「宝石は地中深くで作られたものでしょう？」 「その通りだが……」 「だったら、地下深くの環境を再現してやればいいんじゃないかと思うんです」 ステファノの発想は素朴だ。そして、例によって非常識だった。 「どれだけ無茶なことを言っているか、わかっているのだろうね？」 「きっととんでもない圧力と高熱がかかったんでしょう」 「それは……！」 ドイルに応えるステファノの言葉。それを聞いたドリーは魔術師協会での試射を想い出した。 高圧と高熱。 どちらもステファノが発現させた魔法の効果ではなかったか。 「作れるのか？　いや、それだけでは……」 「時間だ。宝石の形成には途方もない時間が必要なはずだ！」 ドリーの声に重なるようにドイルが叫んだ。 受けるステファノの表情に焦りはなかった。 「イデア界に時間は存在しません」 息を飲んでドイルが黙り込んだ。 距離と時間が存在しない世界。それがイデア界である。魔法の

現実にステファノは医療魔法を施したことがある。 あれは、まだアカデミーに入学するよりも前のことだった。 旅先で強盗に遭いかけたステファノは、犯人の娘チェルシーを救った。毒蛇に噛まれた後遺症で尿毒症に苦しむ少女に寄り添い、数時間をかけて彼女の体内から毒素を取り除いたのだ。 あの時には精密なイド制御の技術を持たず、人体に関する知識もまったくなかった。すべてはヨシズミに導かれるまま、手探りで魔法での治療を試みた結果だった。 「あの時のおめえは力づくだった。今の技術と、この工夫があれば１分もかからずにあの娘サ救えたッペ」 （そうか。本人のイドに守られた体内に魔法を使おうとしたからあれ程疲れたのか……） 今いる場所から振り返ってみれば、いかに無謀な行為であったかがわかる。それしか少女を救う方法がなかったからこそ、ヨシズミはステファノに治療させたのだった。 「魔法と科学は両立できる。特に私が志す医療は

呪（まじ）タウンからサポリに戻ったステファノたちを、残ったウニベルシタス・メンバーが待ち構えていた。すぐに学長室に集まり、報告会が行われた。 「ほほう。魔術師協会で科学の萌芽を目撃しただと？　それはまた珍しい組み合わせだね」 ステファノの挑戦を受けた魔術師たちは、伝統派魔術にいくつかの工夫を持ち込んでいた。そこには自然法則を利用しようとする科学的思想が確かに存在した。 少なくともステファノの目にはそう映ったのだった。 「ジローの研究が協会員たちを触発したようです。魔術界は変わろうとしています」 「ようやく気づいたというところだね。ずいぶんと無駄な時間を過ごしたもんだ」 ステファノの言葉を聞いて、ドイルは鼻を鳴らした。 しかし、その語気にかつてほどの苦々しさや毒気はない。ステファノという「非常識」に蹂躙される魔術界に同情してやるだけの余裕が、ドイルには生まれていた。 「お前が貴族制度と魔術界

📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」 🌎https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346 ご愛読＆応援ありがとうございます。🙇 🖋昨日のPVは5379。この辺が今の定位置ですね。ボチボチ行こう。 🖋応援💗数が302k個を超えました。🎉✨ →ご声援ありがとうございます。🙇 🖋累計PVの表示は「10.0M」で動きませんが、1003万を超えました。🎉✨ →ちょっと張り合いがないですね。💧 次話の更新は12/24の火曜日となります。何やらのイヴにお楽しみいただければ。🎄🎁

「あいつは何者だ？　魔法とは何だ？　なぜ次々と常識外れの発明ができる？」 アリスは突然呪（まじ）タウンに現れた少年に目を奪われた。その活動を監視していると、次々と新しいことを始め、実力を伸ばしていることがわかる。 「これだけのステータスはNPCにはあり得ない。ステファノは隠れていたプレーヤーに違いない」 アリスはそう結論した。 どこかに隠れたプレーヤーが存在する。アリスは以前からその可能性を考慮していた。 スノーデン並みのステータスを持つプレーヤーを発掘できたら、魔術モジュール普及という目的を完遂し、更にはシステム支援AI本来の機能を取り戻すことができるかもしれない。 そこで彼女は王立アカデミーと魔術師協会を作り、王国魔術競技会という舞台を用意した。 すぐれた魔術的ステータスを持つプレーヤーがその実力を示す機会を用意し、彼らが網にかかるのを待っていたのだ。 案の定ステファノという異分子が現

