小説版
本のタイトル通り、主人公は大富豪でありながら刑事、という神部大介(かんべだいすけ)です。キャデラックとハバナ(葉巻)がトレードマークという、ちょっと他では見たことが無い、特に日本では類を見ないタイプです。
短篇が 4 編収録されていますが、富豪刑事はこの 4 編で完結しているらしく、続編が書かれることは、今のところ無さそうです。しかし、並の作家ならこれだけで 10 冊くらいは本を出せるほど、魅力的な設定とキャラクタが出てきます。
4 編で完結なのが惜しい
4 編ともミステリィ作品なのですが、それぞれ、まるで違うジャンルのように、趣向を変えています。──まぁ、途中で読者に向かって登場人物が語りかけてきたり、これが小説の中のできごとであると語られたりしているので、真面目に読むと肩すかしを食らうかも。
しかし、トリックもちゃんと考えられているし、何より登場人物がみんな変わっていて、読んでいて楽しくなる作品でした。それに、事件を解決する探偵役が、これほど積極的に動くのも珍しいのでは。なにしろ、事件解決のために会社を建てたりしますからね──とここまで書いて、名探偵・L がいることを思い出しました。
もう一度書くけど、これで終わりなのが非常に残念! 最後の一行で恐ろしいことが書いてあるので、ますます続きが読みたいです。
TV ドラマ版
TV ドラマ化された際、主人公は深田恭子さんが演じました。──もちろん、神部大介を男装して演じたわけではなく(それではジャンルが変わってしまう)神部美和子(かんべみわこ)という女性が主人公、という設定に変わっていました。それについて筒井康隆氏は(主人公の性別が変わったのは)原作を書いてから長い年月を経て、作品が時代にそぐわなくなった
ため、とのこと。
ref.: 富豪刑事 – Wikipedia
自分は TV ドラマを何話か見たことがあります。そのあとで小説を読んだのですが、主人公の父親が、TV と小説でほぼ同じなのが笑いました。さすがに「ちょっと、よろしいでしょうか?」という女性的なセリフは TV ドラマがオリジナルですが、非常にいい味付けになっていますね。
たった100億円のために人を殺すなんて
……。