はてなブックマークとdel.icio.us

この2か月、英語記事だけをブックマークすることに決めて、つづけてきて思ったこと。
(注意)わたしはどちらの肩をもつわけでもない。棲み分けが可能と判断した。

これをふまえて、少し考えてみる。

温泉旅館とビジネスホテル

はてなブックマークを温泉旅館だとすると、よろこばれるのは、人がぶらぶらするところが多いことかな。風呂上がりに牛乳を飲んだりマッサージ機があったりするロビー。ちょっと出て涼みに行ける川沿いの散歩道。温泉街の夕暮れの日差しを眺められる展望台。温泉まんじゅうの食べられる売店。そんなところかな。それで、他人と肩を寄せ合っても窮屈でなく、その場かぎりの世間話みたいな出会いがあること。とりあえずあれば誰か使うだろう、みたいなものが案外よろこばれる。卓球台、インベーダーゲーム、UFOキャッチャー、プリクラ、など。
del.icio.usがビジネスホテルだとすると、立地は駅前だろう。新幹線の駅などあれば便利だし、人と落ち合うのにも使える。商談にはスターバックス、運動不足にはジム、眠れない夜にはショットバー。だいたいがひとりで行動を決断するのにちょうどよい場所だ。余計なものがあるよりは、スターバックスの席に余裕があるとか、ジムのシャワー室にシーブリーズがあるとか、ショットバーの窓から交差点の様子がうかがえるとか、そんな具合。

進化の方向性

ソーシャル・ブックマークとひとくちに言っても、いろいろある。
はてなブックマークの進化の方向性は、温泉旅館の充実に向かうのがまともかなと僭越ながら思う。あまり速いとか関係ないかもしれない。iPhoneだって遅くても欲しがられる。
del.icio.usについては、わたしは実を言うとここ1週間くらい放置している。これはコメント欄が不足しているからだ。スタバの席が狭苦しいのと似ているかな。わたしは本日のコーヒーしか注文しないけれど、なんとかマキアートをつくってもらうのを待つ場所よりも、席が広い方がうれしい。それからやはり、話が早いのがいい。それでdel.icio.usに不満があって、とりあえず放置して考えてみた。
ここでわたしが話したいのは、はてなブックマークでもなく、del.icio.usでもないソーシャル・ブックマークをつくれるか思考実験。
del.icio.usは海外の話なので、あまり利用者の声は知らないのだが、ヤフーはdel.icio.usをどうするかとりあえず決めていないのではないか。競合が多すぎるから。ビジネスの種ならDiggとかLinkedInで情報交換して、出先でもツイッターか、フェースブックがあれば親しい友達がみつけたものとかすぐにわかる。深い人間関係や、真剣な文化活動の場としてはマイスペースがある。それにアメリカ東海岸ならNYTimes買ったほうが話が通じやすいのかも。
そうなるとあとは気晴らしか、ウェブ開発者むけだろうけれど、これもリテラシの高い人からはカネが落ちてこない。アーリーアダプターはアップルに注ぎ込んであまり余裕がないのではないかな。広告収入にしてもデルやHPのサーバなどもクラウド・コンピューティングで目減りするだろう。そうなると、強みにできそうなチャンスがあるとしたら携帯で使えるということくらいか。
スターバックスが無線LANに本気になっているのか知らないけれど、日本ではスタバ天国なので、ケータイでスタバでちょっと15分、みたいな組み合わせには隙間があるかもしれない。ただこれにはミクシィという先行者がいて、フェースブックよりあとに来るひとが成功する確率は非常に低い。
と、ふつうに考えれば袋小路まちがいなし。

