血縁係数
血縁度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/06/22 16:16 UTC 版)
個体間の遺伝子の共有度合いを血縁度(近縁度とも)という。より厳密には、注目する遺伝子について、集団全体でのその遺伝子の頻度と比べて、共有される確率がどれほど高いかを示す数値が血縁度である。すなわち、「ありふれた遺伝子はほとんどすべての個体に共有されるから血縁度は1である」「同種内であればどの個体もほとんどすべての遺伝子を共有するから血縁度は1である」といった主張は間違いで、集団の平均をベースラインとして差し引いたものとして、血縁度を計算しなければならない。たとえ遺伝子がほとんどの個体で共有されているとしても、あらゆる個体に対して利他的に振舞う戦略は進化的に安定な戦略ではなく、安定になるのは上記の定義での血縁度に基づく利他行動をする戦略である。 上の定義は複雑だが、近似的な「同祖性による定義」を用いることで、簡単に血縁度を計算することができる。この定義では、個体間で、共通する祖先から受け継いだ稀な遺伝子を共有する確率が血縁度となる。同祖性による血縁度は、家系図から計算することができる。 2倍体の有性生殖生物を例に、いくつか計算を示す。ある個体が稀な遺伝子Aを1つだけ(ヘテロで)持つとする。有性生殖によって、子には半分の遺伝子だけが伝わるので、その子が同じくAを持つ確率は0.5である。したがって、親からみた子の血縁度は0.5となる。同様に、子から見た親の血縁度も0.5である。次に、両親とも同じ兄弟姉妹間の血縁度を計算してみよう。先ほどと同様にある個体が稀な遺伝子Aをヘテロで持つ場合、Aが父親に由来する確率は0.5で、その場合に父親が他の兄弟姉妹にもAを伝えている確率も0.5なので、父親由来でAを共有する確率は0.5×0.5=0.25となる。母親由来で共有する確率も同様に計算して0.25なので、兄弟姉妹間の血縁度は0.25+0.25=0.5となる。すなわち、親子間の血縁度と兄弟姉妹間の血縁度は等しい。片親が異なる兄弟姉妹(異母あるいは異父)の場合、親のどちらかを通じて共有する可能性しかないので、血縁度は0.25となる。同じ計算により、いとこの血縁度は0.125となる。
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