豊かな海に酸性化の影　北極でいち早く進行―クリオネのエサに影響も 時事通信 外信部2024年09月11日07時07分配信 北極のチュクチ海で採取された巻き貝の一種クリオネ＝６日 【みらい船上・時事】ベーリング海峡の北に広がる北極のチュクチ海南部は、多様な海洋生物が集まる「ホットスポット」として知られる。海洋地球研究船「みらい」が同海域で行った採水調査では「シー・エンジェル（海の天使）」と呼ばれる巻き貝の一種クリオネも見つかった。だが、北極では海の酸性化がいち早く進んでおり、生態系への悪影響も懸念されている。 数奇な運命たどった「みらい」　原子力船「むつ」から再生―福島原発調査も、来年度運用に幕〔６６°３３′Ｎ　北極が教えるみらい〕 ◇エサなしでも１年生存 ２本の角がある頭部に半透明の胴体。羽のような翼足をひらひらと羽ばたかせて浮遊する。体長は５ミリ程度。クリオネはプランクトンの一種で、北海

【みらい船上・時事】北極航海を続ける海洋地球研究船「みらい」は８、９両日、米アラスカ州北部バロー岬沖合の北極海で観測活動を実施した。小型ボートを使った強風の中での観測装置の回収作業では、ひやりとする場面も。危険と隣り合わせで行われる北極観測の一端を垣間見た。 小型ボートで観測装置を回収する海洋地球研究船「みらい」の船員＝2024年9月8日、米アラスカ州北部バロー岬沖の北極海【時事通信社】 「うわ、危ない！」甲板上で作業を見守る研究者から悲鳴が上がった。船員３人を乗せた小型ボートが高い横波にあおられ、大きく傾く。水しぶきが上がる中、船員は必死で足を踏ん張り、ボートにしがみついた。 みらいは８日、バロー岬沖の３カ所で、異なる深度ごとに水温や塩分濃度などを測る係留系装置を回収した。２年前に設置した同装置の回収では、まず船から音響信号を発信し、重りを切り離す。装置に取り付けた浮きが浮上すると、ボー

蒼い北極、秘める可能性と危うさ　止まらぬ「気候崩壊」―過熱する資源・覇権争奪競争〔６６°３３′Ｎ　北極が教えるみらい〕 2024年09月09日07時59分配信 【図解】北極圏 初めて見た北極の海は蒼（あお）かった。 数奇な運命たどった「みらい」　原子力船「むつ」から再生―福島原発調査も、来年度運用に幕 南国の海の透き通った「青」ではなく、どこか底知れず、近寄り難さを感じる「蒼」だった。 ２０２２年１０月、ロシアのウクライナ侵攻が北極にもたらす影響を取材するため、ロシアと国境を接するノルウェー北部キルケネスを訪れた時だ。１０メートルほどの川を隔てて向かい合う両国の境は、河口から真っすぐに伸び、北極の海を切り裂いていた。 「北極」と聞いて何が思い浮かぶだろうか。 氷に閉ざされた海、ホッキョクグマ、オーロラ―。北緯６６度３３分以北の北極圏では、他の地域の４倍の速さで温暖化が進む。３０年代には夏季

数奇な運命たどった「みらい」　原子力船「むつ」から再生―福島原発調査も、来年度運用に幕〔６６°３３′Ｎ　北極が教えるみらい〕 2024年09月09日08時19分配信 青森県むつ市の大湊港に係留された原子力船「むつ」 海洋地球研究船「みらい」の船首には、うっすらと「むつ」の文字が見える。１９７４年に放射線漏れ事故を起こした原子力船「むつ」の名残だ。むつは長い「幽閉」の末、原子炉を撤去されてみらいへと生まれ変わり、その後２７年間で２００回以上の観測航海を実施。東京電力福島第１原子力発電所の事故では、海洋汚染の調査も行った。みらいは８月２６日、青森県むつ市関根浜港から北極航海に出航した。 蒼い北極、秘める可能性と危うさ　止まらぬ「気候崩壊」―過熱する資源・覇権争奪競争 ◇初臨界で放射線漏れ 将来の原子力船時代に備えるという国家プロジェクトの下、むつは６９年に進水した。むつ市大湊港で試運転に入ろう

【みらい船上・時事】１カ月以上に及ぶ船上生活での楽しみの一つが食事だ。乗船前は新鮮な野菜や魚が食べられなくなるのではと不安だったが、１日３回の食事ではサラダや刺し身も提供される。驚くのが、そのボリューム。乗船者からは「おいしいけど、間違いなく太る」とうれしい悲鳴が聞こえてくる。 海洋地球研究船「みらい」の厨房を仕切る司厨長の大宮勝之さん＝2024年9月2日、みらい船上【時事通信社】 正午になり、船内にアニメ「となりのトトロ」の音楽が流れる。食事の合図だ。「いただきまーす」。乗船者が厨房（ちゅうぼう）に大きな声を掛け、続々と食堂に入って来る。 ９月１日の献立は朝食がアジの干物、切り干し大根煮、野菜のみそ汁。昼食は温そば、野菜のかき揚げ、サラダ、ナスのみそ田楽、鶏肉とゴボウの炊き込みご飯。夕食は牛ステーキ、温野菜、ジャーマンスイートポテトのチーズ焼き、スモークサーモンと野菜サラダ、コーンポター

