martial
「martial」とは、「好戦的な」「戦争の」「勇敢な」などのように戦争に関係するもしくは戦意や勇気があることを意味する形容詞としての英語表現である。
「martial」とは・「martial」の意味
「martial」とは、「好戦的な」「勇敢な」「戦争の」などを意味する英語の形容詞である。名詞を修飾し、その名詞の属性を特定の物に限定させる「限定用法」で用いられる。「戦争の」の用法で用いる場合の対義語は「civil」(民間の、文民の)、「好戦的な」という意味で用いる場合の対義語は「pacifist」(平和主義者、平和的な、戦争に反対する)となる。「勇敢な」という用法で用いる場合、やや硬いニュアンスとなるため、インフォーマルな場面では「courageous」や「brave」、「heroic」などを用いる方が好ましい。この語を使った熟語もいくつか存在する。「martial arts」は「武芸」「武道」「武術」を意味する言葉で、転じて「格闘技」という意味も持つ。日本における「武芸」を英訳するにあたって、「戦の技術」すなわち「martial arts」という熟語が生まれた。その後、日本の「空手」や「柔道」、「合気道」といった格闘技を表現する言葉として「martial arts」が用いられるようになる。現在では、日本のみならず韓国の「テコンドー」、中国の「太極拳」や「八卦拳」などの拳法、タイの「ムエタイ」など、東洋にルーツを持つ格闘技は全て「martial arts」と表現される。西洋で生まれたボクシングやレスリングは「martial arts」ではないため注意が必要である。
「martial law」は「戒厳」という意味である。戦争や暴動、自然災害などの緊急事態が発生した際に、警備や防衛のために憲法や法律の効力を一部停止するとともに、行政や司法の権利を軍組織のもとに委ねる事を指す。文民政府が軍組織を統制するシビリアンコントロールの維持を放棄している点で、非常事態宣言と異なる。
「court-martial」は「軍事法廷」もしくは「軍法会議」を意味する熟語である。軍人に対して司法権を行使するための軍組織内部の機関で、犯罪を犯した軍人や軍属を裁き軍紀を維持させることが主な役目となる。現代日本の自衛隊のように軍法会議を置かないケースも存在する。その場合は通常の犯罪者と同様に刑事裁判を行うことが多く、自衛隊の場合は検察庁に送致の上で裁判所での刑事裁判を行うことになっている。
「martial」の語源
「martial」の語源は、ローマの軍神である「マルス」(Mars)から来ている。「マルスの」を意味する形容詞が時を経て、マルスの司る「戦争」そのものを指す形容詞となっていった。さらに、「戦争に相応しい」という意味から「好戦的な」や「勇ましい」という意味に派生していき、現在の用法が確立されたのである。なお、マルスは英語読みでは「マーズ」となり、「火星」の意味も持つ。これはマルスが火星を司っていることに由来している。また、マルスはギリシャ神話における戦神「アレス」と同一視されることもある。「martial」の発音・読み方
「martial」は、「マーシャル」と読む。アクセントは「マ」に置かれる。同じく「マーシャル」と発音する英単語に「marshal」があり、アクセントも共通しているため発音だけではほとんど違いがない。「marshal」は名詞または動詞で用いられるため、形容詞である「martial」とは文法上の使われ方が大きく異なる点で見分けるとよい。なお、「マーティアル」と表記されるケースもあるが、これは誤読である。「martial」の使い方・例文
先述したように、「martial」は名詞を修飾して対象の属性を限定する「限定用法」で用いられる。つまり、「Martial spirit of our unit is high.」(我が部隊の士気は高い)という文では、「spirit」(精神)を「martial」が修飾することで、「戦いの」「精神」という形で「精神」の属性が「戦いの」ものであると限定している。同様に、「He is a martial person.」(彼は武人である)は、「person」(人)という名詞を「martial」で修飾することで「戦いの」「人」と属性を限定しており、「武人」と意訳できる。マルティアリス
マルティアリス | |
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誕生 |
40年? ヒスパニア、アウグスタ・ビルビリス |
死没 |
102年? ローマ |
ジャンル | 風刺詩 |
