その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は岩松洋さんの『 書くスキルも設計スキルも飛躍的に上がる! プログラムを読む技術 』。甲南大学知能情報学部教授の田中雅博さん寄稿による「発刊に寄せて」をお届けします。

【発刊に寄せて】

 プログラマーの人材不足が叫ばれる中、プログラミング教育と言えば、とかくプログラムが書ける人材を育成する必要性にばかり目を奪われがちです。本書は、著者の岩松洋氏が岡山大学の情報工学科および大学院でプログラミングを学び、会社でプログラマーをしていた経験の中で、プログラムを読むことの重要性に気づき、その視点から書かれた一冊です。

 昨今、最終的に作成するシステムを短期間で作成するために、プログラムは使えるものがあればそれを流用し、なるべく自分でプログラムを書き起こさないことが推奨されるようです。Pythonなどは特にその傾向が強く、ライブラリを使いこなすのがプログラミングの主な仕事となっている感があります。会社の中で仕事をしていれば、先輩技術者が作ったプログラムをメンテナンスすることもあるでしょうし、自分が昔作ったプログラムを修正することが必要になることもあるに違いありません。それらの場合、常に要求されるのがプログラムを読む技術です。

 本書は、そうしたプログラムを読む技術を初心者の視点からわかりやすく書いたものです。100%著者の経験に基づいています。もしかするとベテランプログラマーなら誰でも頭の中に持っていることかもしれませんが、それをわかりやすく言語化、体系化したことにより、プログラミングに携わる人であれば誰でもすぐに読むことができる内容となっています。いわば、岩松理論のプログラミング技術の本であると言ってよいでしょう。

 Chapter 2では他人のプログラムを読むのが難しい理由について、考えられるさまざまな要因を挙げて説明しています。Chapter 3からChapter 5は読む技術です。まずChapter 3ではプログラムにおける入力と出力という、そのプログラムと外部との接点から把握することを勧めています。Chapter 4ではプログラム全体を把握する方法、Chapter 5では効率よく1行ずつ読んでいくコツを述べています。Chapter 6以降は具体的にプログラムを取り上げ、それを読むことにより、具体的な技術を身につけることができるように書かれています。

 全体的に、リラックスして気楽に読み進めることができるような文体で書かれていて、読み進めながらスーッと頭に入っていくでしょう。言語はC言語とPythonが出てきますが、これらの言語に詳しくなくても内容は理解できると思います。文法の初歩を覚えたら、次はこの本を読んでプログラムを読む技術を知りましょう。読み方を勉強すれば、自分で書くプログラムも読みやすいものになっていくに違いありません。

2024 年9月2日
甲南大学 知能情報学部 教授

田中雅博

【目次】

画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示