「薔薇」と「最愛」
▼「白い薔薇の淵まで」(中山可穂)
文章が優しくピュアな人柄を感じる。異質な愛だが嫌らしさがないのが良い。
一読ドロドロした愛欲の物語のように見えて、その奥には猫への限りない愛が見える。これは猫へのオマージュの物語でもある(というのは、本書のプレビューを某ブログで読んで気がついたのだけれど)。だが、ドロドロした話の展開に反して文章には清潔感がある。だから読んでいて心地良いのだろう。広谷さんもこの中山さんも初めて読んだのだけれど、あまり知られていない(私が知らないだけかもしれないが)作家さんの中には「凄い書き手」がまだまだたくさんいるのだと思い知らされた。教えてくれた北上次郎さんに丁重にお礼を言わなければと改めて思った次第だ。
<深夜の書店。私には、運命的な出会いとその夜から始まる激しい恋が待っていた。過去を明かさぬまま姿を消した恋人を追った私は、異国へと旅立つ。朝日新人文学賞受賞作家が放つ書き下ろし恋愛小説。第14回山本周五郎賞受賞作。>
「最愛」真保裕一
何度も過去のことが語られるのに、ラスト近くで肝心なことが明らかになってくるという、まるで隠し玉のような物語。最愛の意味がラストになって分かった。
<小児科医の押村悟郎のもとに、刑事から電話が入った。18年間、音信不通だった姉・千賀子が銃弾を受け、意識不明で病院に搬送されたというのだ。しかもそれは、千賀子がかつて殺人を犯したことのある男との婚姻届を出した翌日の出来事だった。姉は一体何をしていたのか―。悟郎は千賀子の足跡を追い始める。>
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