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マルクス・ウァレリウス・マルティアリス(マールティアーリス、Mārcus Valerius Mārtiālis, 英: Martial, 38年~41年3月1日 - 101年~104年[1])はヒスパニア(イベリア半島)のアウグスタ・ビルビリス(現カラタユー)出身のラテン語詩人。古代ローマ皇帝ドミティアヌス、ネルウァ、トラヤヌスの統治期間にあたる西暦86年から103年の間に発表された12巻のエピグラム(エピグラムマタ、警句)の本で知られている[2]。これら短くウィットに満ちた詩の中で、マルティアリスは町の生活や知人たちのスキャンダラスな行動を明るく風刺し、地方の教育をロマンティックに描いた。マルティアリスは全部で1561篇の詩を書き、そのうち1235篇はエレゲイオンの形式を使っている。マルティアリスは今日のエピグラムの始祖と見なされている。
マルティアリスのエピグラム
マルティアリスの鋭敏な好奇心と観察力はそのエピグラムで明らかである。マルティアリスのエピグラムに対する変わらぬ文学的関心は、文学的な質の高さと同じくらい、その時代の人々の生活の生き生きした描写に起因する。マルティアリスのエピグラムは、マルティアリス自身が関わったこととともに、帝政ローマ期の日常生活の光景と残忍さをありありとよみがえらせる。次のエピグラムはローマ市の生活環境を描いたものである。
- At mihi cella datur, non tota clusa fenestra,
- In qua nec Boreas ipse manere velit.
- -- 第7巻14(5〜6行)。大意「私は窓も閉まらない小さな家に住んでいる。ボレアス(北風)だってこんなところに住みたいとは思わないだろう」。
Jo-Ann Sheltonはこんなことを書いている。「古代の都市では火事は日常的な脅威であった。なぜなら当時は、建築材料に木が使われるのが一般的で、人々も焚き火やオイルランプを使用することが多かったからである。しかし、一部の人々は保険金を得るために自分の家に放火した可能性がある」[3]。マルティアリスの次のエピグラムはそれを告発したものである。
- Empta domus fuerat tibi, Tongiliane, ducentis:
- Abstulit hanc nimium casus in urbe frequens.
- Conlatum est deciens. Rogo, non potes ipse videri
- Incendisse tuam, Tongiliane, domum?
- -- 第3巻52。大意「トンギリアヌスよ、君は200払って家を買ったが、火事で焼けた。この町ではよくあることだ。それで君は10倍もの金を手にした。聞くが、トンギリアヌスよ、まさか君は自分の家に放火などしていないよね?」。
マルティアリスは当時の医者を次のようにあざける。
- Languebam: sed tu comitatus protinus ad me
- Venisti centum, Symmache, discipulis.
- Centum me tetigere manus aquilone gelatae:
- Non habui febrem, Symmache, nunc habeo.
- -- 第5巻9。大意「ちょっと具合が悪いと感じただけなのに、医師のシュンマクスよ、100人の医学生を同伴とは。北風に吹かれて凍えた100の手が私を触るわ触るわ。熱はなかったんですよ、シュンマクス、あなたを呼ぶまでは」。
マルティアリスは、ローマ社会の奴隷への虐待についても触れている。彼は些細な間違いでコックを鞭打つルフスという男をたしなめる。
- Esse negas coctum leporem poscisque flagella.
- Mavis, Rufe, cocum scindere, quam leporem.
- -- 第3巻94。大意「君はウサギが料理されていないと言って鞭を求めた。ルフスよ、君はウサギよりコックを切り分けたいんだね」。
マルティアリスのエピグラムを特徴づけているのは、痛烈で容赦ないウィットのセンスだけではない。好色さもそうである。そのことでマルティアリスは文学史におけるInsult comedy(侮辱コメディ、en:Insult comedy)の始祖という地位を得ている。
- Mentiris iuvenem tinctis, Laetine, capillis,
- Tam subito corvus, qui modo cycnus eras.
