発射速度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 05:51 UTC 版)
46cm主砲の装填速度は29.5 - 30.5秒とされている(下記)。つまり最大仰角45度で発砲した場合は、装填角度の3度から45度に砲身を上げるのに4.2秒、下ろすのにも4.2秒かかるため、次弾発射までに単純合計で37.9 - 38.9秒を要する。これが通説における発射速度40秒/発である。想定戦闘距離である30,000mであれば、砲身の俯仰にかかる時間が減るため、34 - 35秒程度(通説による発射速度1.8発/分である)、20,000mであれば32 - 33秒/発程度で発射可能と考えられる。しかし、遠距離射撃においては着弾観測における修正必要度が高いため、この速度で砲撃を行うわけではない。黛治夫によれば、30,000mで射撃すると、弾着するまで50秒かかる。初弾弾着を観測したのち修正を行い、第一射撃から約1分で第二射撃を行う。同様に砲弾の飛翔と観測・修正を繰り返し、3分後に第三射撃を行う。たとえ30 - 40秒/発で装填が完了していても、弾着の修正を行わないまま撃っては意味がないからである。黛は、大和型が第一命中弾を出すまでに必要な時間は5分と計算した。 大和型戦艦の装填速度29.5 - 30.5秒/発は、ビスマルク級戦艦の26秒/発(仰角4度。ただし、装填角度は2.5度)や米新型戦艦のマニュアルにある30秒/発と大差ない。とはいえ、米戦艦ノースカロライナは訓練により、マニュアルの半分である15秒/発を実戦で記録している(ナウル島への艦砲射撃のケース。だが人身事故の発生もあり、瞬発信管装着の際には特に「安全上の見地から、発射時間を遵守」の旨の指示が砲術長より出されてもいる。また機構的には長門型戦艦も16秒/発で装填することは可能)。こうしたことからも、発射速度は訓練度や戦況で左右される可能性のあるものであり、目安でしかない。 現実に、実戦において各国戦艦はカタログ上最速速度ではなく、1分/発程度で砲撃を行っていることが多い。つまり、通説で語られる「米国のアイオワ級戦艦の射撃速度が30秒/発とされているので、40秒/発の大和型戦艦よりも手数で有利」のように、単純に論じられるものではないが、大戦中にそれだけ使用できなかった事も事実である。下記に主砲の発射に要する時間の一例を列記する。 Firing cycle at +3° elevation Open breech : 2.0-2.5sec Move shell loading bogie forward : 3sec Ram shell : 3sec Withdraw rammer + return bogie : 5sec Moving charge cylinder + rammer load position : 3sec Ram charge : 3sec Withdraw rammer : 3sec Return charge cylinder + rammer : 3sec Close breech : 2sec Recoil and run-out : 2.5-3sec Total : 29.5-30.5sec Elevating speed max : 8°/sec Training speed max : 2°/sec
※この「発射速度」の解説は、「大和型戦艦」の解説の一部です。
「発射速度」を含む「大和型戦艦」の記事については、「大和型戦艦」の概要を参照ください。
「発射速度」の例文・使い方・用例・文例
- 発射速度
- 発射速度のページへのリンク