と‐そう〔‐サウ〕【塗装】
塗装
金属加工における塗装の目的は、酸化しやすい金属素材を大気から遮断して錆を防ぐこと、塗膜の持つ弾性により表面を保護すること、美観のための着色など様々であり、かつ複数の目的を持つ場合が多い。
塗料の構成は、塗膜形成主要素、塗膜形成助要素、顔料、溶剤に分けられ、このうち顔料とは着色を目的に加えられる、溶剤に不溶性の微粉末である。顔料は成分により着色のほか錆止め、導電性の付与、機械的性質の改善なども行える。このように、塗膜に美観や保護以外の機能を加えて使用する塗料を特に機能性塗料とも呼んでいる。
塗膜形成主要素は、塗料の主成分であり天然樹脂・油から各種合成樹脂・油ヘ切り替わりつつある。塗膜形成助要素は、可塑剤、乾燥剤、増粘剤などの添加剤であり、主要素の性質を補う目的で使用される。溶剤は塗膜形成要素を溶解又は分散させて流動させるための成分であり、有機溶剤や水が使用される。
塗装の種類
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被塗物と塗料噴霧装置の間に静電圧をかけ、塗料に帯電させて塗着させる。ミストの発生が少なく、仕上がりが美しく、均一性に優れる。欠点としては、塗装面以外への入り込みが起こりやすいことがある。 | 自動車など車輌、家電製品、事務機器など幅広い。 工業ライン生産に向く。 |
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溶剤を使用せず、固体の塗料微粉末を塗装し、塗料の融点以上に加熱して被塗物表面に溶着する方法。 有機溶剤の毒性や公害を回避できる。 1回の塗装工程で厚い塗膜が得られる。 |
家電製品や自動車、建材など。工業ライン生産に向く。 | |
電着塗装 | 電気めっきと同様の方法で、金属ではなく樹脂イオンを被塗物表面に生成する方法。複雑な形状であっても均一な塗膜が得られる。 | 自動車ボディの下塗り。 |
焼き付け塗装 | 溶剤を揮発させ、塗料を固化する際に熱を加え乾燥を早める塗装方法。密着性、耐候性に優れた塗膜が得られる。 装置が大がかりになる欠点がある。 |
自動車ボディの上塗り、調理用具への耐熱性塗装など。 |
用語解説
塗装
塗装
塗装
塗装
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/21 18:44 UTC 版)
塗装(とそう、英語: coat、painting、paintwork)は、材料の表面を塗料の皮膜で覆う表面処理の一つである。
概要
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ペンキを塗る前(左)と後(右)の影野駅駅舎
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表面加工材料である塗料によって、金属、木材、コンクリート、プラスチックなどの固体表面に塗膜と呼ばれる安定した塗料の薄膜を形成させる加工法を塗装という[1][2]。
塗料の役割(機能)は、大きく、1.保護、2.美観の付与、3.機能の付与の3つがあるとされる[1]。
- 保護
- 美観の付与
- 機能の付与
製造業における生産方法のように工場において塗装を行う工業塗装と、建築塗装のように構築物が立地する現場において塗装する現場塗装がある[3]。 なお、塗料は塗装方法により、はけ塗り用、ローラー塗装用、スプレー塗装用、浸漬塗装用、電着塗装用、カーテンフローコーター用などに分けられる[1]。また、塗装工程により、下塗塗料(プライマー)、中塗塗料、上塗塗料、下地塗料、目止め塗料に分けられる[1]。さらに塗装する素材によって鉄鋼用塗料、木工用塗料、プラスティック用塗料等に分けられる[1]。
塗装工程
塗装においては、塗装をする対象物の塗装面の材質に合った塗料を選ぶ必要があり、場合によっては、塗料の性質に合うように塗装面にシーラーを施すなどの下処理が必要となる[4]。なお、塗装面と塗装面以外の部分に汚染や損傷を与えないようにしておくことを養生という[5]。
塗装工程は、塗装前処理、塗装、乾燥の3つの単位で構成され、塗り重ね(下塗り、中塗り、上塗り)を繰り返す場合はこの単位を繰り返すが、下塗りが終わって中塗りと上塗りを行う際には前処理が省かれることもある[1]。塗料を被塗装物の表面に付着させることを塗布、それを塗膜にする過程を乾燥と呼び、その全プロセスを塗装ということもある[2]。
主な塗装方法
液状のまま塗布する塗装方法
- 刷毛塗り塗装(はけ塗り)
- 塗料をその種類にあった刷毛で、はけ目が正しくなるように塗る方法[1][5]。
- ローラー塗装(ローラーブラシ塗り)
- スポンジ状ローラー(ローラーブラシ)で塗る方法[1][5]。
- カーテンフローコーター塗装
