河野談話検証結果に対する声明
安倍首相は被害者が望む解決策を示すため知恵を絞れ
安倍政権は6月20日、河野談話作成過程に関する検証結果を発表した。報告書によると、韓国政府は「内容は日本政府が自主的に決めるものであり、交渉の対象にする考えは全くない」という考えを表明しており、日本政府も「歴史的事実を曲げた結論を出すことはできない」という姿勢を貫いている。このような基本姿勢に立って、双方が問題解決のため外交努力をした痕跡が見てとれる。外交当局としては当たり前のことをしていたという予想どおりの結果といえよう。
1.河野談話は、収集された資料等に基づいて、日本側の判断で書かれていたことが明確になった。
「談話の原案は、聞き取り調査(1993年7月26日~30日)の終了前の遅くとも1993年7月29日までに、それまでに日本政府が行った関連文書の調査結果等を踏まえて既に起案されていた」と報告書は述べている。
「慰安婦」被害者への聞き取り調査については、「事実究明よりも、日本政府の真摯な姿勢を示すこと、元慰安婦に寄り添い、その気持ちを深く理解することにその意図があった」とし、「聞き取り調査が行われる前から追加調査結果もほぼまとまっており、聞き取り調査終了前に既に談話の原案が作成されていた」ことが明らかにされた。
「元慰安婦16人の証言だけに基づいて募集時の強制を認めた」と決めつけ、談話の検証と見直しを求めてきた勢力の論拠が見事に覆されたのである。
報告書は「日本側では、加藤官房長官発表以降も引き続き関係省庁において関連文書の調査を行い、新たに米国国立公文書館等での文献調査を行い、これらによって得られた文献資料を基本として、軍関係者や慰安所経営者等各方面への聞き取り調査や挺対協の証言集の分析に着手しており、政府調査報告も、ほぼまとめられていた」としている。
「業者に対しても軍の『指示』があったとの表現」を韓国側が求めたのに対して最後まで日本側が受け入れない等、最終的に談話の文言は、収集された資料等に基づいて、日本側の判断で書かれていたことが、より明確になった。
2.日本軍「慰安婦」問題の本質的な問題は「強制連行」ではない。
「一連の調査を通じて得られた認識は、いわゆる「強制連行」は確認できないというものであった」と報告書は述べている。
しかし、河野談話の根拠となった公文書の中には、当時法務省が所蔵していた「バタビア臨時軍法会議の記録」があり、そこには「ジャワ島セマランほかの抑留所に収容中であったオランダ人女性らを慰安婦として使う計画の立案と実現に協力した」「部下の軍人や民間人が上記女性らに対し、売春をさせる目的で上記慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどした」等の記述がある。これは、安倍首相の言う「狭義の強制連行」をも立証するものである。
朝鮮半島からの連行については「狭義の強制連行」を示す公文書が見当たらなかったという理由で、「強制連行は確認できない」という結論を導いているが、これは当時から日本政府が「官憲による暴力・脅迫を用いた連行」のみを「強制連行」と位置づけていたことを示している。このような見方が現在も日本軍「慰安婦」問題の本質を伝える上で障害になっていることを考え合わせると、当初からの政府の認識が現在の混乱を招いたともいえる。改めて言うが、誘拐・拉致・人身売買なども本人たちの意に反した連行であり、強制連行以外の何ものでもない。
さらに重要なことは、日本軍「慰安婦」制度の本質が連行の強制性にあるのではなく、女性たちを居住の自由、外出の自由、廃業の自由、拒否する自由のない強制的な状況の下に置いて、戦争遂行の道具と見なした人権侵害行為にあったという点である。
これは、すでに国際的常識であり、たとえ「狭義の強制連行」がなかったことを立証できたとしても、世界の認識は変わらない。むしろ、これを主張することによって、日本は21世紀の今日に至ってもなお人権意識のない国と世界から見られてしまうのである。
「日本の名誉を著しく毀損」しているのは河野談話ではなく、「強制連行はなかった」と主張して人権意識のなさをさらけ出している人々である。むしろ、河野談話はかろうじて日本の面目を保っている貴重な財産というべきであろう。
3.安倍首相は近隣諸国との関係改善のため努力せよ。
今、改めて思う。安倍政権がこの検証を通して得たかったものは、一体何だったのだろうかと。結果の如何に関わらず見直しはしないという前提で、作成過程のみを対象におこなわれた検証は、当初から目的が何なのか首をかしげざるをえないものだった。
報道によると、事前に当時のやりとりを読んでいた首相は、「当時の外交交渉を明らかにすることで、朴大統領が慰安婦問題で日本に『誠意ある措置』を求め続けるのは『議論の蒸し返しだ』とアピールする狙い」を持っていたという。また、ある政府高官は「当時はお互いに了解し、未来志向のため政治決着したことを確認するものだ」と「期待」を示したという。
これが本当だとしたら、その幼稚な発想に呆れてしまう。大人なら、相手との関係をスムーズにするために、何をすればいいかと知恵を絞るものだ。これは、過去の言質をつきつけて、相手をぎゃふんと言わせて黙らせようとする、子どものけんかレベルの話である。
韓国政府は20日、早速遺憾の意を表明した。当然である。日本側からの提案でやりとりを伏せていたのに、日本側が一方的に約束を破ったのだ。韓国政府は「検証結果の細部の内容に対するわれわれの評価と立場を別途明らかにし、国際社会と共に適切な措置をとる」と言明した。黙らせるどころか、逆に火を付けた格好だ。
思えば、これは安倍政権の一貫した外交姿勢である。就任後、韓国および中国との二国間首脳会談がなかなか実現できない安倍首相は、「わが方は対話を呼びかけている」と強調する一方で、侵略否定発言、靖国神社参拝など次から次へと相手が会談に応じられない条件づくりをしてきた。今回も、やっと日韓局長級協議が始まり軌道に乗ろうとするタイミングで、この所作である。相手が応じにくい条件をつくっておいて「呼びかけ」、「わが方は努力している」と胸を張って見せる。これではいつまで経っても、近隣諸国との関係はうまくいかない。
4.第12回アジア連帯会議の提言を受け入れ、一日も早く日本軍「慰安婦」問題を解決せよ。
私たちは、被害国7ヵ国と共に、第12回アジア連帯会議を開き、日本軍「慰安婦」問題の全体的解決のための提言をまとめて、6月2日、日本政府に手渡した。また、この提言で認めるべきとした事実を裏付ける資料53点と、河野談話発表後に民間の努力で発掘された公文書等の資料529点も合わせて提出した。
これらの資料を適正に検討すれば、河野談話の段階では認めなかった事実、すなわち「業者に対しても軍の『指示』があった」こと等を明確に認めることができるはずだ。被害者たちは、河野談話が曖昧にした日本政府と軍の責任をより明確にし、事実をより具体的に認めて謝罪し、賠償することを願っている。つまり、河野談話を見直すのではなく、維持発展させることで、日本軍「慰安婦」問題の最終的解決をはかることができるのである。
安倍首相は、第12回アジア連帯会議の提言を真摯に受け止め、高齢化した被害者たちをこれ以上待たせることなく、被害者に受け入れられる真の解決策を一刻も早く示すよう改めて要求する。
2014年6月26日
日本軍「慰安婦」問題解決全国行動