HR買収

(This is a translated version of "A VC" blog post. Thanks to Fred Wilson.)
HR買収と聞いてたいていの人が思い浮かべるのは、上場した大企業、たとえばグーグル、ヤフーなどが、株式数百万ドル分を差し出してエンジニアやプロダクト担当のチームを買い取るという場面だろう。
だがスタートアップ界においてもHR買収が活発に行なわれていると聞いたら、あなたがたは驚くかもしれない。わたしたちのポートフォリオ会社がHR買収を実施した、あるいは実施中である数を、この四半期にかけて勘定してみたのだ。
わたしたちのポートフォリオ会社のうち、よく知られているものを挙げよう。

たいていの場合、HR買収はエンジニアリングおよびプロダクトの才能に対して実施されるものだが、セールスの才能に対してHR買収が実施されるのを見たこともある。昨年わたしたちのポートフォリオ会社「ターゲットスポット」は「ロニング・リプセット・ラジオ」を買収したことで、このオンライン・ラジオ会社の幹部セールス・チームを呼び込んだ。
スタートアップを構築していくのは大変なことで、特別に優秀な才能を必要とする。この才能を求人で獲得することもできるし、それはわたしたちのポートフォリオ会社の大半がとっている方法である。だが特殊な状況下においては才能を買い取るということもあり、わたしたちのポートフォリオ会社の多くはHR買収を成功させてきた。
HR買収を実施するときは、チームを雇用することによって必要となるであろうコストの分、提示金を上積みすることとなる。そしてこの上積み金はときに顕著な額にもなる。これについてわたしの考えを述べよう。
1) チームを雇用するために必要なコストを、株式オプションで幾らになるか、計算する。
2) 一遍のつかみ取りで、既存のチームが一緒に働いてもいいという返事をもらうためには上積み金をどの程度支払う必要があるか、実額で計算する。これまでの例では、100%の上積み金、あるいはそれ以上に高い上積み金も何例かあった。
3) あなたの会社が即時に売却できる株式の額を計算する。
4) 可能ならば相手の会社の出資者にキャッシュで払い戻しをする。
5) あなたの会社の従業員に付与している株式オプションのそれと同じ期間分、チームにも付与する。
6) 実際どうなるにせよ、チームが3年から4年間は会社にとどまるようなインセンティヴを必ず与える。それができないのなら、その契約は結ぶべきではない。
ひとつ例を挙げよう。仮にあなたの会社は1億ドルの評価額だとしよう。あなたの会社のロードマップに沿うようなテクノロジを構築できる、あるいはすでに構築しているチームを見つけ、そのチームのスキルが、あなたの会社のチームにはないスキルであることを確認したとする。このチームを雇用するために必要なコストは、あなたの会社の株式2.5%分だとしよう。そうすると、相手の会社を買い取ってチームも獲得するために、自社の株式5%分までなら支払ってもいいですよとあなたは言うことになる。この買収は書類上、500万ドルの評価となる。そして仮に、あなたの欲しいチームが相手の会社の株式の70%を保有し、のこりはエンジェルが保有しているとしよう。そうすると、こちら側がオファーしたい契約条件は、以下のようになる。

  • 500万ドルの買収提案
  • 150万ドルをエンジェルにキャッシュで払い戻し
  • チームには自社の株式3.5%分のオプションを4年間で付与

通常、多少のキャッシュを用意して、契約交渉の場に来た創業者のためには株式の上積みもすることになるが、できるかぎり低く抑えるべきだ。チームに渡すことになる評価額の大半は、ある程度の期間をおかないと換金できない株式で実施するのが大事だ。
だがなによりも、そのチームがあなたの会社の文化にしっかりと溶け合うことが大事である。そのチームと一緒に仕事をするのを楽しみ、かれらがあなたがたと一緒に仕事をするのを楽しめることを確認しよう。それから、かれらにも昇進できる道があるようなかたちで会社に参加させることを確認しよう。HR買収が失敗するもっともよくある理由は、買収されたチームが、入った会社で仕事を楽しめなかったからか、あるいは十分に参加させてもらえなくて不満が溜まったからのどちらかである。
今後数年間は、こういった契約取引がより頻繁に行なわれることとなるだろう。それはブレークする会社が出てきて巨大な成功を手に入れる一方で、苦戦する会社も出てくると、勝ち馬に乗ろうという決断をする者がいるからだ。これは誰にとっても、十分理にかなったことである。