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[#改ページ] 永井博士一家(写真右より誠一さん、博士、茅野さん) [#改ページ] 浦上天主堂の廃墟... [#改ページ] 永井博士一家(写真右より誠一さん、博士、茅野さん) [#改ページ] 浦上天主堂の廃墟にたつ誠一、茅野兄弟。 [#改ページ] うとうとしていたら、いつの間に遊びから帰ってきたのか、カヤノが冷たいほほを私のほほにくっつけ、しばらくしてから、 「ああ、……お父さんのにおい……」 と言った。 この子を残して――この世をやがて私は去らねばならぬのか! 母のにおいを忘れたゆえ、せめて父のにおいなりとも、と恋しがり、私の眠りを見定めてこっそり近寄るおさな心のいじらしさ。戦の火に母を奪われ、父の命はようやく取り止めたものの、それさえ間もなく失わねばならぬ運命をこの子は知っているのであろうか? 枯木すら倒るるまでは、その幹のうつろに小鳥をやどらせ、雨風をしのがせるという。重くなりゆく病の床に、まったく身動きもままならぬ寝たきりの私であっても、まだ息だけでも通っておれば、この幼子にとっては、寄
2015/08/09 リンク