同人マーク
同人マーク
【英】doujin-mark, dojin-mark
同人マークとは、作家が一定範囲の二次創作活動を認める意思表示のマークとして用いられる記号である。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンが運営する「commonsphere」におけるプロジェクトが策定した。
同人マークは、作家・漫画家が自らの作品に掲示することで「この作品を題材に用いた二次創作を行ってもよい」との意向を明示するという用途が想定されている。許容範囲は同人誌即売会における二次創作の配布とされ、デジタルデータの配布は対象外となる。
同人マークはクリエイティブコモンズのライセンスとは異なり、原作自体の複製や改変については取り扱わない。すなわち同人マークは原作のコピーの配布を許容するものではない。
同人マークを策定した背景には、日本がTPP(環太平洋経済連携協定)に日本が参加することで実現される可能性がある「著作権の非親告罪化」への懸念があるという。著作権が非親告罪になると、第三者が二次創作やパロディ作品を著作権侵害で起訴できるようになり、マンガ・アニメなどの分野の下支えとなってきた盛んな二次創作活動が萎縮してしまうのではないかと懸念されていた。同人マークを使用して権利者があらかじめ許諾の意思表示を行うことで、二次創作も安心してできると期待できる。
参照リンク
「同人マーク(仮)」のデザイン案の募集のお知らせ - (commonsphere 2013年7月16日)
「同人マーク」のデザイン決定のお知らせ - (commonsphere 2013年8月16日)
同人マーク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/06 04:29 UTC 版)
同人マーク(かすり作) | |
作者 | 赤松健発案、コモンスフィア策定 |
---|---|
バージョン | 1.0 |
公開元 | コモンスフィア |
リリース日 | 2013年8月27日 |
コピーレフト | なし |
ウェブサイト | http://commonsphere.jp/doujin/ |
同人マーク(どうじんマーク)は、原作者が自身の作品に付して、その作品の二次創作による同人誌の作成と、同人誌即売会での無断配布を有償・無償問わず許可する[1]意思をあらかじめ表明するためのマーク[2]。
日本におけるクリエイティブ・コモンズの活動母体であるコモンスフィアによって公開されたライセンスであるが、元作品の全部または一部をそのまま複製(デッドコピー)する形での配布は認めず、二次創作のみ許容する点がクリエイティブ・コモンズ・ライセンスと異なる[3][4]。
経緯
同人マークが考案された発端は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉で著作権侵害が非親告罪化される可能性について言及された[5]ことにある。現行の著作権法では、著作権侵害は権利者(漫画家、出版社など)による告訴を必要とする親告罪となっている(ファンなどによる代理で告訴することはできない)。なおこの非親告罪化に関して、「TPP関連法案国会審議」に基づく同法の改正案が可決成立し、非親告罪化規定が、TPP11協定発効日である2018年12月30日から施行される事が決定した[6]。
これがもし全面的に非親告罪化となった場合には、第三者による告発がなされた場合など(たとえ権利者が黙認したいケースでも)訴訟に発展するなどの弊害が懸念されたため、これを回避するべく漫画家の赤松健が発案したものである[7][8][9]。
2013年8月、赤松は『週刊少年マガジン』(39号)から新連載の自作『UQ HOLDER!』にて、本マークを自ら試用・表示し、同作をライセンス許諾した。
同年10月、マガジンと同じ講談社の他誌(月刊アフタヌーン)で連載する『シドニアの騎士』(弐瓶勉)単行本第11巻のオビにおいて赤松以外の著作物では初めて同人マークが付けられた[10]。
またマッグガーデンが発行する『キミと死体とボクの解答』(ヨゲンメ)単行本第2巻(2013年12月10日)から同人マークが付けられるなど、講談社以外の作品にも広まりを見せている[11]一方、漫画以外の媒体(アニメ、ライトノベルなど)で許諾された事例は長く確認されていなかったが、2014年8月5日にDeNAが公開したニュースアプリ『ハッカドール』の公式サイトでも同人マークが表示されるようになった[12]。ゲームアプリでは、2014年8月にApplibotがリリースした『グリモア〜私立グリモワール魔法学園〜』において、公式サイトに同人マークが表示されている[13]。
特徴
同人マークの許諾条件や同人マークのFAQ説明にある通り、デジタルの二次創作作品を(有償無償問わず)インターネットで公開することに関しては、許諾範囲には含まれない[14]。
同人誌即売会当日の会場以外(同人ショップなど)での委託販売や、中古販売、通販に関しても許諾範囲には含まれない。そのほか、デジ同人、コスプレ、フィギュア、同人アニメ作品、同人音楽作品などについても許諾範囲には含まれない[15]。
上記の許諾範囲に含まれない内容に対しては、禁止等の意思表示をする効果はなく、あくまで従来通りの扱いとなる[16]。
また、過剰な性的表現などを伴う表現は禁止されている[17]。
各々の許諾範囲に違反とみなされた場合は、同人マークの「ライセンスの終了および配布禁止等」[18]によってライセンスが失効する。
デザイン
意匠は、創作を表すペン先と、OKを表す丸が組み合わされたデザイン[19]。講談社公認の公募によって寄せられた多数のデザインの中から、レイアウトの分かりやすさと、海外での認知性やJISマークを想起させる日本らしいデザインが評価され、採用された[19]。
備考
福井健策は同人マークを「苦肉の策」と発言したことがある[20]。
脚注
- ^ ただしデジタルデータは除く。
- ^ ITmedia、2013、「2次創作同人認める「同人マーク」デザイン案、講談社公認で募集」『ITmediaニュース』2013年7月18日12時17分(2013年8月18日取得、https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1307/18/news057.html)。
- ^ R25編集部、2013、「二次利用には「同人マーク」」『web R25』2013年7月23日7時00分、Yahoo! Japan(2013年8月18日取得、http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130723-00000002-rnijugo-sci)。
- ^ 岡田有花、2013、「赤松健さん流「TPP対策」・2次創作向け新ライセンス提案、次回作は「エロ同人・アニメ化フリー」に?」『ITmediaニュース』2012年12月13日13時30分(2013年8月18日取得、https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1212/13/news055.html)。
