★★★☆☆
あらすじ
真実が見えるサングラスで地球が宇宙人に支配されていることを知った男は、仲間と共にレジスタンス活動に参加する。
原題は「They Live」。96分。
感想
宇宙人に地球を侵略されるという物語はよくあるが、サングラスをかけると支配された本当の地球の姿が見えるという設定が面白い。地球人に扮した宇宙人が見つけられるだけでなく、宇宙人が地球人の潜在意識に向けて発しているメッセージを見ることが出来るというアイデアが独創的だ。
サングラスで町中で見かける普通の広告や雑誌などを覗くと「考えるな」「従え」「買え」「権威に逆らうな」等という言葉が見えてくる。単なるエイリアン映画ではなく、その裏には大量消費社会に対する皮肉や、大衆を飼いならそうとする支配層に対する批判など、社会に対する痛烈な風刺が込められている。
主人公は、ふとしたきっかけからそのサングラスを手に入れ、そんな真実を知ってしまう。まず驚き戸惑うのはよく理解できたのだが、その次にいきなり宇宙人を殺し始めたのはさすがに物分かりが良すぎというか、思い切りが良すぎてちょっとついていけなかった。しかも、なぜか若干半笑い。いきなり民間人の女性を人質にとって逃亡まで図るイケイケ具合だ。
だが女性宅でそんな勢いをぶった切る出来事がいきなり起きて驚いてしまった。このシーンはここ最近見た映画の中でも一番衝撃的だった。その後のレジスタンス達のアジトでも同じように突然の出来事で驚かされるシーンがあり、映画的楽しさを味わうことが出来る。どちらも何の前触れもないのが良い。
一旦冷静にさせられた主人公は、仕切り直して今度は黒人の同僚を仲間に引き入れようとする。それに対して、家族のためにも余計な事に巻き込まれたくない同僚はそれを拒み、サングラスをかける、かけないで大げんかになってしまう。
やがては殴り合いにまで発展するのだが、このケンカが異常に長い。正直、なんでそこまでしつこく必死に戦うのか疑問だったのだが、後で調べたら主人公を演じるロディ・パイパーは人気プロレスラーだったそうで、ここは彼の見せ場だったようだ。この格闘シーンがプロレスぽかったのも、主人公が妙にガタイが良かったのも、それで合点がいった。
知らない方が良かったかもしれない本当の現実を受け入れるか、それとも知らないまま嘘の世界で生きていくかという選択は、映画「マトリックス」でもあった。このテーマは良くあるものなのだろうかと考えたりしたのだが、実は「マトリックス」はこの映画の影響を受けているらしい。そういえばマトリックスの登場人物たちは皆サングラス姿が印象的だったが、それもこの映画の影響なのかもしれない。
アイデアも面白く、SF的な映像表現も意外としっかりとしている映画だ。ただ個人的には、アイデア一発でストーリーが雑なところが気になってしまう。ジョン・カーペンター作品は、リメイク作品や「マトリックス」のようなオマージュ作品の方が、オリジナルを超えて面白くなる印象がある。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/音楽 ジョン・カーペンター
*脚本はフランク・アーミテイジ名義
原作 「Eight O'Clock in the Morning」 Ray Nelson
出演 ロディ・パイパー/キース・デイヴィッド/メグ・フォスター