装甲艦
装甲艦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 01:16 UTC 版)
前弩級戦艦は、装甲艦から発達した。最初の装甲艦であるフランスのラ・グロワールとイギリスのウォーリアは、1860年代に就役したときは、帆走フリゲートに良く似た高い3本のマストと舷側砲を持っていた。そのわずか8年後に登場した最初の航洋砲塔艦(ブレストワーク・モニター)であるイギリス軍艦サーベラスと、その3年後に進水したデヴァステーション級は主砲レイアウトはさらに前弩級戦艦に近づき、かつ限定的ながら初の外洋航行性を備えた砲塔艦であった。両艦とも帆装を持たず、4門の巨砲を2門ずつ砲塔に収めて前後2基配置していた。しかしデヴァステーションは敵の海岸と港湾を攻撃することを任務とする航洋砲塔艦であり、乾舷は極めて低く、外洋での戦闘に必要な耐航性が不足していた。外洋ではその甲板は海水と飛沫で洗われ、砲の操作に悪影響をもたらした。一方、フランスは外洋航行能力を重視して装甲艦から発達した高い乾舷を持つ船体に甲板上の高い位置に単装砲を配する事で外洋での戦闘能力を維持した。各国の海軍は二大海軍国の主力艦の形態を見て、充分な乾舷を持ち、外洋で戦うことのできる、帆装を持ち、砲塔の無い戦艦を建造し続けた。 沿岸攻撃用戦艦と外洋戦艦との境界は、イタリア海軍が1880年に竣工させたカイオ・ドゥイリオ級戦艦が主砲にアームストロング社製「45cm(20口径)前装砲」を採用した事により、これの運用実績をふまえてイギリス海軍も1880年代に発注されたアドミラル級戦艦に至って曖昧なものとなった。同級は装甲の技術的進歩を反映しており、従来の錬鉄の代わりに鉄と鋼鉄による複合装甲を備えていた。主砲口径は12ないし16インチ(305-413 mm)の後装砲で、装甲軍艦の巨砲化の流れに沿っていた。主砲は重さを節約するために露砲塔に取り付けられた。これについて、歴史家の一部はアドミラル級を前弩級戦艦に至るまでの不可欠なステップと考えるが、単に混乱した不成功の設計とみなす歴史家もいる。
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