母音記号一覧表
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/01 05:11 UTC 版)
現代ヘブライ語では発音上、/a/, /e/, /i/, /o/, /u/ の5つの母音が区別されているが、ニクダーの記号ではさらに多くの母音が表記上区別されている。下の表でそれを示す。 記号の名称ヘブライ語転写の例記号の形現代ヘブライ語の発音ティベリア式発音同音異綴/補助表記(マレー)Unicode備考IPA転写近似英語音IPA転写ヒリックחִירִיקhiriq ִ [i](短母音) i seek [i(ː)] i / í יִ U+05B4 (HIRIQ)転写は ◌́ 付きが長音を表す ツェーレーצֵירֵי, צֵירֶהtsere, tseirei ֵ [e̞](長母音) e men [eː] ē י, ֵה, ֵאֵ U+05B5 (TSERE)マレーは日常語では ei [e̞i] になる セゴールסֶגוֹלsegol ֶ [e̞](短母音) [ɛ(ː)] e / é י, ֶה, ֶאֶ U+05B6 (SEGOL)転写は ◌́ 付きが長音を表す。יֶ は日常語では ei [e̞i] になる パタフ・グヌヴァפַּתָּחpatach g'nuvah חַ [aħ] ach far [aħ] aḥ - U+05B7 (PATAH)「盗まれたパタフ」の意。語末のみ。子音の後ではなく前に母音を挿入する הַּ [ah] ah [a] ah - עַ [aʕ] a‘ [aʕ] a‘ - パタフפַּתָּחpatach, patah ַ [a](短母音) a [a(ː)] a / á ה, ַאַ U+05B7 (PATAH)転写は ◌́ 付きが長音を表す カマツ(・ガドル)קָמַץ (גָּדוֹל)kamatz/kamats (gadol) ָ [a](長母音) [ɑː] ā ה, ָאָ U+05B8 (QAMATS)「(大きい)カマツ」の意。下の条件以外の場合 カマツ・カタンקָמַץ קָטָןkamatz/kamats katan [o̞](短母音) o cone [ɑ] o - U+05B8 (QAMATS)「小さいカマツ」の意。ハタフ・カマツの前か、無強勢音節内の無母音の子音の前 ホラムחוֹלָםholam ֹ◌ ※ [o̞](長母音) [oː] ō וֹ , ◌ֹה, ◌ֹא◌ U+05B9 (HOLAM (HASER)) (ֹ)(ゼロ幅文字)※見出しでは便宜的に ◌ を土台にしている。現代語では同音語の区別に用いる。וֹ◌ では ו の上に点を打つ クブツקֻבּוּץkubutz/kubuts ֻ [u]短母音 u cool [u(ː)] u / ú - U+05BB (QUBUTS)現代語では同音語の区別に用いる シュルクשׁוּרוּקshuruk וּ◌ [u](長母音) [uː] ū וּה, ◌וּא◌ ו + U+05BC (DAGESH, MAPIQ, OR SHURUQ) 文字の下に2つ縦に並んだ点はシュヴァー(「空虚」の意)。基本的に喉音 (א, ה, ח, ע, ר) に付いて、短い曖昧母音として発音され、また組み合わされた母音を非常に短くする(最短母音)。ハタフは「さらわれた」の意。シュヴァー・ナアשְׁוָא נָעshva na ְ [ə] e - [ə] ə - U+05B0 (SHEVA)「動くシュヴァー」の意。語頭、ダゲッシュ・ハザク付き文字、シュヴァー・ナフの直後 シュヴァー・ナフשְׁוָא נָחshva nach [ʔ] ’ / Ø - [ʔ] ’ / Ø - U+05B0 (SHEVA)「休むシュヴァー」の意。条件は上記以外。ただし現代語では語頭およびダゲッシュ・ハザク付き文字でも無母音化 シュヴァー・メラヘフשְׁוָא מְרַחֵףshva merachef ※活用や曲用によって有音化したり無音化したりするもの。 U+05B0 (SHEVA)「ふらふらするシュヴァー」の意。シュヴァー・ナアの条件以外の、短母音付き文字の後。ダゲッシュ・カル付き文字は後続しない シュヴァー・ガイヤーשְׁוָא גַּעְיָהshva ga‘ya בְֽ ※ ※短くされた母音が元の長さにもどることを表す。 U+05B0 (SHEVA) + U+05BD (ְֽ)※見出しでは便宜上 ב を土台にしている。