GEOTAIL
名称:磁気圏観測衛星「GEOTAIL」
小分類:科学衛星
開発機関・会社:宇宙科学研究所(現 宇宙航空研究開発機構(JAXA))
運用機関・会社:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
打ち上げ年月日:1992年7月24日
打ち上げ国名・機関:アメリカ/アメリカ航空宇宙局(NASA)
打ち上げロケット:デルタII
打ち上げ場所:ケープカナベラル空軍基地
国際標識番号:1992044A
GEOTAIL衛星は、名前の通り地球(GEO)の尻尾(TAIL)、地球磁気圏の尾部を探る衛星で、つぎのような経過をへて誕生しました。
1970年代末、米国の研究者が中心になって、4機の衛星による衛星ネットワークで、太陽風からオーロラや放射線帯にいたるエネルギーの流れを、総合的に観測する計画(OPEN計画=OPENは「地球周辺のプラズマの起源」の略称)を練っていました。この動きを受けて、日本では1979年に地球磁気圏の尾部のリコネクション領域の研究を主目的とする、OPEN-J衛星が発足。1983年5月に、NASAからOPEN計画の1機をOPEN-Jと統合する計画が提案され、GTL衛星との統合が実現しました。こうして日米共同の、GEOTAIL衛星のプロジェクトが始まりました。宇宙科学研究所(現 宇宙航空研究開発機構(JAXA))が衛星の開発を担当し、NASAが打上げを担当しました。観測機器は約3分の2が宇宙科学研究所、約1/3をNASAが受け持ちました。
磁気圏の尻尾にたくわえられているエネルギーは、太陽風からもたらされたものです。一方、オーロラや放射線帯粒子のエネルギーはその尻尾に起源を持っています。したがって、GEOTAIL衛星の観測データを生かすためには、太陽風の中や極域の上空などを飛ぶ衛星と同時に観測を行なうことが望まれます。最初、ジオテール衛星は英国の衛星ネットワークと連携するものとして計画されましたが、ヨーロッパのESAやロシアのIKI宇宙研究所の衛星をふくむ大きな国際協力のプロジェクトに発展しました。日米欧露の宇宙科学研究機関が構成する、IACGがこのプロジェクトの調整にあたり、共同観測キャンペーンを展開しました。
GEOTAIL衛星とネットワークを組む衛星は次のようなものです。1994年11月に打ち上げられた太陽風を観測するウインド衛星(NASA)、1995年3月に打ち上げられた尾部高緯度領域を狙うインターボール/テール衛星(ロシアIKI)、太陽観測衛星ソーホー(ESA)、高緯度磁気圏観測衛星ポーラー(NASA)、磁気圏のミクロ構造探査衛星クラスター(ESA)があります。すでに活躍中のあけぼの、ようこうとともに、IACGの衛星との共同研究を進めています。
GEOTAIL衛星は、月までの距離の4倍近い約140万kmまで行って、尾部を観測します。この際の問題は、軌道の遠地点をつねに磁気圏の尻尾の中に停留すること、すなわち「磁尾停留(じおている)」が難しいことです。磁気圏の尻尾はつねに、地球と太陽を結ぶ線の延長上に伸びていますが、衛星の遠地点は地球の公転によって、ずれてしまうからです。このずれを修正するには大量の燃料が必要で、実現は不可能です。
そこで、GEOTAIL衛星は月の重力を利用して軌道を修正する「二重月スイングバイ」技術を使用し、衛星軌道軸の方向を地球の公転と同調して変化させ、遠地点をつねに地球の夜側に停留させることができます。
直径2.2m、高さ1.6mの円筒状で、円筒部の外部には太陽電池が張り付けられています。重量1,009kg(打ち上げ時)で宇宙研が打ち上げたものでは最大です。
長さ6mの磁気計センサー用伸展マスト2本を備えています。マストで磁気計を衛星本体から離すのは、磁気計に衛星本体やサブシステムの機器の影響が出ないようにするためです。また、電磁ノイズを極力少なくする設計にしたため、GEOTAIL衛星は電磁気的にも世界で最もクリーンな衛星になりました。
GEOTAIL衛星には、磁場、電場、プラズマ、高エネルギー粒子などを測定する7つの装置が搭載されています。
2.どんな目的に使用されるの?
