天体運動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/18 01:33 UTC 版)
潮汐は、潮汐力によって引き起こされる。潮汐力は、重力場の強さが場所により異なることで生まれる二次的な力である。 海洋潮汐の原因となる潮汐力は、月や太陽などの天体によって地球のまわりの重力場に勾配が生じることで起こる。つまり、天体との距離の2乗に反比例して引力が弱まることと、地球上での場所が違うと天体からの引力の方向も異なることに起因する。 地球は重力場の中を自由落下している。そのため、外部の重力と逆向きの慣性の力が生まれ、地球全体としては重力場を感じない。しかし、地球の重心から離れた地点の重力場が地球の重心と異なる場合、その差分に応じた重力場があるように見える。 つまり、月の真下の海面では、月に近いため、地球の重心より強い重力場が働いており、より強く月にひきつけられている。逆に、月の反対側の海面では、地球の重心より弱い重力場しか働いていない。そのため、残りの地球のほうがより強く月にひきつけられ、海は取り残される。これらの位置では、上向きの潮汐力となる。 また一方で、その中間、つまり月から90度離れた位置の海面は、月から見て斜め方向であるため、重力場はわずかに地球中心向きの成分を持つ。このため、下向きの潮汐力が生まれる。この潮汐力の大きさは、月の直下および反対側で受ける潮汐力のちょうど半分である。 月のある側の海水面が上昇することは理解できても反対側の海面が盛り上がることは理解しづらいが、直感的には次のような説明で納得できる。一直線に並んだ月-海水の塊-海水の無い地球塊-海水の塊を考える。回転運動では地球は常に月側に自由落下しているから、落下速度は月側の海水塊が最高で、地球塊が中間、月の反対側の海水塊が最低となる。仮に地球が静止した系で考えると、月の真下とその反対側では地球の重力が弱くなり、月が水平線の近くに見える場所では重力が強くなると見なせる。よって地球塊から見ると、月側とその反対側の海水塊は共に地球塊から遠ざかることになる。地球塊は重力で海水塊を引き付けているので海水が地球から離れることはないが、その分海水が盛り上がる。 月の公転軌道は地球の赤道に対して傾いているため、同じ日の干潮・満潮でも午前と午後で同じ場所に働く潮汐力は異なり、日潮不等が生じる。さらに月の公転軌道が地球の公転軌道に対して傾いていること、また月や地球が楕円軌道を描いて公転しており、地球や太陽との距離が一定ではないことなどによっても、干満の差や日潮不等の大きさは変化する。 引力は天体からの距離の2乗に反比例するので、その差分で決まる潮汐力は距離の3乗に反比例する。また、これらの力は天体の質量に比例する。地球から太陽までの距離は月までの距離の約390倍あり、太陽の質量は月の質量の約2700万倍ある。これから計算すると、太陽の引力は月の引力の約180倍であるが、太陽の潮汐力は月の潮汐力の約0.45倍にしかならず、月の潮汐力の影響が大きい。月の潮汐力を太陰潮、太陽の潮汐力を太陽潮という。火星が地球に最も近づいた時の火星による潮汐力を計算すると月の約100万分の1であり、無視することができる。他の惑星についても同様である。
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