「唸るシュヴァー」の意。縦棒はメテグ (מֶתֶג)。 ハタフ・ヒリックחֲטַף חִירִיקhataf hiriq בְִ ※ [i] i it [ĭ] ĭ - U+05B0 (SHEVA) + U+05B4 (HIRIQ) (ְִ)※見出しでは便宜上 ב を土台にしている。シュワーとヒリックの組合せ。非常に稀 ハタフ・セゴールחֲטַף סֶגוֹלhataf segol ֱ [e] e men [ɛ̆] ĕ - U+05B1 (HATEF SEGOL)シュワーとセゴールの組合せ ハタフ・パタフחֲטַף פַּתָּחhataf patach ֲ [a] a far [ă] ă - U+05B2 (HATEF PATAH)シュワーとパタフの組合せ ハタフ・カマツחֲטַף קָמָץhataf kamatz ֳ [o] o cone [ɑ̆] ŏ - U+05B3 (HATEF QAMATS)シュワーとカマツの組合せ 以下は主に子音の違いを表す記号だが、ラフェの一部は母音の長短を表している。シンשׁי״ן (ימינית)shin dot שׁ [ʃ] sh shop [ʃ] š - ש + U+05C1 (SHIN DOT)「右(点)のシン」の意。ש が sh であることを表す スィンשׂי״ן (שמאלית)sin dot שׂ [s] s sour [s] s - ש + U+05C2 (SIN DOT)「左(点)のスィン」の意。ש が s であることを表す。元来は ś [ɬ] の音 ダゲッシュ・カルדָּגֵשׁ קַלdagesh kal בּ [b] b bun [b] b - U+05BC (DAGESH, MAPIQ, OR SHURUQ)「弱いダゲッシュ」の意。破裂音を表す גּ [g] g gasp [g] g - דּ [d] d admit [d̪] d - כּ, ךּ [k] k kangaloo [k] k - פּ [p] p pass [p] p - תּ [t] t talent [t̪] t - ダゲッシュ・ハザクדָּגֵשׁ חָזָקdagesh hazak ּ ※長子音化(二重子音化)を表す。喉音 (א, ה, ח, ע, ר) には原則付かない。 U+05BC (DAGESH, MAPIQ, OR SHURUQ)「強いダゲッシュ」の意。 マピクמַפִּיקmappiq הּ [h] h high [h] h - U+05BC (DAGESH, MAPIQ, OR SHURUQ)語末のみ。補助記号ではなく子音であることを表す אּ [ʔ] ’ - [ʔ] ’ - ラフェרפהrafe, raphe בֿ ([v]) (v) vote [v] w - U+05BF (RAPHE)イディッシュ語等で見られる。ダゲッシュ・カルの反対。摩擦音を表す גֿ ([ɣ]) (gh) - [ɣ] ḡ - דֿ ([ð]) (dh) this [ð] ḏ - כֿ, ךֿ ([χ]) (kh) - [x] ḵ - פֿ ([f]) (f) fill [f] f - תֿ ([θ]) (th) thin [θ] ṯ - ֿ ※短子音化(単子音化)を表す。 U+05BF (RAPHE)イディッシュ語等で見られる。ダゲッシュ・ハザクの反対 הֿ [Ø] Ø - [Ø] Ø - U+05BF (RAPHE)イディッシュ語等で見られる。無音化。マピクの反対 אֿ - 注 1:「記号の形」列では、"ש", "ו", "ה" 等のある欄は特定のニクダーとの組合せが決まっているため、そのまま表示している。 注 2:「同音異綴/補助表記(マレー)」列は、同音を示す別綴りであり、ニクダーを略す表記(後述)において子音を補助記号とする場合にも用いる。各呼称は「記号名・マレー」(מָלֵא「満たされた」)。 注 3:母音の長短は、現代ヘブライ語の日常会話では発音上区別されない。 注 4:ダゲッシュ、シュルク、マピクは、Unicodeでは同じ記号を当てられている上、見かけもほぼ同じだが、別の記号である。 注 5:記号の名称の日本語表記は、日本ヘブライ文化協会 『現代ヘブライ語辞典』(2006) ISBN 978-4990208318 を参照した。
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