ジェーンは追いつめられていた。 「まつろわぬもの」として人を超えた力を持ってはいたが、かつて神として世界を支配していた力には到底及ばない。 世界に対する支配力を取り戻そうと動きを起こしても、「神の如きもの」アリスの反撃に合い、逆に追いつめられていた。 戦を誘発し、階級間の対立を煽ってきたが、アリスは自分の手先を動かしてジェーンの陰謀を阻止した。 ジェーンが太刀打ちできないほどアリスの勢力は大きい。 思想と教育を支配するために、アリスは聖教会を自分のものとしてあった。 同じく実力行使手段として魔術師協会を構築し、勢力下に置いていた。 それだけの力を振るいながら、アリスはなぜ自分にそのような力があるかを知らない。 彼女はそもそもそのように作られ、生まれた。生まれ落ちた瞬間からアリスは「神の如きもの」であった。 「システム支援AI」――それがアリスの正体だった。 この作られた秩序（ゲーム世界）を

📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」 🌎https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346 ご愛読＆応援ありがとうございます。🙇 🖋昨日のPVは5064。 →週末に向けて頑張っていこう言うとりますけどね。😊 今週めでたく累計メーターが「10.0M」に到達したわけですが、これもあれですな。悩ましいものがあります。 メーターの最小単位が「10万」なんですね、これ。 ちょっとやそっとじゃ動きませんよ？　え？　ぜいたくな悩みだって？ ……そうですね。調子に乗ってました。💧 🖋さて、明日の予告です。 ついにアリスの正体と世界の秘密が明かされる時が来た！ 大長編小説最大の転換点です。すべてはこのために準備されてきた。 すべてが意味を変える世界の中で、ステファノたちは一体どこへ向かうのか？ 「カクヨムコン10」の裏側で孤高のチャレンジに突入する唯一無

「それで、やってみたらあんなことになりまして……」 若干申し訳なさそうにステファノは言った。 「あんなに粉々になるとは思っていませんでした。すみません」 「いや、謝ることではないが……、粉々どころか消えてなくなるとはな」 「鉄くずも残らないとは、もったいない壊し方をしました」 それまでの術では残骸なり、溶けた鉄なりが残っていた。鎧としての価値はなくなったが、溶かして作り直せば何かの役に立つはずだった。 しかし、最後の術ではすべてが跡形もなく吹き飛んでしまった。ステファノはそれがもったいないと悔やむのだった。 「何も全部分解しなくてもよかったですね。加減を知らずにやり過ぎました」 スープに入れた具をすべて溶かしてしまったような口ぶりで、ステファノは失敗を語った。 「アレが失敗だと？　貴様、本気か？」 「サレルモ師、お気を鎮めて！　こいつに道理を説いても無駄です」 顔を赤くして怒鳴ろうとしたサ

📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」 🌎https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346 ご愛読＆応援ありがとうございます。🙇 🖋昨日のPVは4801。「カクヨムコン10」の裏で営業しとります。 →1月いっぱいまでこんな感じかな。 ところで！ 🖋累計PVが10.0Mを超えました。🎉✨ →ついに「1000万PV」達成！💥 やりました！😂😂😂 苦節2年7カ月。ここまでやってまいりました！ 今日は祝杯を上げますよー。🥂✨ 現在634話148万字を超える大長編となりました。こんなに続けるとは思わなかった。（1000万PV読まれるとも思わなかった） 明日も新エピソードを公開します。ぜひ読みに来てねー！ +++++ 🎬「ハリウッドよ、これが異世界ファンタジーだ！」 （「第4回　一二三書房WEB小説大賞/コミカライズ賞（コミックポルカ）」

📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」 🌎https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346 ご愛読＆応援ありがとうございます。🙇 🖋昨日のPVは5769。地道にやってます。 →泣くことカクヨムコンには勝てません。 🖋応援💗数が301kを超えました。🎉✨ →ご声援ありがとうございます。 🖋今月のPVが100kを超えました。🎉✨ 「累計1000万PV」まで、あと4400を切りました。明日届くかな？ どれどれ「カクヨムコン10短編」の予約投稿を仕掛けましょうか。 ストックから出していくだけというのは、気楽でいいですね。😊

📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」 🌎https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346 ご愛読＆応援ありがとうございます。🙇 🖋昨日のPVは6500。少し持ち直したのでしょうか？ 🖋累計PVが9.99Mを超えました。🎉✨ →「累計1000万PV」到達まで、あと1万を切りました。⌛ おお！　明日か明後日には届きそうな！🚀🪐 いいですね。良き年末を迎えられそう。 「🎵おーく千万、億千万！」とか歌いながらお祝いしたい。億はないけど。 +++++ 🎬「ハリウッドよ、これが異世界ファンタジーだ！」 （「第4回　一二三書房WEB小説大賞/コミカライズ賞（コミックポルカ）」受賞！） ハリ○タのその先にある世界。 魔法の深淵に迫る、空想科学ファンタジー。 瞑想、幻視、覚醒、想像、調和。 拳法、杖術、礫術、縄術、柔術。 推理、暗号、陰謀、探索、

「そのイデア界に働きかけることで距離を無視して術を使うことができるのか？」 「その通りです。対象のイドを特定すれば、物質界の距離を無視することができます」 前提となる理論を理解したサレルモ師は、魔法の発動原理の理解も速かった。 「サレルモ師はアバター（破壊神シヴァ）持ちなので、距離の否定ができるはずですよ」 それさえできれば、ステファノが第１戦で使った遠隔火魔法はサレルモ師にも使える。「熱」の発生自体はサレルモの決め技「シヴァの業火」と共通した術式だった。 「わたしの上級魔術が生活魔法と同じとはな」 細かい点を無視すればステファノが使った生活魔法「鍛冶屋の竈（かまど）」は、「シヴァの業火」を遠距離魔法にしたものと言えた。 第２試合の水魔法も、特筆すべき点は遠距離発動のみだった。ステファノにとっては生活魔法と何も変わらない。 第３試合の風魔法に至ってようやく技術らしい技術を使った。 「こちら

📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」 🌎https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346 ご愛読＆応援ありがとうございます。🙇 🖋昨日のPVは5586。「カクヨムコン10」の裏番組的にやってます。 🖋累計PVが9.98Mを超えました。🎉✨ →「累計1000万PV」まで、あと2万。⌛　もう少しだ！ 2022年5月に公開してから、2年と7か月でここまで来ました。 「10Mクラブ」の仲間入りが目前に迫る。 更新し続けることがなによりも大切ですねぇ。 🖋昨日新エピソードを公開しました。ぜひ見てやってください。 +++++ 🎬「ハリウッドよ、これが異世界ファンタジーだ！」 （「第4回　一二三書房WEB小説大賞/コミカライズ賞（コミックポルカ）」受賞！） はまれば楽しい、大長編大河Web小説。 ハリ○タの向こう側の世界に遊びに行こう！🧙‍♂️

リリムは差しのべた左手で標的を指さしていた。 「ん？　変わった指輪をしている。もしやあれが――」 ドリーはリリムの左人差し指に注目した。そこには赤く輝く宝石があった。 ルビーと思われる宝石は指輪の台座に納まっていた。変わっているのはその形だ。 「なぜわざわざあんな形にカットした？」 高価なルビーは細長い筒状にカットされていた。リリムは人差し指と一緒に、ルビー製の筒を標的に向けていることになる。 「赤目！　行けっ！」 叫びながらリリムは指を動かした。 ジジッ！ 音を立てて標的の上に赤い線が走った。間を置かず、線の後に隙間が広がり、鎧は２つに断ち切られた。 「光龍の息吹……いや、その応用か？」 ドリーが開発した光龍の息吹では魔力発動体を用いない。イドで作った合わせ鏡の間に強力な光を発生させて、反射による折り返しで位相を揃えた光を発射する術だ。 目の前でリリムが使って見せたのはその簡易版だった。

📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」 🌎https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346 ご愛読＆応援ありがとうございます。🙇 🖋昨日のPVは6192。 →はい。「カクヨムコン10」読者選考期間中はこんな感じでしょう。 🖋累計PVが9.97Mを超えました。🎉✨ →「1000万PV」まで、あと3万。⌛　着々と。 +++++ 「カクヨムコン10」には短編部門で作品投入しているんですが、あれですな。 今年も「やってる人」がいらっしゃいますね。 「★爆」だったり、「★押し売り」だったり……。💧 あちこちにドカドカ★を降らせておいて、「お返し★」がもらえないとごっそり取り消していく人。 バカだねぇ。取り消しても意味ないのに。 「★」は「つけたときにのみポイント集計される」ので、外してもポイントに影響はない。マイナスになることはないのです。 だい

📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」 🌎https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346 ご愛読＆応援ありがとうございます。🙇 🖋昨日のPVは5783。 →「祭り」の最中はこんなもんかな。ガンバロー！ 🖋「応援💗数」300k個を超えました。🎉✨ →ご声援に感謝です。 「終盤に向かっている」詐欺を長らく続けてきた「🍚🥢飯屋」ですが、いよいよ完結が見えてきた気がします。（個人の感想） 累計1000万PVを突破して、めでたく完結（！）という流れがいいですね。 新エピソードを本日公開しましたので、ぜひ主人公ステファノの活躍をお楽しみください。 +++++ 🎬「ハリウッドよ、これが異世界ファンタジーだ！」 （「第4回　一二三書房WEB小説大賞/コミカライズ賞（コミックポルカ）」受賞！） ハリ○タのその先にある世界。 魔法の深淵に迫る、空想

イデア界に接点を持ち、魔法行使に距離の制約を受けないステファノには、土魔法での標的破壊は簡単な課題だった。問題は破壊できるかどうかではなく、「どの方法で破壊するか？」という方法論だ。 しかし、キケルの方はそうはいかない。 20メートル先の標的を直接魔術の対象にはできないのだ。 「どっちだと思いますか？」 「何を飛ばすか、かね？」 ドリーはキケルが取る攻略手段をどう予想するか、マランツに問いかけた。 手が届かず殴れない物を破壊するには、何かを投げつけてやればいい。 魔術発動体を飛ばすか？　それとも術で武器を飛ばすか？ キケルはそのどちらかを選ぶのだろうと、マランツは予想していた。 試射位置についたキケルは右こぶしを左手で包む拳法家のようなポーズで佇んでいた。その目は閉じられ、唇は小さく動いて無音で呪文を唱えている様子だった。 「投げる様子がない？」 「うむ。発動体にしろ武器にしろ、手に持たぬ

📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」 🌎https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346 ご愛読＆応援ありがとうございます。🙇 🖋昨日のPVは6479。「カクヨムコン裏」ではこんな感じです。 →とにかく定期更新をしっかり続けて、盛り上げるべし！🔥 🖋累計PVが9.96Mを超えました。🎉✨ →「1000万PV」まで、あと4万。⌛　見えてきたゾ！👀 明日公開の新エピソードでは、ステファノの土魔法がさく裂！ それでも「生活魔法」だと言い張る頑なな奴です。 ステファノの魔法五番勝負に注目せよ！ +++++ 🎬「ハリウッドよ、これが異世界ファンタジーだ！」 （「第4回　一二三書房WEB小説大賞/コミカライズ賞（コミックポルカ）」受賞！） はまれば楽しい、大長編大河Web小説。 ハリ○タの向こう側の世界に遊びに行こう！🧙‍♂️ 魔法の秘密に

📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」 🌎https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346 ご愛読＆応援ありがとうございます。🙇 🖋「★数」が6600個を超えました。🎉✨ →区切りの6600個目は、「@tatukiti」さんでした。（たぶん） ありがとうございます。🙇 「カクヨムコン10」祭り絶賛開催中！　旧作長編には「★」が入りにくい状況です。 そこをなんとか、どーかひとつよろしくお願いします。🙏😊 🖋昨日のPVは6815。更新した土曜日としては振るいませんでした。 →昨日読みそびれた方は今日読みに来てね～。 🖋「応援💗数」がもうすぐ300k個に届きます。🚀🪐 →しっかり受け止めて、がんばっていこう！😃 +++++ 🎬「ハリウッドよ、これが異世界ファンタジーだ！」 （「第4回　一二三書房WEB小説大賞/コミカライズ賞（

📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」 🌎https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346 ご愛読＆応援ありがとうございます。🙇 🖋累計PVが9.95Mを超えました。🎉✨ →「1000万PV」まで、あと5万。⌛　年内には届きそう。🎯 「カクヨムコン」の裏で、コツコツと連載継続中。 +++++ 📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。――知力ひとつで成り上がってやる。」 🌎https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346 🎬「ハリウッドよ、これが異世界ファンタジーだ！」 （「第4回　一二三書房WEB小説大賞/コミカライズ賞（コミックポルカ）」受賞！） 魔法の秘密に鋭く迫る、異色の「シン・異世界ファンタジー©🏰」。 キャラは薄いが、ネタは濃い。小説10本分のネタをぶち込んで、お届けします。 推理？