- ^ BLOGOS編集部(2011)、吉川(2011)、衆議院(2012)、参議院(2012)など。
- ^ “平成30年12月30日施行 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の発効に伴う著作権法改正の施行について | 文化庁”. www.bunka.go.jp. 2018年11月8日閲覧。
- ^ 岡田有花、2013、「「警察の萎縮効果狙う」 赤松健さん、2次創作同人守るための「黙認」ライセンス提案」『ITmediaニュース』2013年3月28日16時20分(2013年8月18日取得、https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1303/28/news093.html)。
- ^ 江端智一、2013、「同人誌を売るコミケを守ることが、なぜ日本の国益と世界平和につながるのか?」『Business Journal』2013年8月18日7時59分、サイゾー(2013年8月18日取得、http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20130818-00010002-biz_bj-nb)。
- ^ 発案者が赤松氏である旨は、増田(2013)参照。
- ^ 弐瓶勉『シドニアの騎士』に「同人OK」マークが付きました! - 、アフタヌーン公式サイト「モアイ」、2013年10月23日8時45分(2013年10月25日取得、http://afternoon.moae.jp/news/553)。なお、同人マークの有効範囲は『シドニアの騎士』第1巻に遡って全巻で適用される。
- ^ 《告知》 - 作者のツイート
- ^ “DeNAの新プロジェクト「ハッカドール」が同人マーク採用 「いわゆる薄い本OKマーク」”. ITmediaニュース. (2014年8月5日) 2015年10月5日閲覧。
- ^ “グリモア〜私立グリモワール魔法学園〜 公式サイト”. 2017年8月25日閲覧。
- ^ FAQ「同人マークによる許諾範囲について」:B-03 http://commonsphere.jp/doujin/faq
- ^ FAQ:「同人マークによる許諾範囲について」:B-06、B-09 http://commonsphere.jp/doujin/faq
- ^ FAQ:「同人マークによる許諾範囲について」:B-01 http://commonsphere.jp/doujin/faq
- ^ 同人マーク・ライセンス:第1条第2項(c) http://commonsphere.jp/doujin/license/ok/1.0/
- ^ 同人マーク・ライセンス:第2条 http://commonsphere.jp/doujin/license/ok/1.0/
- ^ a b 株式会社マイナビ、2013、「二次創作の同人活動を認める意思を示す「同人マーク」のデザインが決定」『マイナビニュース』2013年8月18日(2013年8月18日取得、https://news.mynavi.jp/techplus/article/20130818-a050/)。
- ^ 第1回 福井健策「誰のための著作権か」4/4DOTPLACE
参考文献
- 赤松健、2013、「UQ HOLDER」菅原喜一郎『週刊少年マガジン』講談社、2013年9月11日、通巻3296号、2013年39号、55巻44号7頁目、EAN 4910206520935。
- 特定非営利活動法人コモンスフィア同人マーク(仮)プロジェクト、2013、『「同人マーク(仮)」のデザイン案の募集のお知らせ』2013年7月17日(2013年8月18日取得、http://commonsphere.jp/archives/286)。
- 特定非営利活動法人コモンスフィア 同人マーク プロジェクト、2013、『「同人マーク」のデザイン決定のお知らせ』2013年8月16日(2013年8月18日取得、http://commonsphere.jp/archives/320)。
- 参議院、2012、「第180回国会 文教科学委員会 第6号」『国会会議録』 国立国会図書館、2012年6月19日(2013年8月28日取得、https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=118015104X00620120619)。
- 衆議院、2012、「第180回国会 文部科学委員会 第6号」『国会会議録』国立国会図書館、2012年6月15日(2013年8月28日取得、https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=118005124X00620120615)。
- BLOGOS編集部、2011、「「TPPで同人誌は消えるのか?」シンポジウムで激論」『BLOGOS』LINE、2011年11月7日19時30分(2013年8月28日取得、http://blogos.com/article/23889/)。
- 増田覚、2013、「TPP対策、二次創作認める「同人マーク」決定、赤松健さんの新連載に掲載」『INTERNET Watch』2013年8月20日14時11分(2013年8月22日参照、https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/611809.html)。
- 吉川慧、2011、「TPP参加でコスプレや二次創作が罪に問われる可能性」『ニコニコニュース』ニワンゴ、2011年11月9日12時54分(2013年8月28日取得、https://news.nicovideo.jp/watch/nw142747)。
関連項目
外部リンク
同人マーク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 09:33 UTC 版)
二次創作や権利関係を円滑にするための模索・講義も行っており、その一つとして2013年に二次創作同人誌作成や同人誌即売会での無断配布を有償・無償問わず原作者が許可する意思を示すための同人マークという新たなライセンスがコモンズスフィアによって公開された。 これは環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉で非親告罪化される可能性が言及され、実際に非親告罪化された場合に第三者による告発などで権利者が黙認したいケースでも訴訟に発展するなどの事態を防ぐことを目的に赤松が発案したもので、自身の作品で『週刊少年マガジン』2013年39号(同年8月28日発売)より連載開始の『UQ HOLDER!』で採用している。
※この「同人マーク」の解説は、「赤松健」の解説の一部です。
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