偏読老人の読書ノート

すぐ忘れるので、忘れても良いようにメモ代わりのブログです。

海辺の博覧会

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「海辺の博覧会」(芦原すなお)は、児童小説。七つの連作短編集だが、七つ(博覧会、秋祭り、懐かしい栃錦、若乃花の名前がでてくる相撲大会、ハンデをつけての中距離走競争、市議補欠選挙、春の町民大運動会、水泳大会)のエピソードが描かれている。

 <この連作集の第一話、「海辺の博覧会」は、1994年――つまり今から13年ほど前に書いたものである。その他は昨年(2006年)から今年にかけて書いた。そもそも連作の意図はなく、一本で終わるつもりだった。だが十余年ののち、もう一度あの子供たちの物語を書きたくなったのだ。(あとがき)>

 子供の眼で読むと、ユーモア小説になるのだろうが、大人が読むと物足りないかもしれない。いや、物足りないと、思う。私の子供のころの思い出というと、恥ずかしかったこと、今でも悔やんでいることしか浮かばないのだが、皆はどうなのだろう? 楽しい思い出にふけって一人ニヤニヤすることがあるのだろうか。私は駄目だ。楽しい思い出の抽斗に鍵がかかってしまっているようだ。その代りに、嫌なことが抽斗からはみでて、見たくなくても眼に入ってしまう。ネガティブに出来ているのだと思う、心が。暗いなあ。

<大阪万博にローマ・オリンピック、日本中が高度経済成長への期待に沸き、誰もが精一杯、明るく暮らしていた昭和30年代の四国・香川県の海辺の町。穏やかな毎日に起こる「事件」に子どもたちと大人の世界が交差する。懐かしくもまぶしい時代の物語。>

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