偏読老人の読書ノート

すぐ忘れるので、忘れても良いようにメモ代わりのブログです。

晴読雨読のころに…(5)

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 「妖櫻記」(篠田節子)は、死んだ女流作家が憑依したのは、長年そばに仕えていた秘書。女の業を描くホラー小説。

<著名な女流作家・大原鳳月が死んだ。彼女の死を悼む担当編集者・堀口のもとに、大原をモデルに綴った原稿を秘書の若桑律子が持って来た。律子が書いたというその小説は、筆が進むに従って大原が書いた文章に似てくる。律子は大原の遺作を隠し、自分の名前で世に出そうと目論んでいるのか?謎を追う堀口が見たものは。一輪の美しい華を咲かせるために、うち捨てられ、朽ちる女たち死してなお、消えない愛執の念、肌粟立つホラー小説。>

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 「長女たち」(篠田節子)

痴呆が進む母親の介護に疲弊していく長女を描く「家守娘」、敬慕する医師の事故死の後を引き継ぎ、僻地の医療に携わるためアジアの山岳地にある村に赴任した女医の、その地域の根強い風習との葛藤を軸に、人間にとって「死」はどのようにあるべきかを問う「ミッション」、甘いものへの執着から糖尿を患い、病状を悪化させる母と娘の葛藤を描いた「ファーストレディ」。親にとって子供とは? 子供にとって親とは? を切実に問う三つの中編集。

<親が老いたとき。頼りされるのはもはや嫁でも長男でもない。無責任な次女、他人事の兄弟追いつめられた長女の行く末は?痴呆が始まった母のせいで恋人と別れ、仕事も辞めた直美。父を孤独死させた悔恨から抜け出せない頼子。糖尿病の母に腎臓を差し出すべきか悩む慧子当てにするための長女と、慈しむための他の兄妹。それでも長女は、親の呪縛から逃れられない。親の変容と介護に振り回される女たちの苦悩と、失われない希望を描く連作小説。>

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 「第4の神話」(篠田節子)は、実際にいそうなプロデュース能力に長けた出版社の女編集者、鋭い感性を持った女性カメラマン、企画会社の女社長等魅力的な女性が登場し、彼女たちが主人公の女性フリーライターを「食っている」物語。彼女たちを主役にスピンオフ物を書いたら面白いのにと思ってしまった。女性作家の評伝を書くことで、同時に自分が何を目指して書いてゆくのかを問う物語でもある。

 <芸大声楽科を卒業した美貌の人妻。理解ある夫、素敵な恋人、可愛い子供。すべてに恵まれた女性ベストセラー作家・夏木柚香が急逝した。だが、「私の作品は、五年しかもたない」という言葉を遺した彼女が美しい仮面の下に抱いていたのは―。彼女の評伝を書くことになった女性ライター、小山田万智子が柚香の本当の姿を抉り出す。女の心の闇底に潜む真実に迫る衝撃作。>

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