「猿若町捕物帳」シリーズを読んで。
「猿若町捕物帳 ほおずき地獄」(近藤史恵)は、「猿若捕物帳」の第二弾。解説(細谷正充)で、シリーズ第一弾「巴乃丞鹿の子」の冒頭、「おや、草双紙も、そんなに莫迦にしたもんじゃないよ。作者の頭の中で、人は生きて、泣いて、色事に耽って、そうして死んでいくのだから。この世とそんなに変わらないさ」という台詞を引用して、作者の創作論が述べられていると書いている。なるほど。
<吉原に幽霊が出るという噂がたった。幽霊が出た後には必ず縮緬細工のほおずきが落ちているという。騒動のさなか、幽霊が目撃された茶屋の主人と女将が殺された。下手人は幽霊なのか。女性が苦手な二枚目同心玉島千蔭はじゃじゃ馬娘との縁談に悩む傍ら、事件の解決に乗り出すが…」
「猿若町捕物帳 にわか大根」(近藤史恵)
<吉原で三人の遊女が連続死。謎を解くキーワードは「雀」 (「吉原雀」)
人気の実力派女形が突然下手な芝居をするようになった。そして幼い息子が不審な死に方を……。(にわか大根)
人から嫌われるはずのない善良な男が殺された。一体誰に? (「片陰」)>
「猿若町捕物帳 寒椿ゆれる」(近藤史恵)は三篇の中編集で、本シリーズの中では一番好きだ。千蔭の見合い相手のおろくが良い。
<色だの恋だのというのは恐ろしく思われてなりません。
堰き止められる想い。秘められた哀しみ。江戸の雑踏は、ままならなさで満ちている。堅物の同心・玉島千蔭。美貌の花魁・梅が枝。若手人気女形・水木巴之丞。そして千蔭の見合い相手のおろく。巻き起こる難事件の先に仄見える、秘められた想いとは。>
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