大宮日記 ラテン語、チョコザップ、漢文、大宮図書館

食べて飲んで、勉強して、本を読んで、運動して生きていく。ここ、さいたま大宮で。

【読了】デイモン・ガルガット、宇佐川晶子=訳『約束』早川書房

さいたま市立北図書館所蔵

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2024/11/19 大宮図書館より借入
2024/11/27 読書開始
2024/11/29 読了、大宮図書館へ返却

 

さすがのブッカー賞(賞に弱いの、わたし)。そのダイナミックな物語に引き込まれる。それにしても、南アフリカの農場って名作の舞台になりやすいのですかねえ。「農場小説」か。例えば、クッツェーの『恥辱』(ブッカー賞受賞作)。

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それは、支配する白人(アフリカーンス)と支配される黒人とその反転、宗教の相克、剥き出しの暴力と不穏、常に付きまとう緊迫感と荒む世情。南アフリカという国ならではなのか。

彼女は制服が汗で皮膚にはりついているのを感じ、自分の流儀に反して、手当たり次第に脱いでいく。それでいいんだよ、アモール、悪いことなど起きない……風呂に入りたいが、できない。ダムがほぼからっぽで、代わりにシャワーを二分だけ浴びて、残りはあとで使うために浴槽にためる。普通なら夕食を作るところだが、電気がまたつかない。そう、ここでも。国中で電力不足が起きていて、暗い時間帯がどんどん長くなる。配電網が崩壊しつつあるのに、維持管理はされておらず、金もなく、大統領の友人たちは現金を持って国外逃亡している。明かりもなく、水もなく、豊かな国に不景気が蔓延している。(P.281-2)

スワート家の当主マニ、その妻レイチェル、長女アストリッド、長男アントンを巡る4章。次女アモールと黒人メイドのサロメが「約束」を胸に秘めながら紡ぎ出される数十年。
それぞれの登場人物の視線を踏まえながらも「神」の視線を被せていく書きっぷりにも唸る。
日本の「農場小説」を考えてみるが、農場では物語が成り立たない。まあ、地方、田舎が舞台ということになると、例えば、絲山秋子『薄情』。

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最近作だと、角田光代『方舟を燃やす』。

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など思い浮かぶ。両作とも傑作だと思うが、やはり日本的スケールにとどまって、ブッカー賞には届かないのである(やっぱり賞に弱い 笑)。

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