滋賀県の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 02:13 UTC 版)
特にこのような例が顕著に見られるのが滋賀県である。滋賀県では、2006年(平成18年)の滋賀県知事選挙で当選した嘉田由紀子が淀川水系ダムの建設計画凍結・見直しを訴え、県内にある施工中のダム六箇所(丹生、大戸川、永源寺第二、栗栖(後の芹谷)、北川第一、北川第二)を凍結もしくは凍結要望した。この中には国土交通省所管の大戸川、水資源機構所管の丹生、農林水産省所管の永源寺第二ダムがあり、国営事業といえども例外なしとして凍結を強く迫った。これは長野県が国土交通省所管の戸草ダム(三峰川)を脱ダムの対象にしなかったのとは異なり、ダム反対派からは喝采を浴びた。 知事の施政方針に対し下流受益地にあたる山田啓二京都府知事や、桝本頼兼京都市長はこれに理解を示し、凍結に対し賛成の意思を送っている。柿本善也奈良県知事(当時)も淀川水系のダム凍結には肯定的であった。財政が苦しい下流自治体にとっては、自らが恩恵を受けるダムの直接的効果と支出するダム建設費用のバランスに苦慮している。一方ダム建設を予定している河川を流域に持つ上流受益地の大津市・彦根市等の県内主要自治体や、丹生ダム建設を切望していた余呉町などの高時川流域住民が反発し、当初の予定通りの計画遂行を求めた。 知事は当初、財政的理由からもダム建設に否定的な答弁を議会で行ったが、「治水対策の瑕疵(かし)によって1人でも死者が出たら知事を辞任する」とも発言しており、治水に対する並々ならぬ覚悟を示していた。この間に平成18年7月豪雨による長野県の被害もあってか多少柔軟姿勢に転じ、「他に有効な治水対策が無い場合はダム建設もあり得る」として地元との対話を重視する姿勢を見せた。また2007年(平成19年)には従来のダム凍結・見直しの方針はダムを全部否定するものではないとして、凍結を表明した県営ダム三箇所のうち北川第一ダム(北川)や芹谷ダム(芹川)について、治水対策には「有力な案として計画」していく方向となった。 これに対して、マスコミ各社は一斉に「マニフェスト違反」として集中砲火を浴びせた。マスコミの報道については後述する偏向的な報道と指摘する向きもあるが、この政策面の変化については、2007年(平成19年)度予算の採決を控え、県議会で多数派を占める自民党県議やいままでの計画を推進してきた県職員の意向が背後にあった。したがって、知事本人としては後援会の会報では「凍結・見直しのためにも現在計画されているダム関連予算を付ける必要があった」と述べている。2007年での滋賀県議会議員選挙において知事は自身の母体でもある対話でつなごう滋賀の会公認・推薦候補(ダム慎重派・反対派が多い)を応援し、自民党を惨敗に追い込んだ。 その後一時はダム容認に姿勢が傾きかけたが、流域治水対策の進展も踏まえつつ、知事は2007年夏以後は、すべてのダムに関しては慎重姿勢を貫いている。国直轄事業である大戸川ダムに関しても淀川水系全体における判断が必要との下で、京都府知事・大阪府知事とも連携して、国の河川整備計画への意見書を2008年内に提出するとした。さらに、2008年10月には流域治水対策の成果の反映とも想定されるが、滋賀県内の河川の危険度を分類し、また、河川整備に対する予算が近年激減している現状から、芹谷ダムを中止するという方向性が報道されている。
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