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「なにを言うの! 田舎の善人は地の塩です! それに、人間のやりかたは人それぞれなのよ。いろんな人... 「なにを言うの! 田舎の善人は地の塩です! それに、人間のやりかたは人それぞれなのよ。いろんな人がいて、それで世の中が動いてゆくんです。それが人生というものよ!」 「そのとおりですね。」 「でも、世の中には善人が少なすぎるんですよ!」 ーーフラナリー・オコナー「田舎の善人」 2019年は、前半に「重力」と言い続けて、後半は「恩寵」と言い続けた年だったように思う。飲み会では「タイムラインが恩寵だらけになった」「『重力と恩寵』はふくろうの妄想だと思っていたら、実在する本だったので驚いている」と言われた。このような恩寵モードになったのは、『フラナリー・オコナー全短篇』を読んだからだ。 恩寵とは、人間に与えられる神の慈愛、神の恵みのことで、熱心なキリスト教徒であるオコナーは「恩寵の瞬間を描く作家」と言われている。だが、オコナーが描く恩寵は、恵みや慈愛といったあたたかいイメージとはほど遠く、血と暴力