北本線 概要

北本線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/20 14:54 UTC 版)

概要

フアランポーン - クルンガオ(1917年アユタヤ駅へ改称[3])間が1897年3月26日に開業した[4][5]。それは同時に、タイにおける官営鉄道の始まりでもあった。

開業時、フアランポーン駅、クルンガオ(アユタヤ)駅に加え、中間駅としてバーンスー分岐駅ラックシー駅ラックホック駅、 クローンランシット駅、チアンラック駅チアンラックノーイ駅バーンパイン駅の7駅が開業した[5]。このうちクローンランシット駅は2020年に廃駅となったが、その付近にはランシット駅1994年に開業している。

東北線(フアランポーン - ナコーンラーチャシーマー)が完成後北線の工事が始まり北に向かい少しずつ延伸し、1922年1月1日にようやくチェンマイまで到達した[6]。(フアランポーン - チェンマイ間の営業開始は1933年4月11日

南半分の区間はチャオプラヤーデルタに通じるタイ中北部の広大な平野部を南北に貫き、車窓には一大穀倉地帯が続く。アユタヤロッブリーナコンサワンピッサヌロークといったタイ中北部の主要都市を通過するため、旅客・貨物ともに需要が多い。タイの行政上の区分ではピッサヌローク県以北がタイ北部とされているが、ウタラディット付近まではほぼ平坦な線形を辿る。一方、北半分の区間は急勾配が連続する山岳鉄道の様を呈する。ウタラディットより先はナーン川本流域からその支流であるヨム川流域、ピン川の支流であるワン川流域、そしてピン川本流域へと、急勾配で峠を越えながら主要河川と交わるように東西に結ぶ。

タイ中部から北部にかけて中核都市を結び、終点のチェンマイがタイ北部を代表する国際観光都市でもあることから、タイ国鉄では最も主要な幹線として位置づけられている。バンコク-チェンマイ間を結ぶ寝台特急「ウトラーウィティー号タイ語版[7] [注釈 3]をはじめ、複数の優等列車が運行している。また豪華ツアー列車のイースタン&オリエンタル・エクスプレスがタイ国内を走行する際はフアランポーン駅に乗り入れ、時にはチェンマイまで走行する姿がみられる。

他に特筆すべき列車として、2015年6月頃まで第13,14寝台特急列車が、西日本旅客鉄道(JR西日本)より譲渡された24系客車列車で運用されていた。現在では同列車は在来客車での運転となっているが、運用上の都合等により24系客車譲渡車が連結されることがしばしばある。なお、同客車は2023年現在は定期運用を持たず、臨時列車やタイ国鉄やタイ国政府観光庁が主催する団体ツアー列車等に使用される。

信号設備面をみても、非自動信号が主流を占めるタイ国鉄の中では近代化が進んでいる。詳細は後述。

複線化事業

2003年7月にバーンパーチー - ロッブリー間が複線化(厳密には単線2線並列化)されて以来、長らくロッブリー駅以北が単線のまま残存されてきたが、ピッサヌローク駅までの複線化が決定し、2016年末頃より第1期事業区間であるロッブリー - パークナムポー間が着工された。2022年5月現在、既存路線に並行する形で複線の対を成す新線が建設されている。なおロッブリー駅付近は重要な遺跡が多く拡張が困難なため、同市街を大きく迂回するバイパス線が建造中である。バイパス線上にはロッブリー新駅も開設されることになっていて[8]、これら複線化事業は2022年に完成予定とされていたが[9]、のちに2022年4月時点の建設進捗が約7割[10]、2023年7月に約8割というように遅延が報じられている[11]

2022年5月11日、パークナムポー - デンチャイ間、延べ280.5 kmの複線化事業について環境アセスメントが承認された[12]

北部新線計画

デンチャイより分岐し、チェンライを経てラオス国境のチエンコーンに至る支線建設計画が進められている。総延長323 km、総工期6年間[13][14]