ふつうに考えるのをやめてみる

ではふつうに考えるのをやめてみるか。マイクロソフトが検索でキャッシュバックというのを始めた。それからアマゾンにはむかしからアソシエイト・プログラムがある。こういった「他の人がカネを稼ぐのをたすける仕組み」がある。任意で好きな相手にカネを落とすような仕組みには、まだ可能性があるのではないか。ソーシャル・ブックマークには「ケータイで接続するのに時間がかかってパケ代もかかってイライラ」を解消するメリットが生み出せそうな気がする。それもジュンチャンはいまなにしてる、というのではなく、もうすこし匿名的なものはあるかもしれない。
友達ではないけれど同じ空間に属しているひとの情報がほしい。たとえばだけれど、学校に通っているひとが宿題とか気にしていて、ウェブで提出したひとはなに書いているのかだいたい知りたいとか。あの先生の授業で今日誰が発表するのかみておきたいとか、ミクシィにも載っていなくて、学校別掲示板にも載っていない、半分公開な組織内情報みたいなものは、けっこう出せそうなものはありそうな気がする。どこの大学で何曜日の何時間目に誰が授業するというのは、公開してもそれほど害はなさそうだし、むしろ公開したほうが大学は生き残れる。ユーチューブに先週の講義アップされていないか確かめたい、とかそういう需要もあるかもしれない。そんなとき、早く情報を仕入れているひとに利益が行く仕組みがあれば、けっこう競争になって、複数の情報共有サイト(動画、写真など)を横断して取り込むブックマークの得意なひとが生まれても不思議はない。
あと、これも教育だけれど、関心はあるけれどどれがよさそうかわからない、というのは海外のページ。英語圏といってもアメリカだけじゃない。イギリス、インド、フィリピン、アイルランド、南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリアなど文化が違う国が多い。そこで群衆の叡智がどんどん蓄積されていくと、サーチだけではなくて、チョイスの部分にかなりの労働力が必要となるだろう。セマンティックなサーチでも見つけられない情報。チョイスの早さが鍵になるような、早い人が宿題をラクして終えられるような情報。こういったものはあってもよさそうだ。それで、早い人がすぐに翻訳すれば尚よし。
収益化がどうのというのはゴリラにまかせるしかない。グーグル、アマゾン、ヤフー、マイクロソフトあたりの。問題はチョイスの技術をまとめて、転用可能なモジュールにする(ツイッターみたいに)ということにありそうだ。チョイスの技術はそれで、中身はどうするか。そのあたりのノウハウは、じつは大学にあったりする。

学校のノウハウをウェブに載せる

いちばん大事なノウハウを大学が握っていたり、あるいは予備校がカネにしたりしている。それはもはや時代遅れではなかろうか。
ブックマークとは、つまるところ「しおり」だ。ナントカとハサミは使いようというけれど、「しおり」だってその部類ではなかろうか。大学の図書館でみつけた専門書に、偶然ポストイットが貼りっぱなしになっていて、「ラッキー!」とこぶしを握りしめたことはないだろうか。こういったノウハウだって、その気になればウェブに載せられなくもない。
問題は「その気になるか」だろうか。

まとめ

  • はてなブックマークは温泉旅館、del.icio.usはビジネスホテルとしたらどう理解できるか。
  • 進化の方向性は、はてなブックマークは有望。温泉旅館を充実させよう。
  • del.icio.usはヤフーがどうするつもりなのか不明。
  • この海外の人の競合は多い。Digg、LinkedIn、ツイッター、フェースブック、マイスペース。
  • では日本にdel.icio.usを呼び込んだらどうなるか。チャンスはケータイとスターバックスか。
  • 競合は圧倒的に強いミクシィか。フェースブックもいる。
  • ウェブに載っていない情報がこれからも増えつづけるのは、学校。
  • 友達ではないけれど同じ空間に属しているひとのことを知りたい。それも宿題とか研究発表とか。
  • 公開とも非公開ともつかない情報はまだ手つかずになっている。
  • サーチしても手に入りにくい、チョイスがすでに行われた情報は、なんといっても「しおり」だ。
  • 「しおり」=ブックマーク。
  • チョイスがすでに行われた情報は、じつは大学や予備校が握っている。
  • それを公開するのは悪いことか? いやユーチューブに講義をアップするのは善いと思う。
  • あちこちにアップされた情報を早くみつけたひとにカネを稼がせたい仕組みを作れるか。
  • ゴリラズ(グーグル、アマゾン、ヤフー、マイクロソフト)がすでにそれをやっている。
  • その気になるかしだい。