差出人 : "K" <vignettek☆gmail.com> 件名 : スプートニクの恋人 宛先 : MH<****@****.***.or.jp> こんばんは。お久しぶり。お元気ですか？ 今日は。実に実にあまり建設的ではないであろう内容のメールを送ります。 さっき、『スプートニクの恋人』を読み終わりました。その感想みたいなものがあって、それはいつもなら話してしまうところなのですが、「すみれ」にならって、書き留めておくべきかもしれないなんて考えたのです。なんて単純なのか。 そして私は例によって例のごとく、手紙のように書くことが一番ストレートに内容を書き留めることができるのです。加えて『スプートニクの恋人』読んだ？って、２回くらい聞かれたということもあります。私のまわりで、この小説を読んだ人がいないということもあります。 ただ単純に手紙形式で、そう「形式で」書くのって、つまら

ESSAY／ 村上春樹　「海辺のカフカ」を読んで 先週は村上龍氏の「希望の国のエクソダス」の読後感想文でしたので、今週は続けて読んだ村上春樹の「海のカフカ」の感想文でキマリだ、、、と思ってたのですが、うー、この人の作品はすっごく書きにくいです。「いやあ、良かったです」と言うしかないって感じです。 大体「なんの話？」と聞かれただけでも困ってしまいます。「こういう話です」と説明できない。村上龍の作品は、まずテーマがあって、言いたいことがあって、それを分かりやすく説明するために物語が進行するというシンプルな構造をとってますから、一読して何が言いたいのか分からないということは、あまりないです。特に「エクソダス」なんて、著者本人があとがきで、他人に自分の意見を説明するために書いたといってるくらいですから、分かりやすくなければ嘘です。 しかし、村上春樹の作品は、それが非常にわかりにくい。そもそも「テー

なんかオススメを聞かれるのが繰り返されてきたのでコンテンツ作ってみることにした。 村上春樹の位置づけ 「売れる*1」文学系*2小説家、ただし文芸批評からは一貫して叩かれる。信者的ファン多い。叩かれる理由は「世間からずれてる俺カッコイイ」的な逃避を肯定しているから、またマーケティング的にちょっとせこかったり*3、性格が悪いと自分でも言ってるような理由もある。W村上としてよく比較されるけど村上龍はどっちかというとデビュー作から芥川賞とって中上健二にプッシュされてきたという日本文学界の一等地を歩いてきた人なのでどっちかというと持ち上げられやすいのでその辺が逆。 *1...文学系ってくくりがもう意味不明なんだけどあるといえばある中でミリオン出せそうな唯一の人ではある。 *2...こういうとおそらく洋楽マニアが浜崎あゆみを叩いて大喜びするように噛み付きに来るので注意が必要だ。やはりカテゴリって無理や

楽器、歌は現実世界ではごく普通にあたりまえに存在するものだが、「街」には存在しない。 １）存在しない→はるか昔に忘れ去られてしまっている、という設定がポイント。「街」では壁の監視システムにより過去の記憶に関するアイテムにアクセスすることは許されない。 ２）楽器や歌により、図書館の女の子が保持していた、わずかな＜心＞が動き始める。同時に僕の「影」が壁の監視システムをすり抜ける案を考え出し、実行に移すため僕を説得する。左記の２つのキーワードが出た後では、「街」の決まりに対して逆らう動きが出現する。 ＜「街」の構造とその意味＞ この作品の最も魅力的な点は、壁に囲まれた「街」の構造と決まり事であろう。ここでのキーポイントは、＜穏やかな世界＞、＜心＞であろう。まず、この世界が人工的にできているという点では異存はない。そもそも壁で囲まれており、街に入るとき門番が「影」を切り離すというのも人工的である。

この作品について 純愛小説として１２年前に大ヒットした作品であるが、現在でも講談社から文庫本として出ているので読まれている方も多いと思う。。ちょうどこの時Yumingのアルバム「Delight Slight Light Kiss」が大流行し、両者がセットになって流行していたように思う。僕はこのアルバムの中に収められている「リフレインが叫んでいる」がこの小説のテーマ曲として頭の中に焼き付いているのである。自分は小説と音楽を結びつけることはあまりしないのだが、この小説は何故か例外である。 この作品は以前に紹介した短編小説「螢」（作品番号６、作品解釈はこちら）をほぼ完全な形で含み、その主題が発展的に取り扱われている。「螢」の中では解釈ができなかったいくつかの謎が『ノルウェイの森』の中では明らかにされており、「螢」と対比させた形での作品解釈をすると興味深い。 作品の構成と特徴 １．作品全体について

