偏読老人の読書ノート

すぐ忘れるので、忘れても良いようにメモ代わりのブログです。

山本幸久さんを読み直して(2)

1017.jpg

「ある日、アヒルバス」(山本幸久)は10年近く前に読んでいて、覚えているかどうか不安だったが、読んでいるうちに内容をほぼ思い出した。ひどく面白かった記憶があったのだが、それほどでもなかった。お仕事小説で今回のお仕事はバスツアーのガイドさん。ある日の観光バスツアーの模様と、新人研修に駆り出された秀子と同期の亜紀の奮闘ぶりが描かれる。会社のマスコット「アルヒ」くんのグッズ化企画を担当するのは「凸凹デイズ」の零細デザイン会社「凹組」のウラハラ「凪海」なのが、何とも言えず嬉しい。ほっこりするんだよなあ、山本さんの小説。

さて、本作でも脇役陣がくせ者ぞろいだ。ケバい化粧でバスガイドの地位向上のため「革命」を志す秀子と同期の亜紀、口うるさいことで有名な古株のママさんガイド(意外と「口うるさく」感じられなかったが)と語尾になぜか「ござる」をつける一人息子のカオル、そして何より秀逸なのはバスツアーに参加したおじさんやおばさんたちのはちゃめちゃぶりだ。理屈抜きに素直に笑って読める「コメディ」が、ここにはある。

東京の観光スポットをめぐるバス会社・アヒルバスに入社して五年のバスガイド高松秀子(デコ)は、わがままなツアー客に振り回されながら仕事に励む毎日。ある日突然、新人バスガイド研修の指導員に指名されるが、自信のない態度が災いして、新人教育は遅々として進まない。そんな中、同期の中森亜紀にアヒルバスの「革命」を持ちかけられて……。軽快なテンポとユーモアあふれる筆致が笑いを誘う一方、主人公デコをはじめバスガイドたちが、それぞれに悩みを抱えながらも奮闘する姿は、胸に沁み、生きる元気が湧いてきます。名手がおくるとびきりのお仕事&青春小説です。また、アヒルバスのガイドたちによる東京名所の観光案内も読みどころのひとつ。二重橋、都庁、お台場、東京タワー、浅草、築地本願寺など、よく知っているつもりの観光スポットも、デコたちのガイドにかかれば意外な新発見があるかも。アヒルバスならではのTOKYO観光をお楽しみください>

Last Modified :