こんにちは。スマートバンクでマーケティング部 部長をしております土屋です。
この記事はSmartBank Advent Calendar 2024 12日目の記事です。
昨日は akshimoさんの「忖度なし!?業務委託エンジニアが語るスマートバンクの真実」という記事でした。
2024年11月19日に株式会社Punksさん主催のオンラインイベントにて、『年間100回以上のインタビューを実施するスマートバンクが語る、成果を出すN1分析の実践と活用』というタイトルで、UXリサーチャーのHarokaさんと一緒に登壇しました。
普段、マーケターとUXリサーチャーがどのように協業しているのかと、リサーチをどう進めているのかの具体を紹介しました。このブログでは、登壇内容を抜粋して紹介します。
今回は、成果につなげやすいリサーチ設計や分析方法、具体的な広告クリエイティブへの活かし方についてお話ししました。
登壇するにあたって、Harokaさんと過去のリサーチについて振り返っていたのですが、「なぜリサーチをするのか」の答えとしては、成功確率の高い施策回数を増やす、これに尽きると思っています。
特にこれまでになかった新しいカテゴリのサービスをグロースさせるときには、どういった施策が最も自社サービスと相性がよいのかを少ない試行回数で最適な打ち手を早く見つけ出すことが求められるので、新規ユーザー獲得の根幹にある顧客理解が重要です。
どういった人のどんな課題が存在するのか、その課題はなぜ解決されていないのか、といった理解を深めることで、どういったチャネルでどのようなアプローチを行えばよいのかというおおよそのイメージをつけることで、プロモーション施策や訴求メッセージなどが明確になり、狙いがブレにくくなります。
実際のリサーチでは、まずヘビーユーザーについて知ることから始めました。 自社サービスを継続的に利用してくれていたり、決済金額が多いなどの特徴を持つユーザーにインタビューし、生活背景などについて深く知ることを意識します。
実際にリサーチを進める場合、マーケターが企画を作り、調査概要をあらかた書いてUXリサーチャーに相談する流れを想定するかもしれませんが、スマートバンクの場合はそうではありません。
「既存の施策の中でより多くの人に手にとってもらうためのメッセージを作りたい」「新しいユーザー層にアプローチするために効果的な施策について検討したい」といったタイミングで、UXリサーチャーに相談し、リサーチ実施したい背景や現状の課題についてしっかりとすり合わせを行った上で一緒に調査企画を作るようにしています。
ここからは一つの案件を例にとって、どのように取り組んでいるのかを紹介します。
ユーザーの認知経路や伝わりやすいメッセージを把握して、広告施策に活かしたい!という目的に対して、 Instagram、TikTokなどで広告配信をする際、どういったメッセージ・クリエイティブであれば、より新規ユーザーに手にとってもらえるかということを把握したいと考えていました。
当時、B/43 ペアカードを広告で訴求したいと考えており、どういった方向性のメッセージが良いか当たりが付けづらいことから、Harokaさんと相談して、インタビュー調査を実施することになりました。
こちらにインタビュー調査の流れを図にしました。右側に、チームとして取り組むことを書いています。
インタビュー調査に取り掛かる前の準備として、Think N1シートというものを活用しています。
Think N1シートは、マーケティングだけではなくプロダクト開発、新規事業開発の現場でも使われます。
「Think N1 シート」は、新しいプロダクトや機能のWhyとWhatを定義するための設計書です。 これを使うことで、N1インタビューからユーザーの課題を捉えて、それを解決する方法をさがす「スマートバンクらしいプロダクトデザインプロセス」を誰でも実行できるようになることを目指しています。シートと言っても、物理的な紙ではなくNotionのテンプレートとして、その特性を活かして作成しています。
インタビューをする前に、まず自分たちがユーザーについてどこまで事実として知っていて、どこからが想像の域を出ないのか、どういった点がわからないのかをフォーマットに沿って整理します。 なぜB/43を使ってくれるのか?他のサービスとのどんな違いを感じてくれているのか?といった目的や、今何を使って問題解決しようとしているのかがわからないとします。 事実として説明ができないところは、インタビューの検証ポイントとなります。
わからないところは、Discovery Board(Notionのデータベース)に書いていきます。 全然自信なし、自信なしなどのラベルをつけながら、「もしかするとこんな目的があるんじゃないか」、とか「ここは以前聞いたけど他のケースもあるかも」などの仮説を一緒に考えます。
こうした仮説を検証できるような聞き方や、例えばどんな話が聞けるとクリアになりそうかなどをマーケター、UXリサーチャーで考えます。質問を考える(敲きを作る)のは主にHarokaさんですが、私も一緒に編集して質問を磨いていきます。
考えた質問をサービスを今使っている層(認知・購買層)に聞いて、その内容をもとにメッセージやクリエイティブを考え、認知・未購買層や未認知・未購買層の反応を見ていきます。
先ほど、質問を考えると言いましたが、例えば「どこでB/43を知りましたか?」といった一問一答形式ではなく、「B/43を知った時の状況を教えてもらえますか?」といったふうに、出会った時の状況を詳しく聞くようにしています。 どんな状況だから「使おう」とか「いいな」と思ってくれたのか、サービスに出会う前どういった状況だったのかを映像で再現できるような情報粒度で聞いていきます。
