いまひとたびの
昨夜9時前に寝たので4時過ぎに目が覚めた。いつもは11時前後に寝て、2時過ぎに一回トイレタイムのために目が覚め、それから朝の6時ごろまで二度寝するのだが、珍しくぐっすり眠れた。二度寝しようと思って目を瞑ったが目が冴えてきてなかなか寝付けず、ジャズのCDでも聴くかと(ボリュームは絞って)選んだのがカーティス・フラーの「ブルースエット」
<大名盤だ。名盤とはほとんど大名曲が一曲目にあるゆえに名盤なのだが、そればかりに目が行ってつい他の曲がお留守になる。例えば三曲目の「ブルースエット」など一曲目の「ファイブ・アフター・ダーク」より曲想がゆっくりかつ優雅だから、低音テナーと低音トロンボーンの心地良い圧縮感がより鮮明に浮き出て、演奏の本質がわかってしまうのだ。(「辛口!JAZZ名盤1001」 寺島靖国)>
リズムが良いので、今日の気分は少しだけ前向きだ、珍しく。
「いまひとたびの」(志水辰夫)は、死を取り扱った9つの短編集。名前は知っていたが読むのは初めてだ。ミステリー作家というイメージが強くてなかなか手に取る機会がなかった。だが、一読してびっくり。「泣き」はしなかったが読み終わったあとじんわりと感動が押し寄せてきた。
ちゃんと向き合うことができなかった大事な人の死。
死期が迫った初老の男の思い。
受けた愛の深さを気づかないまま迎えた肉親の死。
言おうとして云えなかった言葉や、伝えようとした言葉に気づかなかった過去の自分への悔悟。それらが優しく読む者に語りかけてくる。こういう本を読むと、周りの人に優しく接しなければと思ってしまう。そしてこんなフレーズを目にすると、思わずメモしていつも見えるところに貼り付けておきたくなってしまう。
「すぎてみればすべて幻だった。人は自分の記憶の中でしか生を閉じることができない。残された時間やいまの自分に必要な時間は、いつだってこれまで費やしてきた時間にはるかに及ばなかった」(トンネルの向こうで)