バイバイ
「バイバイ」(鷺沢萌)は三人の女性の間で「さよなら」のひとことが言えないで嘘を重ねていく男の物語。好かれようとするのはポジティブだが、嫌われまいとあれこれ気を使うのはネガティブだ。太宰治「人間失格」の現代バージョン。
<はじめて会った日から一年、付きあいはじめてからは七、八か月が過ぎても、喧嘩らしい喧嘩は一度もなかった。勝利と朱実のあいだはとてもうまくいっていたはずだった。「結婚」ということばこそ、ふたりのあいだで口にのぼることはまだなかったが、どちらかがいつ言い出してもおかしくないような雰囲気だった。何の問題もない恋人同士のように見えたはずだ、と勝利は思う。たったひとつの問題は、勝利に、朱実以外にもそういう付きあいをしている女性が、あとふたりいることだった…。>
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