- スリットからカーテン状に流して塗る方法[1]。
- ロールコーター塗装
- ゴムロールに塗料をつけたものを転写して塗る方法[1]。
- 浸漬塗装(浸せき塗り)
- 塗料タンクに被塗物を漬けてから引き上げて塗る方法[1]。さび止め塗料を塗る方法としても用いられる[5]。俗称どぶ漬け塗装とも。日本ではプラスティーディップ(Plasti Dip)とも言われるが、これはPlasti Dip International社の登録商標である。
- 電着塗装
- 水溶性塗料を電気泳動の原理を利用してメッキのように塗る方法[1]。
霧状にして塗布する塗装方法
- エアースプレー塗装
- 圧縮空気で塗料を微粒化して塗る方法[1]。
- 静電スプレー塗装(静電塗装)
- 微粒化した塗料を負極(-)、被塗物を正極(+)に荷電して電気的に塗布する方法[1]。
- エアレススプレー塗装
- 吹付塗装の一種で、高圧空気を使わず、塗料を高圧にしてその圧力で噴霧する方式[6]。圧力と加温を併用する場合もある[1]。
- 静電エアレススプレー塗装
- エアースプレー塗装に静電荷電を併用して塗布する方法[1]。
- 粉体スプレー塗装
- 粉体粒子に荷電して塗布する方法[1]。
塗装方法の技術革新
電着塗装
電着塗装は電極と被塗物にそれぞれ違う極性の印加電圧を負荷して、その間に塗料を満たした状態で直流電流を流し塗装する方法。被塗物を陽極にして塗装する方式をアニオン電着、陰極にして塗装する方式をカチオン電着という[1]。
電着塗装は19世紀初めには発想があり、第二次世界大戦以前に実用化が試みられたものの実用化には至らなかった[1]。アメリカでは1961年にフォード社がアニオン電着塗装の特許を出願した[1]。日本では1964年(昭和39年)に初めて実用化された電着塗料がアニオン型だったが、塗膜の耐食性などが十分でなく、1977年(昭和52年)頃にはほぼカチオン型に転換していった[1]。
粉体塗装
粉末状の樹脂(ポリエステル等)からなる塗料を、静電気により被塗物に付着させた後、加熱溶解して塗膜を形成する。静電塗装や焼付け塗装に似ているが、塗料はあくまでも固体の粉末であり、また塗膜の硬化は冷却によるもので熱硬化反応を用いていない。
紫外線硬化塗装
紫外線硬化樹脂をベースとした塗料を使い、被塗物に付着させた後、紫外線を照射し硬化させるもの。熱硬化や乾燥硬化ではないので、乾燥炉を必要とせず、現場での作業に好適でもある。
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 大沼清利「国立科学博物館 技術の系統化調査報告 第15集 塗料技術発展の系統化調査」 国立科学博物館 2023年7月22日閲覧。
- ^ a b c 武井昇「最新塗料講座(第I講)」 一般社団法人色材協会 2023年7月22日閲覧。
- ^ 工業塗装とは? 神奈川県工業塗装協同組合 2023年7月22日閲覧。
- ^ シーラーの外壁塗装における役割とは?種類と特徴・費用について紹介
- ^ a b c d 11.建具造作工事 一般財団法人住宅金融普及協会 2023年7月22日閲覧。
- ^ http://www.washin-chemical.co.jp/coatingguide/cguide_03coater.html#02
関連項目
- スプレー
- 表面処理
- 溶射
- 蒸着
- スパッタリング
- めっき
- 漆器
- スウェーデン規格(スウェーデン規格協会、SIS:Swedish Standard Institute)
- ちりめん塗装
- 梨地塗装(なしじ塗装)、塗装面が果実の梨に表面に似る仕上げ
- 縮み塗装(ちぢみ塗装)、塗装面にしわが撚る仕上げ
- 養生
- クレージング
- 塗着効率
外部リンク
塗装
「塗装」の例文・使い方・用例・文例
- 父が壁の塗装をしたら,家は新築同様になった
- それはカーテン塗装の方法で塗られた。
- これらの小さな物体は転がし塗りによって塗装された。
- この塗装は簡単に磨きがきく。
- 吹き付け塗装の新しい装置
- 塗装の表面を磨け。
- 塗装時間が必要
- 家を塗装している。
- 私はその椅子を塗装した。
- 私たちはこれから塗装工程に入ります。
- 私はその塗装を剥がします。
- この車は塗装する必要がある。
- 私はその塗装を剥がす。
- 彼はこのエリアは塗装しない。
- 彼はこの部分は塗装しない。
- その壁の塗装が剥がれている。
- 塗装は剥げやすいため、こすり洗いや塩素系洗剤のご利用やお控え下さい。
- 彼らのボートは塗装する必要がある。
- 塗装で部屋は明るくなるであろう
- 熱で塗装できなかった
塗装と同じ種類の言葉
品詞の分類
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