GEOTAIL衛星が、観測対象をしている磁気圏や太陽風はプラズマの世界です。地球周辺のプラズマは高温のガスで、それを構成している個々の粒子は、電気を帯びた電子とイオンからなっています。磁気圏で何が起こっているかを調べるためには、これらの電子とイオンがどのようにしてこのような高いエネルギーを持つ粒子がつくられて、加速されるのかを調べることになります。
3.宇宙でどんなことをし、今はどうなっているの?
1992年7月24日から約2年間の遠尾部の探査を終え、1995年2月までは遠地点を約30万kmとして、その後、さらに約20万kmまで下りて、観測を行ないました。
GEOTAIL
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/09 05:00 UTC 版)
磁気圏尾部観測衛星「GEOTAIL」 | |
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所属 | ISAS/JAXA, NASA |
主製造業者 | 日本電気 |
公式ページ | GEOTAIL Spacecraft |
国際標識番号 | 1992-044A |
カタログ番号 | 22049 |
状態 | 運用終了 |
目的 |
地球磁気圏尾部の構造とダイナミクスの研究 ISTP(太陽地球系物理学国際共同観測計画)への参加 |
観測対象 | 地球磁気圏 |
計画の期間 | 30年(実績) |
設計寿命 | 3年半 |
打上げ機 | デルタIIロケット |
打上げ日時 | 1992年7月24日 18:26 (EDT) |
運用終了日 | 2022年11月28日 |
停波日 | 2022年11月28日 14:07 (JST)[1] |
物理的特長 | |
本体寸法 | ⌀2.2m x 1.5m |
最大寸法 | 50m(アンテナ伸展時) |
質量 | 1,009kg |
発生電力 | 340W(寿命末期) |
主な推進器 | RCS |
姿勢制御方式 | スピン安定 |
軌道要素 | |
周回対象 | 地球 |
軌道 | 楕円軌道 |
近点高度 (hp) | 57,000km |
遠点高度 (ha) | 200,000km |
軌道傾斜角 (i) | 29度 |
観測機器[2] | |
EFD |
球形プローブ ワイア・アンテナ |
MGF |
フラックスゲート磁力計 サーチコイル磁力計 |
LEP |
イオン/電子3次元速度関数分析器 太陽風イオン分析器 イオン質量/エネルギー分析器 |
CPI |
高温プラズマ分析器 太陽風イオン分析器 イオン質量/エネルギー分析器 |
HEP |
低エネルギー粒子検出器 イオン/電子バースト検出器 中間・高エネルギーイオン分析器 |
EPIC |
イオン荷電状態,質量・エネルギー分析器 イオンの質量・エネルギー分析器 |
PWI |
周波数掃引型スペクトル分析器 多チャンネルスペクトル分析器 |
GEOTAIL(ジオテイル)は、宇宙科学研究所 (ISAS)とアメリカ航空宇宙局 (NASA) との国際協力の下、アメリカのケープカナベラル空軍基地のロケット射場からデルタIIロケットを使用して、1992年7月24日に打ち上げた磁気圏観測衛星。開発・製造は日本電気が担当した。当初3年半の寿命を見越して作成された衛星であったが、2022年11月28日に停波・運用が終了[3]されるまで30年以上にわたり運用が行われた。
宇宙科学研究所が探査機および搭載観測機器の約3分の2を提供し、NASAが打ち上げロケットと残りの観測機器を提供。
概要
宇宙研究の主力三極(NASA、欧州宇宙機関、ISAS)によるISTP (太陽地球系物理学国際共同観測計画) において、既に打ち上げられていた他衛星群(IMP-8, WIND, INTERBALL, POLAR, EQUATOR-Sなど) と協力し、地球磁気圏尾部 (本衛星の命名の元で地球『地球 (Geo‐)』の『尻尾 (tail)』) の構造と動きを観測する事が目標であった。
