久木　尚士 （ひさき・ひさし　Hisaki Hisashi） イギリス近現代史 hisaki@kitakyu-u.ac.jp

●木下昌明のWEB版・映画批評『蟻と兵隊』（2006年9月11日掲載） 二度見捨てられた兵士像 木下　昌明 月刊「東京」2006年8月号所収 『蟻の兵隊』の主人公奥村和一は、病院でレントゲンを撮ってもらうと体内に砲弾の破片がいくつかみえるが、外見はどこでもみかけるような八〇歳の老人である。そのかれがほかの老人たちと国を相手に小さな裁判をたたかっている。カメラはこの奥村に寄りそいながらかれの抱えている問題をあぶり出していくのだが、これにわたしは驚きに似た感慨をもった。 それは六十余年前にさかのぼる。奥村ら原告の老人たちは、日本が敗戦になり、ポツダム宣言を受諾したにもかかわらず、中国山西省の奥地でひそかに戦争をつづけていた。それも国民党の閻錫山ひきいる軍閥に加わって共産党の八路軍との内戦をたたかっていた。この話はほとんど歴史の領分に入るものだが、それが現在の問題として争われていたのだ。 山西省

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「その隠喩（はか）に唾をかけろ！」　いやそれも隠喩じゃん！と誰もがつっこみたくなるこの文句を思い出して欲しい。矛盾しているから駄目だといいたいわけではない。そりゃ「バラの瞳」とかは陳腐かもしれない。じゃあ「椅子の脚」とか「明るい性格」とかはどうするんだろう。それぞれ人体の一部と光のメタファーだ。これも避ける？じゃあ「三脚」や「明確」は？これも避けるとして、じゃあ漢字はどうする？表意文字は避けて表音文字にするのか？でも表音文字も先祖を辿ると象形文字だったりするし……。カタカナは漢字の換喩、ひらがなは隠喩と言えないだろうか？いったいどこまで突き詰めりゃいいのか、キリないよね、という話。それに、文字は反幽霊だ。姿形は確かにあるのに常日頃見いだされるのは意味や音ばかりで、それが何かをかたどっているかなんて一々考慮されない。そう考えるとわからなくなる、文字はメタファーなのどうなの？はっきりしてよ意気