「明日の島」と「昨日の島」　ベーリング海峡通過、北極海に―みらい 時事通信 外信部2024年09月05日20時05分配信 ４日、ベーリング海峡のダイオミード諸島付近を通過する海洋地球研究船「みらい」 【みらい船上・時事】海洋地球研究船「みらい」は４日夜（日本時間５日午後）、ベーリング海峡中央に位置するダイオミード諸島を通過した。二つの島から成る同諸島の一つは米国領、もう一つはロシア領。日付変更線が二つの島の間を通っているため、「明日の島」と「昨日の島」とも呼ばれる。みらいは５日未明、北極海に入った。 「みらい」は北緯６０度に◇北極海はどこから？ 大きい島はロシア最東端となるラトマノフ島で、小さい島は米国領のリトルダイオミード島。両島は最も近い場所で３．８キロメートルしか離れていないが、２０時間の時差がある。リトルダイオミード島には約８０人が居住している。 米地質調査所によると、冬季には両島

海洋地球研究船「みらい」の船橋から海を眺める辻晶久船長＝2024年9月1日【時事通信社】 【みらい船上・時事】北極航海を行う海洋地球研究船「みらい」は３日、北緯６０度を越えた。「船の世界」では、北極海に入ったことになる。一般的に、北極海はユーラシア大陸、北米大陸、デンマーク領グリーンランドに囲まれた海域を指すが、航海士は異なる認識を持っているという。 国際海事機関（ＩＭＯ）で２０１７年に発効した国際基準「極海コード」は、北緯６０度以北（太平洋側のみ）を北極海、南６０度以南を南極海と定めた。厳しい環境下にある極域を運航する船舶の安全と環境保護のために新たな規制を設定。遭難した場合に備え、船同士で通信する無線だけでなく、航空機とも通信できる無線を常備しておくことなどを義務付けた。 この他にも、１等航海士の加藤宏幸さんは「通常の船はそれぞれの救命艇に３日分の非常食を載せておけばよいが、一般の船が

海洋地球研究船「みらい」で採水作業の手順を確認する海洋研究開発機構（ＪＡＭＳＴＥＣ）の八田真理子副主任研究員＝2024年9月2日、みらい船上【時事通信社】 【みらい船上・時事】ベーリング海を北東に進む海洋地球研究船「みらい」では、北極観測に向けた準備が着々と進められている。２日には、採取した海水を検査用ボトルに移し替える練習を行った。みらいは当初の予定よりも早い４日午後（日本時間５日午前）に、ベーリング海峡を抜けて北極海に入る。気温は９度を下回るようになってきた。 「２０秒間オーバーフロー（あふれ）させて」「気泡が入らないように、ゆっくりと」。ベテランの観測技術員から指示が飛ぶ。 「溶存無機炭素」「アルカリ度」「栄養塩」など、検査項目ごとに異なる容器へ海水を移していく。容器によって事前に洗う回数が２回だったり３回だったり。ふたを閉める際に気泡が入らないよう注意しなければならない容器もあり、

海洋地球研究船「みらい」のディーゼルエンジンの主機関（左奥）と減速装置（右手前）＝2024年8月29日【時事通信社】 【みらい船上・時事】海洋地球研究船「みらい」は９月１日、日付変更線を越え、米国の排他的経済水域（ＥＥＺ）に入った。約１２ノット（時速約２２キロ）の速度でアリューシャン列島周辺のベーリング海を北西に進んでいる。約１カ月にわたる長期間の北極航海を支える「心臓」が機関室だ。ディーゼルエンジンの主機関４台を搭載し、１０人が交代制で２４時間見守る。 「耳栓をしてください」。そう指示され機関室に入った途端、もあっとした熱気に包まれた。さまざまな機械やパイプ、メーター、バルブが絡み合い、熱帯ジャングルに入ったかのようだ。 高さ３メートルほどのエンジンから伸びるシャフトが回転し、船尾にある直径４メートルの二つのプロペラを回す。出航前に積んだ燃料は１０００キロリットルで、６０日間は補給なしで

横須賀港（神奈川県横須賀市）～新門司港（福岡県北九州市）を航行する東京九州フェリーが2021年7月1日に就航し、日曜以外の週6日に各日1往復で運航されている。この航路は関東から九州方面を直結する久々のフェリー航路で、海運業界では大きな話題となっている。 初日から時化も大きな遅れなし 東京九州フェリーは「はまゆう」「それいゆ」の2隻体制で、横須賀～新門司を片道約21時間で航行するダイヤになっている（横須賀23時45分発→新門司翌日21時着、新門司23時55分発→横須賀翌日20時45分着）。 就航初日の7月1日から2日にかけての太平洋側の天気は本州南岸に梅雨前線が停滞し、海は時化ていた。 初日の第1便に乗船した乗客からは、「酔い止めが効かない」「もう胃に吐くものがない」と船酔いに悩まされている様子がSNSに投稿されていた。それでも新門司行き・横須賀行きともに船は大きな遅れを出すことなく目的地に

2021年1月現在、全国で新型コロナの流行に歯止めがかからず、1月7日に二度目となる緊急事態宣言が出されました。 全国的に感染者が急増しており、発熱相談窓口への問い合わせも増えています。 どのような症状があれば新型コロナを疑い病院を受診すれば良いのでしょうか。 新型コロナの典型的な症状、経過、重症化のリスク、後遺症などについて現時点での知見をまとめました。 新型コロナウイルス感染症の典型的な症状新型コロナでよくみられる症状（CDC「新型コロナの臨床症状」より） 新型コロナの潜伏期間（感染する機会から何らかの症状を発症するまでの期間）には1〜14日と幅がありますが、多くの人がおよそ4〜5日で発症します。 新型コロナウイルス感染症の初期症状は風邪やインフルエンザと似ています。 風邪は、微熱を含む発熱、鼻水、鼻詰まり、ノドの痛み、咳などの症状がみられることが多く、またインフルエンザも風邪と似てい