こうして、インタビューで知った内容をもとに、Think N1シートを更新します。 事実を埋めたり、元々書いていた内容とは違った場合は書き直しをしたりします。
また、インタビューを進めると「わからないこと」が増えていくので、都度Discovery Boardに足して次のインタビューで追加で聞けるようにしています。
広告訴求のメッセージ活用を行う場合、実際にB/43を友達に勧めたシーンなどが参考になることが多く、特にこのパートについては丁寧に聞きました。よく聞かれたのは、女友達と二人でパートナーとの同棲生活について雑談をしており、その中で自然と「お金の管理どうしてる?」と相手から相談を受けたケースです。
カードを財布から取り出して見せたり、アプリの画面を開いて具体的な使い方を説明してくれたりしながら、「うちはこんなふうに運用してるよ、いちいちお金の計算したり、後から払ってもらったっけ?って言わなくていいから楽」と説明してくれている様子が伺えました。支払いの際にペアカードを出していると、「そのカード何?」と聞かれたことがきっかけになったケースもありました。
インタビューの中で、「B/43を使うようになってから楽になったところや、気に入っているところは?」といった質問の答えとして、
- 「共有の物理財布を持ち歩かなくても良くなった」
- 「カードが二枚あるから、貸し借りを忘れたとか、出先で仕方なく自分のカードで立て替えなくなった」
- 「二枚のカードで支払えるし、同じアプリの画面が見られるから食費後いくら使えるっけ?がリアルタイムでわかって便利」
といった話を聞き、これらをもとに”1つの口座に2枚のカード”という訴求を考えました。
インタビューで聞いた内容について、ただ事実として集めるだけではなく、例えばB/43について知らないが、パートナーとのお金のやり取りや使い方で悩んでいる人が目の前にいた時、どう接するか?どう伝えたらその人が安心してサービスを利用できるか?何が惹き(フック)になるのか?をチームで話し合いました。 得られた事実からの分析は、フックになった状況や言葉を探すことを大事にしています。
ユーザーからすると、「私のことをよく知っている」とか「そう、それ!」など共感をベースにして、お困りごとが言語化されていたり、解決策が魅力的に書かれていたりすると心が動くように思います。
インタビューで得た情報をどのように抽出するとマーケティング施策に活かしやすいかということについてさらに具体的に紹介すると、私が特に注目しているのは下記2つです。
1. どういった時に課題に感じたかというシチュエーションや具体的な行動事例 2. 友人などにサービスを説明・紹介するときの言葉
特に 2 については、企業が一方的に使っているメッセージではなく、どういった言葉で説明されるとわかりやすいのかということを把握し、それを広告メッセージなどに活用しています。こういったインタビューを通して、顕在層と潜在層を分類し、それぞれに対してのメッセージを固めていきます。
話をお聞きする中で、私が良い発見だなと思ったのが、「色々改善したいことがあるけどお金のことは表立って言いにくい」潜在層の状況でした。二人とも課題に思っているケースは、相手にペアカードの提案もしやすいけど、片方だけが不満・不安に思っている場合は相手にどう提案していいかわからず足踏みすることもありそうです。
実際の効果として、これらのメッセージを広告に組み込んだことで、獲得効率が良くなったり、インフルエンサータイアップでのオリエンの精度があがったことで、予想を遥かに上回る実績を出すことができました。
また直接的な獲得広告施策以外においても、インタビューから得た課題が顕在化するシチュエーションなどを映像化することで共感を得ることができ、認知度・オーガニックDLのベースアップに寄与しました。
顧客理解を明確にすることで、施策は違っても一定の効果がでやすくなります。 そうすると、これまでに実施したことがないショートドラマやWebCMのようなチャレンジングな施策においても、経営層の合意を得やすくなり、施策の試行回数を増やすことができるのでおすすめです。
まとめ
以上、スマートバンクでの顧客理解を深める取り組みの一例について紹介させていただきました。
N1インタビューやリサーチについては、Harokaさんに手助けしてもらっている部分が多く、自分1人だけではなかなかここまでのレベルでは実現できなかっただろうなと思っており、いつも感謝しています。
最初のリサーチの取り組みでしっかりとした結果を出すということを気負いすぎずに、まずは「自分たちの作ったサービスを使ってくれている人ってどういう人なんだろう?」「その人のどんな課題を解決できたんだろう?」という純粋な疑問を色々聞いてみて、リサーチの精度を上げていくのがよいのかなと個人的には思います。
本記事で紹介したリサーチ方法については、2024年11月11日に発売されたHarokaさんの書籍にも書かれていますので、ぜひご覧ください。
UXリサーチの活かし方 ユーザーの声を意思決定につなげるためにできること
現在、スマートバンクでは【マーケティング マネージャーポジション】の募集をしておりますので、一緒に事業拡大のためのマーケに取り組みたいという方は、カジュアルにお話ししましょう。 smartbank.co.jp
スマートバンク主催のイベントも近日実施予定ですので、こちらも参加いただけると嬉しいです。 smartbank.connpass.com smartbank.connpass.com
SmartBank Advent Calendar 2024はまだまだ続きます! 明日のアドベントカレンダーは、法務・コンプライアンス業務を担当しているsasuraikzさんです。お楽しみに!