- Non omnes fallis; scit te Proserpina canum:
- Personam capiti detrahet illa tuo.
- -- 第3巻43。大意「あなたは若作りしているね、ラエティヌスよ、髪を染めて。ついさっきまで白鳥だったあなたが、突然カラスになった。だが、あなたは誰も欺けない。プロセルピナはあなたの髪が灰色だということをご存じで、あなたの頭から仮面をはぐことになるよ」。
- Narrat te, Chione, rumor numquam esse fututam
- Atque nihil cunno purius esse tuo.
- Tecta tamen non hac, qua debes, parte lavaris:
- Si pudor est, transfer subligar in faciem.
- -- 第3巻87。大意「世間はこう言っている、キオナよ、あなたはまだ男とやったことがなく、あなたのあそこよりきれいなものはない、と。なのに大事なところを隠してお風呂に入るとは何ごとか。慎みがあるのなら、下着は顔へ持っていけ」。(フェラチオはしたことがあるだろうと暗に仄めかしている)
- Liber homo es nimium', dicis mihi, Ceryle, semper.
- In te qui dicit, Ceryle, liber homo est?
- -- 第1巻67。「"あなたは正直者すぎる"と君はいつも僕に言うね、ケリュルス。ということは、ケリュルス、君に逆らって話す人間なら誰でも正直者なんだね?」。
- Utere lactucis et mollibus utere malvis:
- Nam faciem durum, Phoebe, cacantis habes.
- -- 第3巻89。大意「レタスを食べなさい、柔らかいリンゴを食べなさい。君のためだ、ポエブスよ、糞をたれるときのように苦しそうな顔だから」。
評価
マルティアリスの作品はルネサンス期に再発見されて高い評価を得た。ルネサンス期の作家たちはその時代の都市の悪徳と相通じるものをマルティアリスの詩の中に見たのである。
マルティアリスの影響を受けたのは、ユウェナリス、後期古典文学、カロリング朝ルネサンス、フランスとイタリアのルネサンス、スペイン黄金世紀。そしてイギリスやドイツでも、ロマン主義が台頭するまでマルティアリスは人気があった。
脚注
- ^ “Martial”. Oxford Bibliographies (2013年11月27日). 2024年3月1日閲覧。
- ^ “マルティアリスの解説”. goo人名辞書. 2019年12月4日閲覧。
- ^ Jo-Ann Shelton, As the Romans Did: A Sourcebook in Roman Social History (New York: Oxford University Press, 1988), 65.
参考文献
この記事にはアメリカ合衆国内で著作権が消滅した次の百科事典本文を含む: Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Martial". Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 17 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 788-790.
- J P Sullivan. Martial: the unexpected classic (1991)
外部リンク
作品
- Martial on Wikisource
- Liber spectaculorum (in Latin)
- Epigrammata (in Latin) at Bibliotheca Augustana.
- Epigrammaton (in Latin) at The Latin Library.
- Selected Epigrams in translation at Theatre of Pompey: 2:14; 6:9; 10:51; 11:1; 14:29; 14:166
- Some of Martial's more risqué Epigrams translated by Joseph S Salemi
- Selected Epigrams translated by Elizabeth Duke
- Translations from Martial by Franklin P Adams
- Apophoreta (in Latin)
- Xenia (in Latin)
その他
martial
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 14:50 UTC 版)
戦争の、軍事の、軍隊の、武の、火星の、マルスの、などの意味。 マルティアリスの英語名。古代ローマの詩人。 マーシャルアーツ - 中国語の「武術」を英訳した言葉。 軍法会議 (court-martial) 戒厳令 (martial law)マーシャル・ロー - 1998年に製作・公開されたアメリカ映画。原題は『The Siege 』。
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