「英雄の書」
「英雄の書(上)(下)」(宮部みゆき)は、「ファンタジーノベル」とでもいうのだろうか、どうもこういう小説は苦手だ。
<森崎友理子は小学5年生。ある日、中学生の兄、大樹が同級生を殺傷し疾走すると言う事件が起きた。兄の身を心配する妹は彼の部屋で不思議な声を聞く。「ヒロキはエルムの書に触れたため英雄に憑かれてしまった。大叔父の別荘から彼が持ち出した赤い本がそう囁いていた。友理子は兄を救い出すべくたった一人で英雄が封印されていた「無名の地」へと果敢に旅立った>
ラスト近く、英雄を狩る「狼」の一人アッシュがユーリに語る「物語」は、作者の「物語」に対する立ち位置なのだろう。
<「物語とは何だ、ユーリ」
「紡ぐ者が創るお話。嘘でしょう」
「紡ぐ者ばかりが作り手ではない。人間は皆、生きることで物語を綴る。だから物語は、人の生きる歩みの後ろからついてくるべきものなのだ。人が通った後ろに道ができるように。だが、しかし、時に人間は「輪(サークル)」を循環する物語の中から、己の目に眩しく映えるものを選び取り、その物語を先にたてて、それをなぞって生きようとする愚に陥る。あるべき物語を真似ようとするのだよ。その傲慢なる本末転倒は、必ず禍を呼び寄せる。だから大罪と呼ばれるのだ。むろん、あるべき物語に罪はない。だが、時にあるべき物語が人々を惑わせることを紡ぐ者どもは知っている。知っていてなお、紡ぎ続ける。それが業だ。人間の業だ」>
Last Modified :