偏読老人の読書ノート

すぐ忘れるので、忘れても良いようにメモ代わりのブログです。

「最前線」

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「最前線」(今野敏)は、「東京湾臨海署安積班」シリーズで、読んだのではないかと思ったのだが、結局最後まで分からなかった。分からなかったというのは「読んでいるようで読んでいない。読んでいないようで読んだような」感じだったからだ。六つの短編集だが、本シリーズを読んでいる人には、いつものメンバーがいつものようにそれぞれを気遣いながら(上司は部下に対してどうあるべきか、また信頼される上司とは)、日常の業務をこつこつと積み重ねていく姿を描いてゆく。「警察小説」というより、「会社小説」と呼んだ方がふさわしい小説だ。

「暗殺予告」はテレビ番組で来日した香港スターの暗殺予告を受けて、その警備にあたる安積班を。

「被害者」は、銃で脅す事件を起こした加害者が、実は娘を凶悪事件でしんでしまった「被害者の父親」で、その父親の願いを叶えるべく活躍する安積班を。

「梅雨晴れ」は、鬱々とした梅雨の一日、ちょっとした心のすれ違いのいくつかのエピソードを積み重ね、「平常心」でいることの大切さを。

「最前線」は、刑事としての心構えと組織内での「先輩、後輩」の在り方を問う

「射殺」は、アメリカから来た刑事と組んだ安積が、日米の捜査活動の相違から摩擦を起こすが、犯人逮捕の過程でお互いのやり方を理解する姿を。

「夕映え」は、一生平刑事を実践する先輩刑事と安積の葛藤をそれぞれ描いている。 

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