奥田英朗ばかり読んで
「最悪」奥田英朗
追い詰められていく三人の物語。追い詰められていく過程がリアルで身につまされる。
<小さな町工場を営む真面目な中年男、気が弱く自分の意思を主張するのが苦手な銀行員の女、親と絶縁しパチンコとカツアゲでその日暮らしをする若い男。3人は現状に物足りなさは感じているものの、なんとかなっている毎日を過ごしていた。しかしそんな3人にそれぞれ小さな問題が発生する。町工場の男は地域住民から「工場の騒音がうるさい」と訴えられ、銀行員の女は上司からセクハラを受け、その日暮らしの男は軽い気持ちからやった窃盗がきっかけでヤクザに弱みを握られる。そして無縁だった3人の人生が交差する時、最初は小さかった問題は加速度的に転がり始める。>
「ガール」(奥田英朗)は、タイトル通り「ガールズ」物語だ。女性管理職に抜擢され、年上の男性の部下との折り合いに四苦八苦したり、マンション購入を考え、恋するようにのめり込んだり、年齢関係なく着飾って、いつまでも若づくりしつつも、だんだん心細くなっていく微妙な年齢を嘆いたり、と、思わず「がんばれ!」と応援したくなってくる。ひと回り年下の新人の男の子にドキドキして、他の女性をけん制するところなんか絶品だ。。
<30代。OL。文句ある? さ、いっちょ真面目に働きますか。キュートで強い、肚(はら)の据わったキャリアガールたちの働きっぷりをご覧あれ。
<こんなお心あたりのある方に、よく効きます。
●職場でナメられてる、と感じた
●親に結婚を急かされた
●若い後輩の肌つやに見と
●仕事で思わずたんかをきった
●ひとめぼれをした
●子どもの寝顔を見て、頑張ろうと思った
きっとみんな焦ってるし、人生の半分はブルーだよ。既婚でも、独身でも、子供がいてもいなくても。>
「ララピポ」(奥田英朗)は6編の連作短編集で、6人の主人公の「性的」な日常を描いている。対人恐怖症の32歳のフリーライター。風俗産業・AV専門の23歳のスカウトマン。スーパーでスカウトされAV女優になった、家の中をゴミ屋敷にしてしまった43歳の専業主婦。NОと言えず、ついつい嫌な仕事を押しつけられたり訪問販売で不要なものを買わされてしまう26歳のカラオケBОⅩ店員。過去に純文学誌の新人賞を受賞し経歴を持つ52歳の官能小説家。こっそり自作自演でデブ専の裏AVを制作する28歳のテープリライター。それぞれの性(男女共にすぐ自慰行為にふけるという類似性がある)の描写も笑えるがもっと良いのはチョイ役たちだ。特に、スカウト専門の事務所の社長、裏DVDを販売する店長などは秀逸と言ってよい。映画もそうだが、こういう地味な脇役が光るものは面白い。