サービス終了のお知らせ いつもYahoo! JAPANのサービスをご利用いただき誠にありがとうございます。 お客様がアクセスされたサービスは本日までにサービスを終了いたしました。 今後ともYahoo! JAPANのサービスをご愛顧くださいますよう、よろしくお願いいたします。

本それ自体は不変であり、一方人々の意見は、往々にしてそれに対する絶望の表現でしかない。（フランツ・カフカ） 僕は今とても混乱していて、同時に、僕のまわりにいる数すくない人たちもとても混乱しているのだと思う。僕らはつねに混乱しつづけている。でもそのなかで僕らは自分たちなりの生を営んでいかなければいけない。その生の営みかたについてのいくつかの解答を導きだし、そしてそれが鍵穴にきっちりとはまらないことだけをたしかめ、僕らはそっとため息をつく。 　 　僕はあるときから読書というものを自分のライフスタイルにとりいれた。読書というものはもう僕のなかのちいさくはない一部分となっているし、いやおうなく僕のいくらかの部分を形成し、いやおうなく僕のいくらかの部分をきつく縛りあげている。読書においておそらく僕の人生のおおきな部分は変わっただろう。僕はそのことで多少傷つき、そして多少救われている。僕は僕が読書をし

本それ自体は不変であり、一方人々の意見は、往々にしてそれに対する絶望の表現でしかない。（フランツ・カフカ） あらかじめ断っておきますが、僕はこの小説について、無様で、とても読むに耐えないことしか書けないでしょう。でも僕は、この小説が大好きで、とんでもない傑作だと思っています。何がなんでも読んでおくべき小説、だと思っています。 　高橋源一郎の『さようなら、ギャングたち』については、印象的な言葉がいくつもある。 　あの吉本隆明の推薦の言葉、 　現在までのところポップ文学の最高の作品だと思う。村上春樹があり糸井重里があり、村上龍があり、それ以前には筒井康隆があり栗本薫がありというような優れた達成が無意識に踏まえられてはじめて出てきたようなものだ 　もそうだけれど、たとえば阿部和重。 　どこで、だったかはもう覚えていないが、阿部和重は『さようなら、ギャングたち』に対して、「『さようなら、ギャング』

本それ自体は不変であり、一方人々の意見は、往々にしてそれに対する絶望の表現でしかない。（フランツ・カフカ） ニッポンの小説―百年の孤独 高橋 源一郎文藝春秋2350円Amazonで購入 livedoor BOOKS 書評/芸術・美術 　僕はたった今、高橋源一郎という人が書いた、『ニッポンの小説　百年の孤独』という本を読みおわりました。本の中には読みおわると、あるいは、読んでいるあいだ、ついその作者のまねをして何かを書いてみたくなる本というのが存在します。そして、『ニッポンの小説　百年の孤独』という本は、僕にとって、まさしくそういう本だったのです。 　何かを書きはじめる前に、何かを書きたいと思います。それは、この本をとにかくたくさんの人に読んでもらいたい、というささやかな祈りです。『ニッポンの小説　百年の孤独』は小説について論じたものでありながら、同時に、誰もが避けては通れない問題について論

本それ自体は不変であり、一方人々の意見は、往々にしてそれに対する絶望の表現でしかない。（フランツ・カフカ） 舞城王太郎の書いた『好き好き大好き超愛してる。』という小説です。芥川賞候補にもなりましたが、山田詠美と池澤夏樹くらいしか賛成票がはいらなくて、あっさり落ちました。 　豊崎由美や大森望が片山恭一の『世界の中心で、愛をさけぶ』をぶっ壊しにいった作品、と評していまして、「なるほど」と思いました。 　構造としては、柿尾ⅠⅡⅢと、柿尾という恋人の死ぬ話があって、その合間にＳＦやらファンタジーやらの関連のありそうななさそうな短編が混入していく、というものです。柿尾パートはもろに『世界の中心〜』のパロディです。 　この小説を読んでほしいのは、『世界の中心〜』や『DEEP LOVE』を読んで感動したと言っている人々です。 　私は、ティム・オブライエンの『本当の戦争についての話をしよう』という小説の書