「痛み」
「痛み」は三人(貫井徳郎 福田和代 誉田哲也)の作家によるアンソロジー。
「見ざる、書かざる、言わざる ハーシュソサエティ」(貫井徳郎)は死刑制度の是非について、を背景に、グラフィックデザイナー事務所を営む男が、両手の指と舌を切り取られ、両目をつぶされるという被害に遭う。卑劣な加害者を追い詰める刑事には暗い過去が。 「シザーズ」(福田和代)は、かつて独身寮で一緒だった中国語通訳捜査官と警視庁保安課の刑事との友情を軸に、風営法違反、偽ブランド売買の摘発に取り組む姿を、
「三十九番」は、中年の独身刑務官の日常と隠された秘密をそれぞれ描いている。福田和代さんは初めて読む作家さんだが、収録されている作品はシリーズ物のようだがご都合主義が目について少し白けてしまう。貫井さんは死刑制度についての是非が大上段に構えすぎていて「言いたいことを言おうと」し過ぎの感がある。誉田さんはラストのヒネリが利いていて、この三者の競作のなかでは一つ頭が出ているように感じた。
<『見ざる、書かざる、言わざるハーシュソサエティ』―目と手と舌を奪われたデザイナー。裁判員制度と厳罰化。社会情勢が生み出した“狡猾な犯罪”の正体とは?『シザーズ』―刑事と通訳捜査官、俺が捕まえあいつが落とす。中国人の犯罪組織に、まるでハサミの刃のように、二人揃って鋭く切り込む!『三十九番』―このまま、時は平穏に過ぎていくはずだった。「三十九番」の名を再び聞くまでは。留置係員は何を見たのか。衝撃のラスト。警察小説の新たな大地を切り開く3編。>
Last Modified :