構高いが、水滴が落ちるステージ、パステルカラーのキャラクター、イヤホンをして聴きたくなる音楽や効果音、それらのすべてがきちんと作られていて癒やされる。
無数にリリースされる中国製アプリの中には創作意欲あふれるアプリもある。ここで取り上げたような優れたアプリが多くのユーザーに評価されることになれば、スマートフォンアプリに対する中国の消費者の意識も、作り手の意識もずいぶんと変わっていくのではないだろうか。
海外専門ITライターとしてライター業を始めるものの、中国ITを知れば知るほど広くそして深いネタが数限りなく埋蔵されていることに気づき、すっかり中国専門ITライターに。連載に「山谷剛史のアジアン・アイティー」、「山谷剛史のチャイナネット事件簿」、「華流ITマーケットウォッチ」など。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」(ソフトバンククリエイティブ)など。最新刊は「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書) 」。
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