磁気圏を幅広い範囲(地球の半径の8〜210倍)でカバーする軌道を持ち、衛星のテレメーター・データはISASの臼田宇宙空間観測所 (UDSC) とNASAやJPLの深宇宙ネットワークが受信。京都大学にてデータがデータベース化され、関係各研究機関にネットワーク越しに提供されている。
2004年12月28日の朝には、過去最大級の太陽系外天体からのガンマ線を観測した。
本衛星は1999年まで月スイングバイにより軌道変更を行っていた。このスイングバイの基礎データはひてんにより収集された。本機では磁気圏尾部を観測するため、まず月スイングバイで遠地点135 - 140万kmという長楕円軌道に移った。さらに磁気圏尾部は太陽の反対側(夜側)に長く伸びていることから月スイングバイを繰り返すことで地球が公転しても遠地点を常に夜側にキープさせていた。このような運用は1995年まで約2年間続けられ、月スイングバイは14回にも達している[4]。その後は遠地点高度を約30万km、20万kmと段階的に落とし、月遷移軌道から観測を続けた。その後、軌道・姿勢制御用燃料を使い果たしたため、月の摂動に任せて様々な軌道を辿っているが、その結果として、予想外の成果も得られている[5]。2022年6月には2基搭載されているデータレコーダが両系とも動作停止し、前述の通り同年11月に停波・運用を停止[1][3]した。
なお本衛星はJAXAで地球観測衛星に分類されてはいるものの、ひてんと同様のかなり高い軌道を飛行している。そのため運用面では月・惑星探査機と同様に扱われており、2010年時点ではあかつき・IKAROS(6月13日までははやぶさも)と一緒にISAS/JAXA相模原の深宇宙管制センターで運用されていた[6]。
データ
あけぼのと共に以下のような多くの技術的チャレンジとその検証が行われた。
- 放射線に強い衛星設計
- 衛星本体から計測器を遠ざけるための伸展技術
- 表面の導電性処理
- EMC(電磁適合性)対応策
これらの技術は、火星探査機『のぞみ』や小惑星探査機『はやぶさ』などに使用されている。
搭載された機器は次の5種。
- 磁場観測機器
- 電場観測機器
- プラズマ観測機器2組
- 高エネルギー粒子観測機器2組
- プラズマ波動機器
脚注
- ^ a b 齋藤 義文. "地球磁気圏尾部観測衛星Geotailの停波について" (PDF). ISASニュース 2023年1月号(No.502). 宇宙科学研究所. p. 6. ISSN 0285-2861. 2024年5月9日閲覧。
- ^ “◆Geotailに搭載された科学観測機器◆”. 宇宙科学研究所 宇宙プラズマグループ. 2024年5月9日閲覧。
- ^ a b “GEOTAILは30年以上にわたる観測運用を終了”. JAXA. 2022年11月28日閲覧。
- ^ “ISASニュース・特集【オーロラの源をさぐる-GEOTAILが見た地球のしっぽ-】” (PDF). ISAS. 2010年7月20日閲覧。
- ^ “Geotail衛星の2008-2012年の観測計画” (PDF). JAXA. 2015年12月4日閲覧。
- ^ “イカロスの新たな冒険” (プレーンテキスト). 日本惑星協会 (2010年6月23日). 2010年7月20日閲覧。[リンク切れ]
参考文献
![]() | この節の加筆が望まれています。 |
関連項目
外部リンク
- GEOTAILのページ (JAXA)
- GEOTAILのページ (宇宙科学研究所)
- 宇宙政策委員会 宇宙科学・探査部会 第1回会合資料 GEOTAILの科学成果と今後期待される成果 2013年3月26日
固有名詞の分類
- GEOTAILのページへのリンク