西部新線計画

ナコーンサワンより分岐し、ミャンマーと接するターク県へ向かうターク=メーソート支線(仮称)が計画中である。ターク方面への鉄道建設は19世紀の鉄道黎明期より既に構想され、20世紀中にもスパンブリー支線を延長する形で検討されたものの放棄された[15][16][17]。21世紀に入り、ナコーンサワンを起点とする現在の計画が具体化し[18][19]、2022年現在、住民との公聴会が重ねられている段階である[20]

ターミナル駅移転

2021年、並行する電化新線ダークレッドラインバーンスー中央(当時) - ランシット間で開業したことに伴い、当線の長距離列車は基本的に同年12月23日より同線経由で運転されると同時に、フアランポーン駅乗り入れも停止となりバーンスー駅発着に切り替わる計画が公表されていた[21]。しかし諸事情により計画は遅れ[22]、2023年1月19日に長距離優等列車を中心にフアランポーン駅発着列車の大半がクルンテープ・アピワット中央駅発着に変更され、ダークレッドラインと同じ新線を走行するようになった。改正後も一部列車はフワランポーン駅発着で残されている(後述)。


  1. ^ 2022年以前はバーンスー分岐駅を名乗った。2023年以降も地上駅に限り、公式サイトなどで旧名で案内される場合がある。
  2. ^ 英語表記Northern lineに由来すると考えられる。タイ国鉄では日本語表記を公表していないが、タイ国政府観光庁(TAT)による日本語資料では北部線と称する例が確認できる[1]
  3. ^ 中国製最新客車の供用開始を受けて2016年11月11日より運行開始。他路線の同グレード列車と同様、定期列車としては最も高額の料金が設定される。なお、2016年までは「ナコンピン号英語版」と呼ばれ、第1,2列車のトップナンバーが与えられていた。
  4. ^ 双単線の場合、同時に同じ方面行きの列車が並走することもある。また、事故による障害発生時や保線作業を行う際など、片側を完全に閉鎖したうえでもう一方に上下列車を走らせるといった柔軟性をもつ。ただし輸送密度の高い路線には不向きとされる。
  5. ^ 新線はもともと三線式で計画されていたが、着工後に計画を白紙に戻し、複々線に設計変更した経緯がある。詳細はSRTダークレッドラインを参照。
  6. ^ パーディパット停車場付近で高架線が断絶している。
  1. ^ a b チェンマイガイドブック(2019)”. タイ国政府観光庁. p. 1. 2023年2月11日閲覧。
  2. ^ 『王国の鉄路』では北線と表記。
  3. ^ a b จังหวัดอยุธยา ประชาชนจิตอาสา พัฒนาปรับภูมิทัศน์ ทำความสะอาดเส้นทางรถไฟ ถวายพระราชกุศล และน้อมรำลึก เนื่องในวันคล้ายวันสวรรคต รัชกาลที่ 5” (タイ語). 首相府広報局 (2019年9月23日). 2022年8月2日閲覧。
  4. ^ 柿崎一郎 『王国の鉄路 タイ鉄道の歴史』 (京都大学学術出版会、2010年)p.25
  5. ^ a b c การรถไฟแห่งประเทศไทย” (タイ語). タイ運輸省. 2022年8月2日閲覧。ちなみに同ページの英語版では西暦1896年開業と記載しているが、タイ仏暦2439年3月は西暦1897年なので明らかに誤りである。
  6. ^ 柿崎一郎 『王国の鉄路 タイ鉄道の歴史』 (京都大学学術出版会、2010年)p.28
  7. ^ Uttrawithi” (英語). タイ国有鉄道 (2016年). 2019年8月3日閲覧。
  8. ^ กรมรางฯ โชว์สุดยอดทางรถไฟยกระดับ 19 กิโลฯ ยาวที่สุดในไทย” (タイ語). Nation_TV(英語版) (2021年12月4日). 2021年12月12日閲覧。
  9. ^ รีวิว 5 ปี รถไฟทางคู่ เฟสแรก ขยับไทม์ไลน์เปิดใช้ตุลาคม 2566” (タイ語). プラチャーチャート・トゥラギット (2021年5月25日). 2021年12月12日閲覧。
