病因学
病因論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 01:14 UTC 版)
この病態は、ガングリオシドとして知られる酸性脂様物質の生減成(分解)を触媒するヘキソサミニダーゼAと呼ばれる酵素の活性不足により起こる。ガングリオシドは乳幼児期における脳の発達に伴い急速に生合成され、生減成(分解)される。テイ=サックス病の患者や保因者(英語版)はヘキソサミニダーゼAの活性を測定する簡単な血液検査で判別することができる。本症に罹患した児が生まれるためには両方の親が保因者であらねばならない。希望者には、妊娠中に出生前検査をすることも可能である。 医学的根拠について詳述すれば、テイ=サックス病は常染色体潜性の遺伝形式を取る:もし両親ともに保因者であれば、一回の妊娠につき25%の確率で患児が生まれる事になる。 この病気は、ライソゾームの酵素であるβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼAのα-サブユニットをエンコードしているHEXA遺伝子を含む15番染色体の変異により生じる。この酵素は脳や神経細胞にあるGM2ガングリオシドからのN-ガラクトサミンを除去するのに必要である。HEXA遺伝子に関しては90以上の変異が確認されている。この変異には、塩基対の挿入、塩基対の欠損、再配列変異、点突然変異があり、これらは全てタンパク合成に異変をもたらす。例えば、エクソン11での4塩基対の挿入はHEXA遺伝子の読み込みの変異を引き起こし、3塩基対の欠損ではポジション304のタンパク合成におけるアミノ酸の一種、フェニルアラニンの脱落が生じる。アミノ酸180におけるG→Cの点突然変異は、ポリペプチドの(翻訳の)終止を引き起こす、UAC→UAGというコドンの変異をもたらす。アミノ酸170でのG→Aの点突然変異は、アラギニンの代わりにグルタミンを造り出す、CGA→CAAやCGG→CAGというコドンの変異をもたらす。イントロン12の再配列部位の中のG→Cの変異もまた確認されている。 この変異では、制限酵素Ddelの認知場所を作ることにより、異常なスプライシング(再配列)や異常なmRNA種の産生をもたらす。
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