  10. ^ อัพเดตรถไฟทางคู่ระยะที่ 1 สร้างช้า 8 สัญญา สั่งเร่งระยะที่ 2 สายเหนือ-อีสาน” (タイ語). プラチャーチャート・トゥラギット (2022年4月28日). 2024年3月9日閲覧。
  11. ^ เร่งเครื่องโค้งสุดท้าย "รถไฟทางคู่" 5 เส้นทางเสร็จปี 66 ทยอยเปิดใช้งาน พลิกโฉมขนส่งทางรางไทย!” (タイ語). Manager Online (2023年7月20日). 2024年3月9日閲覧。
  12. ^ ประวิตร ไฟเขียว EIA รถไฟทางคู่ปากน้ำโพ-เด่นชัย 6.28 หมื่นล้าน” (タイ語). プラチャーチャート・トゥラギット (2022年5月11日). 2022年5月12日閲覧。
  13. ^ รถไฟ “เด่นชัย-เชียงราย-เชียงของ” ทางคู่สายประวัติศาสตร์ ประตูการค้าเชื่อมไทย-อาเซียน และจีนตอนใต้” (タイ語). Manager Online (2021年6月30日). 2021年12月12日閲覧。
  14. ^ ความคืบหน้ารถไฟรางคู่ เด่นชัย - เชียงราย - เชียงของ”. チエンマイ県第3広報局(タイ語版) (2021年7月18日). 2021年12月12日閲覧。
  15. ^ 『王国の鉄路 タイ鉄道の歴史』 p.14、p.49、p.204
  16. ^ 小堀晋一. “タイからビルマへ。鉄道等輸送をめぐる旅その8”. NC nwtwork. EMIDAS. 2023年2月11日閲覧。
  17. ^ 小堀晋一. “進まぬ新線建設、悪化する経営”. NC nwtwork. EMIDAS. 2023年2月11日閲覧。
  18. ^ แม่สอดมีลุ้น‘รถไฟฟ้า’ รฟม.พร้อมลุย รอรัฐไฟเขียว” (タイ語). ターン・セータギット (2021年9月25日). 2023年2月11日閲覧。
  19. ^ เส้นทางรถไฟสายใหม่"นครสวรรค์-แม่สอด"เปิดฟ้าเมืองตาก” (タイ語). ターン・セータギット (2021年10月6日). 2023年2月11日閲覧。
  20. ^ "ตาก"จี้รฟท.เบี่ยงแนวอุโมงค์รถไฟทางคู่ช่วงดอยพะวอ” (タイ語). ターン・セータギット (2022年11月22日). 2023年2月11日閲覧。
  21. ^ ปิดตำนาน! สถานีรถไฟหัวลำโพงยุติการเดินรถทุกเส้นทาง 24 ธ.ค.นี้”. en:Nation_TV_(Thailand) (2021年11月17日). 2021年12月4日閲覧。
  22. ^ 高木聡 (2022年1月16日). “バンコクの「玄関駅」、廃止のはずが列車発着の謎”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社. 2022年5月10日閲覧。
  23. ^ 『王国の鉄路 タイ鉄道の歴史』 p.295
  24. ^ a b c รฟท.ยกเลิกที่หยุดรถ 'แกรนด์ คาแนล-หลักหก-คลองรังสิต' ตั้งแต่ 15 ก.ย. นี้”. Voice TV(英語版) (2020年9月3日). 2021年12月12日閲覧。
  25. ^ เดินรถวันแรก รถไฟศิลาอาสน์-สวรรคโลก หลังปิดมานานจากโควิด-19” (タイ語). Manager Online (2023年7月15日). 2024年3月9日閲覧。
  26. ^ 『タイ国鉄北部線、脱線で丸1日不通』 ニュースクリップ紙 2012年5月29日





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